第36日 全員迷う宇宙人。
ワープとかなんだとか言っていたが俺に理解はできなかった。ハルンさんが宇宙人ということまでは希も言っていたし信じることができたのだが、テレポートだとかノウンとかそこらへんの単語は何1つ理解できなかった。
そして何より理解できないのはこの状況である。
「そうですか、ノゾムくんからメールが。ということは姫様も無事ということですね」
俺の近くにシキブさんもいたのだ。なんたる偶然だろう。本来なら飛び上がって喜んでもいいぐらいなのだが、俺には明日風の1件がある。逆にこの状況はあまり望ましいものではなかった。
俺らが落ちたのはある国。家も何もかもが真っ白で空は青空。どこかで見たような風景だなぁと思っていたらギリシャにそっくりなのだ。ギリシャの白い家が並ぶ場所。青空。そして近くに海。
こういう状況じゃなかったら精一杯楽しめるところなのだが、今回は無理だろう。シキブさんどうこうっていうより、俺らは絶賛迷子なのだから。
それにしてもこの国は人が少ないような気がする・・・気のせいか?
「シキブさん、これからどうするんですか?」
「とりあえずみなさんが場所を把握し、私たちも場所を把握するまではじっとしてた方がいいかもしれませんね。姫様チームは今、近くの国か街を目指しているところですし、連絡待ちという感じですかね」
「そうっすか・・・」
現状何もできないということらしい。
「しかしこうしていると学校祭のことを思い出しますね。ここは異星。案内するのは今回私の番です。力をフルに使って七実さん、あなたを守ります」
「・・・・・・」
男らしすぎだろ・・・。マジで俺何もすることないや・・・。
「あなたは姫様のお友達ですから、私はあなたを姫様と同じように守ります」
「ありがとうございます」
姫様と同じように・・・か。俺はやはりそのような位置にいるのだろう。姫様の友達、という位置。これを覆すことなどほとんど不可能のように思える。
とか考えている時点で俺は諦めていないということが分かる。明日風を応援するだのなんだのと言っておいてこの感じじゃあ情けない。
「とりあえず宿を探したいところですね」
そもそも、俺がこの人を好きになったきっかけというのは簡単で自分を肯定してくれたから。肯定、なんて大袈裟なものではなくて慰めみたいな感じだったのかもしれないけれど、それが嬉しかったのだ。
嘘でも情けでも慰めでも俺の今までを肯定してくれた人なんていなかったのだから。
それはもちろん、希や小花くん、それに明日風や神崎さんだって大事だ。しかしその大事とは違う、いわゆる好きになるという大事さを持ってしまった。
それは本当に厄介で困る。
先ほど宇宙を見たときに俺は遠い存在だと思ってしまった。シキブさんは俺とは違うんだと。この宇宙にいる違う星の違う人だと思ってしまった。
なぜかそれに俺は大きなショックを受けてしまったのだ。
「七実さん?どうかしましたか?」
「あ、いえ・・・宿ですか・・・言語とか通用しますかね?」
「大丈夫です。宇宙人にはみんなほんやくこん〇ゃくを常備してますから」
「えぇ!?あれ実用化されてんすか!?」
ひとまずは、目先のことをなんとかしなければ。この国の宿を探す旅が始まった。
〇
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・」
ここには今、3人が集まっている。しかしその誰もが口を開こうとはしなかった。あたしはとりあえず隣にいる姫岡くんに話しかけることにした。
「どうするのよ、この状況・・・」
「僕ももう分かんないよ・・・」
お互いに泣きそうな顔をして話し合う。というのもあたしたちが落ちたのはどこかの国らしい。高級そうな大きな建物や、西洋風のレンガの建物までたくさんある場所。まるで外国。しかもヨーロッパあたりの街並みであった。
テレビとかでしか見たことはないけれど、日本っぽさは一切ない。
通行人もたくさんいて、見た目は地球人と変わらない。でもここは違う星。恐らく全員が宇宙人なのだろう。そう考えると少し怖い。
今は大きな通りの小さなカフェの外スペースで休憩中だ。もちろんお金はない、というか通貨が分からないのでただ座っているだけの迷惑なお客さんではある。
「・・・・・・もう!」
無言に耐えきれなくなったあたしはとうとう話しかけることにした。
「あなた、えーとノウンさんだっけ?顔をうつむかせてないでちゃんと話しなさいよ!これからどうするのか決めなきゃいけないんでしょう?」
「・・・・・・・」
それでも3人のうちの1人ノウンさんが顔を上げない。姫岡くんが非常に慌てているが、気にしない。
「ノウンさん!敵同士かもしれないけどここは協力して・・・」
とそこまで言ってあたしの言葉は止まる。
顔を上げたのだ。ノウンさんがやっと分かってくれたのかと思ったら・・・。
「うぅ・・・ぐすん・・・またやっちゃったよぉ・・・また失敗しちゃった・・・ダメな子だ。私はダメな子・・・ダメな子・・・うぅ・・・」
「・・・・・」
なんだか分からないけれどすごくめんどくさいことだけは分かる。何この子・・・メンタルが弱すぎでしょう・・・。
「姫岡くんどうしよう?」
「ぼ、僕?そうだなぁ・・・」
姫岡くんは可愛らしく首をかしげる。本当に何度見ても女の子にしか見えない。ノウンさんはきっと姫岡くんのことを女の子だと思っているに違いない。真実を知ったらそれはもう驚くでしょう。
