018 ギルド登録 2
「では、パーティ名は、フェ、ン、リ、ル、と……」
受付嬢は、登録書を突き返すことなく、自分で記入してくれた。
多分、碌に文字も書けない者が多いから、代筆するのに慣れているのだろうな。
とにかく、これでリゼルの見習い登録(指導員は、セリア)と、セリアとリゼルのふたりのパーティ登録申請が、無事終わった。後は、リゼルのハンター見習い証ができるのを待つだけだ。
ハンターや見習いが持つ登録証は、金属製のタグだ。セリアのを見せてもらった。
チェーンで首に掛けて、タグ部分を服の内側にある小さなポケットに入れるとか。
プラプラさせていると邪魔だし、木の枝とかに引っ掛けると首が絞まるからなぁ。
それに、タグを見ればランクが分かるから、他者に余計な個人情報を与えないためにも、外から見えないようにしておいた方がいいのだろう。ポケットの中なら、もしチェーンが切れても、落とす確率が下がるし……。
だから、ハンターが着るような服には、左胸部分の内側にそれ用の小さなポケットが付いているのが普通だってさ。
別に、1ドル銀貨のように防弾性能があるから左胸に、ってわけじゃないらしい。
そもそも、銃がないしね、この世界……。
そういうわけで、遂に、セリアとリゼルのパーティが結成された。
うむうむ、良かった良かった!
何せ、セリアが見習いをしていたパーティから追い出されてからの、ふたりの悲願だったそうだからなぁ。
……俺?
俺は、『セリアの使い魔』であって、パーティメンバーじゃないんだってさ。
俺の扱いは、『セリアの武器』だとか……。
物扱い。
だから、誰かが俺にちょっかいを出したら、それはセリアの武器に手を出したということになる。
そして、連れ去れば窃盗罪、傷付けたり殺したりすれば器物損壊罪になるそうだ。
人権……フェン権があるとは思っていなかったけど、やっぱりなぁ……。
……一応、セリアのものだということで、身の安全は保たれるのかな? 俺の能力がバレない限り……。
仕方ないか。現代日本でも、法律上動物はあくまでも物として扱われていたからなぁ。
他者のペットを殺しても、器物損壊罪だし。……それと、動物愛護管理法違反。
まぁ、俺を誘拐……盗んでも、すぐに逃げ出してセリアのところへ戻るし、犯人が誰かは俺がセリアに教えられるからな。
そもそも、俺が売られた先でおとなしく言うことを聞くわけがないしな。
しばらくの間は逃げ出さず、色々と悪さをして売り主にクレームが行くようにしてやるのもいいかもね。
「じゃあ、情報ボードと依頼ボードを軽く確認しとこうか。
今日のところはまだ依頼は受けないけれど、この町にはどんな依頼があるかを見て、これからの行動計画を立てるわよ」
「うん、分かった!」
「わん!」
セリアの案に、賛同の返事をしておく。
使い魔なら、それくらいは不自然じゃないだろう。
ただリゼルの返事に合わせて吠えただけ、とも見えるしな。
そして、ふたりと1匹でボードを見ていると……。
「おい、嬢ちゃん達……」
キタ〜〜!!
新入りの美少女に絡む、チンピラハンター!
お約束だよな! こうでなくっちゃ……。
がしっ!
そして、いきなり肩を掴まれた。
……話し掛けてきた、チンピラハンターが……。
「そのお方には、手を出すな……」
いや、絡まれるの、そっち側か〜〜いっ!!
あれ? チンピラハンターに絡んできた人、30歳前後の渋い男性だけど、あの、その、……頭部に耳が……。
いや、頭部に耳があるのは普通だけど、何というか、その、……頭の側面じゃなくて、上の方に……。
そして、ぴょこんと立ったふたつの耳は、アレだ。
……ケモ耳。
犬のような、しっかりと立った、可愛い耳。
がっしりとした体格の、おっさんだけど……。
つまり、アレだ。
……獣人、キタアアァ〜〜!!
「そのお方には、手を出すな……」
……え?
何、この獣人?
セリア達を庇ってくれたのか?
いいヤツ?
……と見せ掛けて、実は『そいつらは俺の獲物だぜ、げはは!』というパターンかも……。
そして同じ言葉を繰り返したのは、アレかな? 大切なことなので2度言いました、ってやつ……。
何か迫力のある獣人のおっさんに肩を掴まれて、2度同じことを言われる。
その状況にビビったのか、チンピラハンターはすごすごと引き下がっていった。
ケモ耳が可愛いおっさん、この状況の説明はしてくれるんだろうな?
……いや、待てよ?
さっき、このおっさん、『そのお方』とか言ってたな?
普通、ここは『そいつらに手出しするな』とか、『新人に絡むんじゃねえ!』とかだろう?
少なくとも、新人のことを『そのお方』とかは言わないよなぁ……。
これは、アレか?
このおっさん、セリアに一目惚れして、女神よ、とか、天使よ、とか思っちゃってるワケ?
年齢、セリアの2倍以上ありそうじゃん!
お父さんは許しませんよ!!
……って、別にセリアのお父さんじゃなかったわ、俺……。
あ、まさかリゼルの方、ってことはないよな?
もしそうなら、ロリコンじゃねーか。火傷すっぞ~!
……とか考えていたら、おっさんが床に跪いて、右手を左胸に当て、頭を垂れた。
俺の方を向いて……。
「お困りの際には、いつでもお呼びくださいますよう……」
俺の方か〜〜いっっ!!
コイツ、俺を雌だと思ってるとか?
股を開いて、雄だということを見せつけてやろうか?
……いや、それだと、もし俺が雄だと分かっていてのこの態度だった場合、状況がますます悪化するのでは?
それは怖い。怖すぎる……。
あああ、いったい、どうすれば!!
拙作、『ポーション頼みで生き延びます!』書籍12巻、刊行されました!
よろしくお願いいたします!!(^^)/




