017 ギルド登録 1
……むにゃむにゃ……。
お腹が空いたなぁ……。何か、食べ物は……。
あ、肉まん見っけ! よし、食べるぞ!
……って、あれ? 取れない……って、ああ! 今の手じゃ、うまく掴めないか……。
こう、何とか掴んで……、よいしょ、よいしょ……。
「やめんかっ! 人の胸を揉むなああぁ〜〜っっ!!」
びった~ん!!
「「「「「「うわああぁっ!」」」」」」
……あれ?
思い切り床に叩き付けられて、……べったりと張り付いてるなぁ……。
って、さっきの肉まんは? あれ? ええと、まさか……。
うわわわわっ! マズい! これはマズいぞ……。
とりあえず、舌をだらりと垂らして、白目を剥いて、ピクピクと断末魔の痙攣をしている振りをして、と……。
「ひいっ!」
「ひっ、酷い……」
「ペットか? 使い魔か? どっちにしても、寝惚けてちょっと胸に触れただけで、何も殺さなくても……」
うむうむ、俺への酷い仕打ちに、ハンターや職員の皆さんからの非難殺到だな。
俺への扱いの悪さを、反省するがいい!
「……いつまで死んだ振りしてるのよ! さっさと来なさい!」
へ~い……。
ぴょんと飛び起きて、すたすたとセリアの足元へ……。
「「「「「「えええええええ〜〜っっ!!」」」」」」
みんな、驚いてるな。
俺がこれくらいでどうにかなるわけないだろ。
セリアも、検証作業でそれを知っているから、平気で床に叩き付けたんだよ。
あれで、セリアは優しいからな。
ここにいるみんなは、俺の芸のひとつ、『必殺、死んだ振り!』に引っ掛かったというわけだ。
……どこが『必殺』なのかは不明だけど……。
俺が必ず死ぬ、ってことかな?
まあ、とにかく、今日はリゼルの見習い登録に来たわけだ。
その後、セリアがリゼルの指導役であることを登録して、最後にふたりと1匹でパーティ登録、というわけだ。
……あ、俺はまだ人間がひとりで抱えられる大きさだから、『1匹』なんだってさ、単位が。
これが、人間には抱えられないくらいになれば、『1頭』になるらしい。早く出世せねば……。
前世では、『不出世のサラリーマン』だったからなぁ。
『不世出』ではなく、『不出世』なのだ、ふはははは……、はァ……。
「この子の見習い登録をお願いします。私が、指導役で……。
それが終わったら、私達ふたりと使い魔のこの子で、パーティ登録を」
「はい、分かりました。では、この登録申請書に御記入をお願いします」
指導役は見習い登録書に記名するみたいだな。なら、パーティ登録とで、記入する書類は2枚か。
セリアとリゼルはふたりとも読み書きができるらしく、どちらもセリアが自分で記入している。
……そして受付の人は、勿論、若くて美人のお姉さんだ。
当たり前だよな!
よし、ちょっと愛想を振りまいておくか……。
「にゃ~ん……」
「「「「「「……え?」」」」」」
「こら! あんた、猫じゃなくて狼でしょ!」
あ、イカン!
女性にウケる可愛い鳴き声を、と思ったら、つい猫の鳴き声を出しちゃったよ……。
狼、狼、と……。
あれ?
狼って、何て鳴くんだ?
ワンワン、じゃないよな?
え、ええと……。
遠吠えとは違うよな?
遠吠えじゃなく、狼の仔の、可愛い鳴き声って……。
ええい、もう、ワンでいいや、ワンで!
どうせ、狼と犬の区別なんか分かんないだろ!!
「……わん!」
勿論、うっかりと『わんデシ!』なんて言ったりはしないぞ。
つぶらな瞳、可愛らしい仕草。
どうだ、庇護欲をくすぐりまくる、このラブリーな俺様は!
思う存分、モフってくれてもいいのだぞ? 女性限定で!!
「はい、これで問題ありません。登録処理とハンター証ができるまで、しばらくお待ちください」
……あれ?
この俺の、ラブリー攻撃が効いていないだと?
「フェン、さっきから何、片目だけまばたきしてるの? 目にゴミでも入ったの?」
ぐぬぬぬぬ……。
* *
「……あ、登録するパーティ名が抜けていますね。すみません、見落としていました。
何という名にされますか?」
「え……。ど、どうしようか……」
ん? そんなの、セリアが勝手に決めればいいだろ。パーティリーダーなんだから……。
少なくとも、使い魔が決めるものじゃないだろ。
そう、思念を送り込んだ。
……うん、精神感応なんだから、声とは違って、送りたい相手にだけ送れるんだよ。
リゼルも、『任せた!』っていうような顔をしている。
……。
…………。
………………。
セリア、大苦戦中。
命名、苦手だったか……。
仕方ない、助け船を出してやるか……。
セリアとリゼルにだけ届くように、と……。
『パーティ名は、「フェンリル」でどうだ?
フェン、セリアの『リ』、そしてリゼルの『ル』を合わせて……』
「……それって、私がいなくても、フェンと、リゼルの『リ』と『ル』だけでも成り立つじゃないの!」
『あ……』
「確かに……」
「それに、どうしてフェンの名前がフルネームで入っていて、私とリゼルは1文字だけなのよ!」
『あ……』
「確かに……」
セリアの指摘に、納得の言葉しか出ない、俺とリゼル。
そして……。
「「「「「「…………」」」」」」
近くにいる職員やハンター達が、俺達……というか、セリアとリゼルを黙って見詰めている。
……うん、そりゃあ、いくら俺の思念をセリアとリゼルにだけ届くようにしていても、セリアが俺の発言の存在を前提とした返事をしたら、目立つわなぁ……。
突然、脈絡のない謎の発言をする少女。
そりゃ、目立つ。
そして奇異の目で見られ、……警戒される。
危ないヤツなんじゃないかと思われて……。
あ、セリアのヤツ、気付いたな。顔が真っ赤になってやがる。
助けを求めるような顔でこっちを見ているけど、今、俺が下手にフォローしようとすると、多分、更にドツボにハマる。
ここは、自力で何とかしてもらうしかないよな……。
「そ、そそそ、そうだ! パーティ名は、『フェンリル』! 『フェンリル』に決めましたっ!!」
「……あ、ハイ……。そんなに大声で叫ばなくてもいいですよ……」
セリアの渾身のカバーに、受付嬢からの呆れたような言葉が……。
まあ、何とかセリアと受付嬢の間で会話が繋がったから、良しとするか。
『ポーション頼みで生き延びます!』書籍12巻、3月2日、刊行予定です。
よろしくお願いいたします!(^^)/
そして来週は、私の誕生日があったり、確定申告があったり、通院があったり、書籍化作業があったりするので、「なろう」更新を1回お休みさせていただきます。(^^ゞ




