その悲痛な声は誰なのか?
初めて異世界のお話にチャレンジしてみました。
楽しんで頂けると嬉しいです。
俺はまた……死んだのか……
どんなに足掻いても、今までとは違う選択を選んでも結局、結果は変わらなかった。
そしてなぜか毎回、俺が意識を失う直前に俺の名を呼ぶ悲痛な声が聞こえてくる。
毎回、毎回、声の主は同じ人物なのは理解できた。
何故なのか分からないがその声を聞くとひどく胸の奥ズキリと痛む。
声の主が誰なのか……どうしても俺には分からなかった。
その声が気になり始めてから何十回……
いや何百回だろうか途中からは数える事すら嫌になった、どうしても思い出せないと悟った時、考えることを俺は放棄した。
分かっている事は、正確な回数は覚えていないが俺は間違いなくうんざりする程に長い時間、同じ時間を繰り返している。
いい加減そろそろ俺を開放してはくれないか……
そう思いながらも、いつからか俺の名を呼ぶ誰かは分からない声の人物に会いたいと思い始めていた。
そろそろ今回の人生も終わるのか……
視界から光が徐々に失われていく時、怖さを感じないと言ったら嘘になる。
俺は今だに怖さを感じていると言うのか?
「シリウス必ず……れ……から……」
途切れる意識の中で今回も、またあの声が聞こえた。
◇◇◇
―――やはり、また今までと同じように過去へと戻って来たようだ。
戻ってくるのは必ず20才の誕生日の前日、国王である兄上が俺の部屋へと入ってくる時からだった。
ノックの音が耳に入ってくると、またかと言う気分になる。
「シリウス、入るぞ。」
この時なぜだか兄上の声が、今までより声が低く聞こえた。
「兄上?」
俺が見上げた先には燃えるように赤く波打つような髪をサイドでゆるく縛り上げた人物が居た。
「……ちちうえ……?」
嘘だろ、今までこんなことは一度もなかった……
俺が戻ってくるのは毎回、父上が亡くなった後だ。
今回は今までとは違う……のか?
頭が混乱していると、豪快な笑い声を上げながら、俺のベットへと腰を下ろした。
「俺はまだパウロスに間違えられるほど若く見えるか?」
俺の答えを目を細めながら穏やかな表情は兄上によく似ている。
「父上は若く見えると言われているではありませんか。」
俺の返事に満足そうな表情を浮かべると俺の頭へと手を伸ばした。
「その言い方はパウロスの影響か?俺はまだシリウスに、お父様と呼ばれたいのだが。」
父上の言葉が耳に届くと同時に、あきらかに今までとは違うと悟った。
俺が父上をお父様と呼んでいたのは15才頃までだったはずだ。
もしかしたら、今回は生きられるかもしれない。
落ち着けと思っているのに体が言う事を聞かない。
「父上、俺はいま何歳でしょうか……」
喉がくっついて上手く言葉を発することが出来なかったけれど、父上には伝わったようだった。
「俺の息子は、自分の年令すら忘れてたしまったのか?昨日から様子がおかしいと思ったが……そんな少しぼーっとしているシリウスすら俺は可愛いと思ってしまう、と言ったら親バカと言うか?」
そういうと、父上はなぜか俺を抱きしめると大きく息をはいた。
「シリウス、お前は明日16歳になる。」
うそ……だろ……。
もしかしたらと期待してしまう……けれど期待してまた同じたったらと思うと、繰り返される死をもう繰り返したくはないとも切に願う。
「シリウス、あんなに誕生日を楽しみにしていたのに忘れたのか?シャウラとパウロスが頑張って準備を勧めて……っとこれは内緒だった。」
そういうと、父上は太陽のような笑顔を俺に向ける。
その笑顔を見ていると、今回はやっぱり今までと違うと実感した。
今までシャウラ姉様とパウロス兄様が俺のために準備をしたことはあっただろうか?
思い出したくても、気が遠くなるほど長い年月が経ってしまった。
俺は家族に優しくされていた……のか?
家族に対する記憶が曖昧で思い出すことが難しいが少しだけ希望が見えたきがした。
今回は今までよりも抗ってやると心に決めた。
「父上と兄様の声が似ていると思ったけど、やっぱり違うと思う。」
俺がそう言うと父様は、そうかと言うとはにかんだ笑顔を見せた。
笑うと目が無くなる姿は、兄様にとてもよく似ていた。
最後まで読んでて頂きありがとうございます。