「慰める、とかかな?」
「・・・・・・あ、ああ」
その普通じゃない外見とは正反対に常識人なため、中身はとても普通。
しばらく黙っていたら、返事がないのが不安になったのか姫岡くんまで目に涙を浮かべていた。
「ご、ごめんね・・・ダメだよね・・・慰めるとか普通のことじゃ・・・」
「い、いや、いいと思う。すごくいい。慰めましょうか」
子供を2人持つお母さんとはこんな感じなのかなぁと漠然と考えてしまうぐらいには大変だった。
「慰めるのもそうだけど・・・これからどうしようか?」
「うーん・・・まずは宿を探すのがいいんじゃないかな?もう夜になりそうだし」
姫岡くんが案を出す。こういうときは頼りになる。子供が1人立ちした気分だ。
「でもお金とかはどうしよう、ここの通貨とか」
「そればっかりはノウンさんに聞かないと・・・」
2人でノウンさんを見る。
さっきまで椅子に座っていたはずなのに地面に体育座りして指で砂いじりをしていた。ここ砂ないからレンガをなぞっているだけだけど。
「悪化してるね・・・」
「うん・・・」
これは早めになんとかしたほうがよさそうだ、と思い2人がかりでノウンさんを慰めることにする。するとポケットに入れていた携帯が震える。
姫岡くんも同じだったらしく、携帯を見るとそれは白木くんからだった。白木くんとハルンさんはどうやら無事みたい。ほっと胸をなでおろす。姫岡くんも安心した表情をしていた。
「とりあえず連絡できるっていうのは心強いわね」
「うん、頑張ろうか」
また2人でノウンさんのところへ。
「ほら、ノウンさん、そんなところに座ってないで立ちましょう。パンツとか見えちゃいますよ?」
「ふふ・・・私程度のパンツが見えたところでなんだっていうんですか・・・見てしまった人に申し訳ないです・・・お金だけはたくさんあります・・・お金を払って許してもらいましょう・・・パンツを見せてしまってすみませんって・・・」
「・・・・・」
超ネガティブだけどお金はあるらしい。姫岡くんと顔を見合わせて少しだけ笑った。
〇
「なんでハノだけ1人なんですかー!絶対に誰かを見つけてやります!超スピードで探します!」
〇
携帯を見るとヒメちゃん、空人、神崎さん、それにバズーカちゃんからメールが来ていた。どうやらバズーカちゃんは1人らしい。超高速で移動をしている最中なんだそうだ。
「バズーカはあくまで軍人ですからね、中学生だからといって甘く見てちゃいけませんよ。そういう能力で言えば私やシキブ、ノウンより上です」
バズーカちゃん、バカなところがあるから忘れがちではあるけれど軍人なのだ。しかもハイスペックの。バズーカちゃんならすぐに誰かと合流するだろう。
「で、問題はここからか・・・」
「えぇ・・・」
国に着いた。人が多くいてとても盛んそうな雰囲気がある。しかし高層ビルや透明な管を通る少しだけ浮いた自動車など近未来的な都市だ。想像で未来都市というと必ず考えそうなスタンダードな場所。
「宿を探さなきゃいけませんね」
「宿か・・・」
こんなにハイテクっぽい国ならば宿なんかそこらじゅうにありそうなものだけどな・・・。
「人に聞いてみますか」
「おお・・・さすが宇宙人」
そこはすぱっと割り切るんだな。俺は絶対に話しかけれないぞ、怖くて。
「あのーすいません」
人のよさそうな感じの人を選んだのだろう。笑顔の若い女の人にワン太は話しかけた。
「宿ってどこにあるか知ってますか?」
「あら?あなたってこの国に来たの初めてかしら?」
丁寧な言葉遣い。どこかのお嬢様なのだろうか。
それよりもワン太も一応姫なんだけどな。ここらへんの国だと知名度はないようなものなのだろうか。
「はい、初めてです」
「ではこの国の名前も知らないと」
「はい・・・けどそれがどうかしたのですか?」
「いえいえ・・・ここで教えてあげるわ」
そう言うとその女の人はこの国の名前を言った。
「この国の名前はバトルインシップ。ものを買うのも、何かを聞くのも、何かをするのも全てバトルで決めるという国なの」
「な、なんだそれ・・・」
そうつぶやいたのは俺だ。ワン太はまずい・・・というような顔をしているがすごく動揺しているというような感じではない。
その後、ワン太は俺の方に小声で話してきた。
「国には国の特色があります。だからもう少し用心するべきでした。地球とは違うところがたくさんあるのですよ・・・ここは私が引き受けます」
「おい・・・でもバトルって危ないんじゃ・・・」
「何でバトルとまでは彼女は言ってませんよ」
そう言うとワン太はまた女の人のところに行く。
「分かりました。勝負方法は?」
「うん、ものわかりのいい子だね。勝負方法はこれ」
そう言って女の人が出したのはサイコロであった。
「このサイコロを手に持って、どちらの手に入っているのかを当てることができればあなたの勝ち。できなかったらあなたの負けよ」
「もし私が負けた場合は?」
「負けた場合のペナルティはないわ。この国の人は勝負自体を楽しんでいるの。勝負することが一番重要なのよ。もちろん、私もね」
するとその女の人はサイコロを高く投げる。
「サイコロシャッフル、開始!」
2話更新です。
何気にもう40話近くなってきているのですね。1話が懐かしいです。
ではまた次回。




