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TS貴族令嬢の複雑すぎる婚活事情  作者: 桜木桜


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第22話

 ブドゥーダル公国の内地、ブドゥーダル公爵領は、扇形の堆積平野であるブドゥーダル平野とそれを挟みこむ東西の山地によって構成されている。

 そしてブドゥーダル公爵領の最北部、扇型の頂点部分は谷底平野となっており、トルーニア公爵領へと続いている。


 この地は古来から交通の要衝であり、戦略上の重要地点であった。

 今から二百年前、このブドゥーダル平野を統一した当時のブドゥーダル公爵は、この地に城を築き、北方への備えとした。


 二つの山脈を繋ぎ合わせるように、ブドゥーダル平野に蓋をするように築かれたこの長城は、“シュミシオン城”と呼ばれている。

 

 その城門の近くには一台の豪華な馬車が止められていた。


 はためく旗に描かれるのは、上半身が馬、下半身が魚であり、頭に一本の角を生やした奇妙な動物。

 それは西大陸の北方の海域に生息する、一角獣と呼ばれる水生動物である。


 この動物を紋章として採用している貴族と言えば、ただ一つ。

 ラークノール公爵家である。


 馬車のすぐ側には二人の人物が立っていた。

 一人は五十代半ばの初老の男性であり、もう一人は十代半ばにも達していない少年である。

 一見すると祖父と孫に見えるこの二人だが、実は親子であった。


「これがあのカルテマ帝の“山越え”で有名なシュミシオン城……」


 トールは感慨にふけるように呟いた。

 カルテマ帝の“山越え”。

 それはカルテマ帝の偉業の一つに数えられる、有名な軍事作戦だ。


 当時、大陸西部の覇者となったカルテマ帝は勢いそのまま中央部――トルーニア公爵領へと進出した。

 そしてすでに大陸中央部で強大な勢力を築いていたブドゥーダル公爵家と衝突した。


 結果だけを言えば、ブドゥーダル公爵家は敗北し、トルーニア公爵領から撤退。

 カルテマ帝と当時のブドゥーダル公爵はこのシュミシオン城を挟んで、対峙することになった。


 あくまで局地戦で敗北しただけのブドゥーダル公爵家はまだまだ強大な戦力を保持していた。

 カルテマ帝が東に進出しようとすれば、南からその脇腹を攻撃するだけの能力をブドゥーダル公爵家は保持していた。


 故に背後の安全を確保するためには、カルテマ帝はブドゥーダル公爵家を屈服させる必要があった。

 しかしシュミシオン城は難攻不落の名城であり、いかにカルテマ帝といえどもこれを正面から打ち破るのは不可能だった。


 故にカルテマ帝はシュミシオン城の東西にそびえる山脈を、自身と少数の騎士だけで踏破した。

 そしてシュミシオン城の背後に回り込むことで、このシュミシオン城を攻略したのだ。


 この戦いで当時のブドゥーダル公爵は捕らえられ、ブドゥーダル公爵軍は壊滅に近い打撃を受けた。

 カルテマ帝は勢いそのまま、ブドゥーベル市へと進撃。


 ブドゥーダル公爵家は滅亡しかけた。


 もっとも、カルテマ帝はブドゥーベル市の占領には成功したものの、ブドゥーベル城を陥落させることができなかった。

 包囲中に疫病が発生したからだ。


 カルテマ帝本人も疫病で生死の境を彷徨い、その隙にブドゥーダル公爵家の反撃を許した。


 最終的に両者痛み分けという形で戦争は終結した。


 ブドゥーダル公爵家は、シュミシオン城以北の領土をカルテマ帝に割譲すること。

 姫君を嫁として、人質として差し出すこと。

 そして、当時は一人の貴族に過ぎなかったカルテマ帝を皇帝として“推戴”すること。

 以上を条件に和睦を結んだ。


 大陸中央部の古豪は、新参の成り上がり者であるカルテマ帝に頭を垂れることになったのである。


(ロゼリア姫ならば、一般に知られていない秘話を知っているだろうか? ……いや、でもブドゥーダル公爵家にとっては屈辱の歴史だし、聞かない方が良いか?)


 皮肉な事に、ブドゥーダル公爵家の次期当主はそのカルテマ帝の血を引いている。

 彼女にとって、このシュミシオン城での戦いは先祖の“名誉”なのだろうか。 

 “恥辱”なのだろうか?


 トールは思い悩んだ。


「もうそろそろ、良いだろう。過去を見つめたところで意味はない」


 ラークノール公爵は少し苛立った様子でトールにそう言った。

 トールにとって初めての“歴史遺産”であっても、ラークノール公爵にとっては何度も通ったただの関所に過ぎない。


「はい。行きましょう」


 後ろ髪を引かれながらも、トールは馬車に乗り込んだ。


 トールにとって、己の父は尊敬する人物であると同時に、恐怖の対象でもあった。

 殴られた回数は一度や二度ではない。


 できれば一緒の馬車に乗って移動したくないのが本音である。


 早く次の街に着かないだろうか。

 トールは内心で祈りながら、窓の外を眺める。


 そこには一面、葡萄とオリーブ、そして小麦畑が広がっていた。

 そして畑の間を縫うように水路が張り巡らされ、水車や風車がクルクルと回っている。

 休耕地と思しき場所には、牛や羊が放牧されていた。


 トールが生まれ育ったラークノール公爵領とは、全く異なる景色だ。

 まずラークノール公爵領は寒すぎて、葡萄もオリーブも育たない。

 代わりに林檎が育てられている。

 小麦は育つが、大麦や蕎麦の栽培が盛んだ。

 用水路はまともに整備されておらず、水車や風車なんてほとんどない。

 そしてもっと、牧草地が広い――というよりは、畑が少ない。


(極めつけはこの気温……まだ三月なのに)


 シュミシオン城を超えてから、トールは気温が上昇しているのを感じていた。

 つい先ほどまで肌寒さを感じていたにも関わらず、今は暖かい。

 服を一枚、脱いでも良いくらいだ。


 トールは景色と気温から、今まさに境目を越えたのだと実感していた。


「外が気になるか」

「あ、いえ……」


 トールは背筋をピンと伸ばした。


「よいことだ。目で見なければ、学べぬモノがある。……して、何が見える」


 葡萄畑とオリーブ畑、小麦畑……あと風車と水車が見えます。あそこには牛がいますね。

 ……などと答えたら、殴られるだろうなとトールは直感した。


 要するに、見える景色から、ブドゥーダル公国がどのような邦であるかを説明しろとラークノール公爵は言っているのだ。


「……畑の形がとても美しいと感じました」

「ほう……」

「細長い長方形は、有輪犂を使いやすく……また測量を容易くするためでしょう。水車も風車も水路も……計画的に設計されています。領主に強大な力がなければ、実現しません」


 真っ直ぐな畑を作るのは、実は難しい。

 土地というのは一定ではなく、巨石が埋まっていたり、湿地があったり、高低差があるからだ。

 耕し難い場所はどうしても、避けられる。だから結果として、畑の形は歪む。

 

 使い勝手が悪いように見えて、実は農民たちにとって、畑の形は汚い方がいい。

 その方が税を誤魔化しやすいからだ。


 また農民たちは有輪犂の使用を好まない。

 牛も馬も犂も、領主から借りなければならず、結果として税負担が増すからだ。


 水車も風車も使いたがらない。

 領主に使用税を採られるからだ。仮に脱穀の手間が浮いたとしても、その使用料を収めるために、別の仕事をしなければならなくなってしまう。

 手作業で脱穀した方が税負担は少ない。


 だから畑の区画整備も、道具や設備の設置も、領主に強大な権限がなければ実現できない。

 少なくともトールは、ここまで綺麗に整備された……“領主にとって都合の良い土地”を見たことがなかった。


「ブドゥーダルの地が豊かなのではなく、バークスの血がブドゥーダルの地を豊かにしたのだと、この目で理解しました」

「なるほど。……お前にはそう見えるか」

「……間違っていましたか?」

「俺には違う物が見えた」


 間違っている。

 とは、ラークノール公爵は言わなかった。


「俺が若い頃来た時には、ここまで美しくなかった」

「若い頃とは……」

「二十年以上、前の話、先代の時だ。これを整備したのは、今代の公爵だ。やつの几帳面な性格がよく出ている」


 ラークノール公爵は小さく鼻で笑った。

 その態度から、ラークノール公爵がブドゥーダル公爵を嫌っていることが分かった。

 同時にその内政手腕を評価していることも。


「先代は内政のために、外交と謀略に力を注いでいた。今代は外交と謀略のために、内政に力を注いでいる。……今代の外交手腕は、やつの交渉能力ではなく、邦の力だ」

「なるほど……」

「次代はどのように治めるか、はてさて」


 次代とはロゼリアを指しており、また同時にトールのことを指している。

 ラークノール公爵のやり方は先代ブドゥーダル公爵に似ている。

 しかし今代ブドゥーダル公爵は、それとは異なるやり方で成功している。


 ――俺以外からもしっかり学び、お前の代で役立てろ。


 トールにはラークノール公爵の言葉をそう捉えた。


「……む」

「父上?」

「妙な作物がある」


 トールはラークノール公爵の視線の先に目を向ける。

 なるほど、確かにそれは“妙な作物”であった。

 というのも、水の中に水没してしまっているのだ。

 一見すると氾濫の後のように見えなくもないが、しかしきちんと整備された様子から意図して水没させているのは間違いない。


「あれは……もしかしたら、米かもしれません」

「聞いたことがないな」

「南方から伝わった作物だそうです。水はけの悪い土地で育つ、小麦や大麦のようなものと……ロゼリア姫がおっしゃっていました」

「ほう……面白い植物だ。他にどのような特徴がある?」

「収穫率が小麦よりも良いそうです。それと、水没させて作る分は、連作障害が起きないと」

「……我が邦でも育つか?」

「暖かい気候と、十分な水……灌漑設備が必須だそうです」

「であれば、無駄だな」


 つまらなそうに言うラークノール公爵に、トールは頷いた。

 ラークノール公爵家には灌漑設備を整備する資本力も技術もない。

 気候の違いも考えれば、導入を試みても無駄な努力に終わる。


「ただ……エールとは異なる酒が作れるそうです。此度の社交で楽しめるかもしれませんね」

「それは良いことを聞いたな」


 ラークノール公爵の機嫌が上向く。

 トールもロゼリアが口にしていた、「面白いお酒」が飲めるのを少し楽しみにしていた。


(ロゼリア姫……)


 早く会いたい。彼女と踊りたい。

 そして願わくば……。


「良い顔だな。……何を考えている?」

「ロゼリア姫と、この景色を手中に収める方法を」


 トールの回答にラークノール公爵は破顔した。


「それでこそ、我が息子だ」





 ブドゥーダル河はブドゥーダル平野を東西に真っ二つに分けるように、北から南へ流れている。

 ブドゥーベル市はその下流域に存在する、港湾都市だ。


 ブドゥーベル市は、大きく二つの区域に分けられる。

 北の旧市街と、南の新市街である。


 旧市街は中州の上に立てられた旧宮殿を中心に広がっており、円形の城壁により囲まれている。

 宮殿が中州の上に立てられているのは防衛のためであり、城壁が円形なのも城を中心に放射状に広がっていったためである。

 現在でも政治や祭司はこの旧市街と旧宮殿を中心に行われている。


 一方で新市街は旧市街から南東、ブドゥーダル河の東岸に広がっている。


 こちらは方形の城壁に囲まれており、道路が碁盤の目のように延びている。

 河に面する形で港があり、小高い丘の上には新宮殿が立てられている。

 こちらは見ての通りの計画都市であり、経済の中心地となっている。


 新市街および新宮殿が建てられた理由は複数あるが……。

 邦の規模が巨大化したことで、社交用に大きな宮殿と貴族たちを迎え入れる屋敷が必要になったからというのが上げられる。


「そのような理由から、社交はこちらの新宮殿と新市街で行います。ですが歴史が古いのは旧宮殿や旧市街ですから……歴史的な建物はそちらの方が多いですね。もしご希望されるようであれば、案内をつけましょう」


 観光するのは自由だけど、勝手に出歩かないでね。

 と、私はトール君に伝えた。

 彼がブドゥーベル市にやってきたのは、今から三日前のことである。

 ラークノール公爵は父と会談中であるため、その時間を使って私はトール君に城内を案内しているのだ。

 両家の間で休戦が結ばれて、ちょうど一年ほどになる。

 しっかりと友好をアピールしたい。


「なるほど。では、社交の合間に見物させていただきます。しかし……ここに来る途中、新市街にも歴史を感じさせる建物をいくつも見かけましたが、どれほど前に造営されたのでしょうか?」


 外交相手の邦の歴史くらい、知っておけよ。

 と、そう思うかもしれないが、この世界には歴史の教科書なんて存在しない。そもそも本が希少なのだ。

 ざっくりした世界の歴史や自分の一族の歴史ならともかく、他家のローカル史なんて調べようがない。


「今から二百年程前になります」

「二百年……それはまた、歴史のある街ですね。えっと……それで、新市街の歴史は?」

「新市街の歴史が、二百年ですよ」


 私の言葉にトール君の顔が固まった。

 それが面白くて、私はつい笑いを零してしまう。


「二百年も経つのに、いつまでも新参者扱いされて、かわいそうでしょう? ……この宮殿も、それなりに年季が入っていますから。あちこち、補修を繰り返しているのです」


 幸いにもこの世界は地震とかは少ないし、何より宮殿は石造りだ。

 頑丈な作りになっているので、全然、使えてしまう。まあ、雨が降るとたまに雨漏りするし、隙間風も吹いてくるが。


「な、なるほど。……となれば、旧市街はさらに古いことになりますね。どれほど前からあるのでしょうか?」

「さあ……市街そのものは父祖バークスが没した時からだとは思いますが。その時の建物は土の下ですから」

「……では、旧宮殿は?」

「もっとも古い建物が七百年前のものになります。その後、増改築を繰り返していますから、古さは部分により異なりますね」


 実は三分の一くらいは、旧宮殿の方が新宮殿よりも新しい建物になっている。

 一番新しいところで百年前……どのみち、骨董建築であることには変わりないか。


 私のそんな解説に、トール君は唖然とした表情を浮かべた。


「……バークスの血とブドゥーダルの地の歴史の重さに、ただただ圧倒されます。この重さこそが、ロゼリア姫の高貴さの秘密でしょうか?」

「まあ……お上手ですわね」


 トール君はただ私を褒めただけな気もするが、冷静に考えてみると少し自慢しすぎた。

 ただブドゥーベル市の歴史を知って欲しくて、トール君とお話するのが楽しくて、口が回ってしまったが……、

 それをすると必然的にバークス家の歴史の話になってしまい、自慢っぽくなってしまうのだ。


「ご存じの通り、我が一族はこの城よりも、王国にとって新参者ですから……。その分、私も負けぬように精進しなければならないと、あらためて実感いたしました。私はまだ、ロゼリア姫と比べると未熟者ですから……」


 何だか卑屈モードに入ってしまったようだ。初めて出会った時のことを思い出す。

 私を前にすると、たまにこうなるんだよな……。普段は堂々としているのに。

 前は女の子が苦手だと思っていたのだが、もしかしたら私が彼のコンプレックスを刺激してしまっているのかもしれない、

 励ましておくか。


「わたくしは……トール殿は偉大な方であると思っていますよ」

「私に偉大な点など……」


 私の言葉にトール君は眉を顰めた。下手な誤魔化しやお世辞なんて言わないでくれという顔だ。

 私はそんな彼を上目遣いで見上げた。


「だって……わたくしは末ですが、トール殿はこれから、祖となるのでしょう?」

「……!」

「末と祖であれば、祖の方が遙かに偉大であることは、言うまでもありませんわ」


 これから千年続く家の先祖になればいい、あなたならそれができる。……という励まし。

 いいよね、男の子は祖になれて。私は女の子だから末にしかなれないのに。……という皮肉。

 二重の意味を込めて、卑屈なこと言うなという叱咤激励だ。


 私の言葉はちゃんと彼の胸に届いたらしい。


「おっしゃる通りです。ロゼリア姫には敵いません。……今のお言葉、千年後の末に届けましょう」

「まぁ……! それは光栄ですわ」


 上手いこと、言うじゃないか。

 彼の家系が本当に千年も続くかは未知数だが。


「と、ところで……ロゼリア姫」

「はい」


 ……なんか、流れ変わったな。


「もし、よろしければ……私と共に千年の礎を作るのはいかがでしょうか?」

「それはまた……唐突なお誘いですわね」


 急に求婚するのはやめろ! ビックリするだろ!!

 まあ……予想はしてたけどね。


「それは星の巡り合わせ次第でしょう」


 私は狩猟大会で求愛された時のことを思い出しながら答えた。

 あなたの想いは受け取ります。……この辺りがギリギリの回答かな。


「それでは……星明かりに照らされた薔薇に祈りを捧げましょう」

「……そ、そう、ですか」


 うっ……薔薇って、そりゃあ、私のケイデンシーは薔薇だから、魔力刻印の図表も薔薇だろうって予想はできるだろうけど。

 な、何だろう。服の下を覗き見られたような気分だ。

 は、恥ずかしい……。


「つ、次は画廊をご案内しましょう」


 私は赤くなった顔を誤魔化すために踵を返す。

 画廊には歴代の公爵たちが集めた美術品、その中でも一級品と言える物が飾られていた。


「おぉ……! これは東方で作られるという、白焼きですか。青い模様が、白によく映えていますね」

「はい。三百年前に、東方の高名な陶工の作品で……」


 西大陸では白い焼き物を作る技術がない。

 貴族たちはこういう舶来品を好む傾向があるが、トール君がここまで食いつくのが意外だった。

 ……そういえば、彼の先祖は海賊だったっけ。

 こういう金目の物、特に舶来品に興味を示すのは当然か。


 その後も一つ一つ、私は美術品を紹介していく。

 トール君にとってはこの手の物は物珍しいようで、目を輝かせながら話を聞いてくれた。

 ……キラキラを通り越してギラギラしている気もするが、気のせいだろうか? もしかして、目覚めさせちゃいけない本能を刺激しちゃってるかな?

 略奪されないか、心配である。いや、しないだろうけど。


「……おや? これは奇妙な絵ですね」

「それは……え? えぇ!?」


 口から変な声が出てしまった。でも、仕方がないと思う。

 誰だよ! 私の絵をここに飾ったやつ!! どう考えても、場違いでしょ!!


「……ロゼリア姫?」

「あぁ、いえ……申し訳ございません。奇妙な絵だったので、少し驚いてしまいました」

「……ということはロゼリア姫もご存じではないと?」

「お、お恥ずかしながら……だ、誰が飾ったのやら。あとで調べておきます」


 誰だよ! 私の絵、勝手に飾ったの!! 

 恥ずかしいから、絶対に外に出さないって言ったのに!!

 ……まあ、私の意思を覆して、絵を飾れる人なんて、一人しかいないけどさ。


 お、親馬鹿め……。


「しかし奇妙ですが、見事な絵ですね。まるで現実の風景を切り取ったかのように見えます」

「そ、そうですね」

「これはブドゥーベル市でしょうか。……きっと、この絵を描かれた方は、正直で清らかな心の方なのでしょう。ありのままのブドゥーベル市を愛している、そんな想いが伝わります。……ロゼリア姫?」

「後生ですから……その絵について、語らないでください」


 私は顔を両手で覆い隠しながら言った。

 絶対、顔が真っ赤になっている。人には見せられない顔に……。


「ロゼリア姫? え? あ、いや。まさか……この絵を描かれたのは……」

「ほ、他にもお見せしたいものがあります。そんなつまらない絵は放って、次に行きましょう」


 私は一方的にそう言うと、トール君を置いて歩き出した。

 トール君は慌てた様子で私の後を追う。


「つまらなくなどないかと……私は好きですよ。もっと自信を……」

「もう、わたくしの前であの絵の話はしないでください。次にその話をしたら、あなたとは踊りませんから」


 私の言葉にトール君は慌てて口を噤んだ。


 ……お父様には後で説教だな。


名前:“偉大なる私生児”ジーオン・エル・ラークノール

性別:男

身分:貴族

年齢:50半ば

性格:勇敢・憤怒・独善的・野心的

趣味:狩猟

特技:水泳、戦争

好きな異性:気が強い女

結婚相手に求めるもの:強い子を産むこと

一言:“悪魔公”には世話になった

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