第26話 立場逆転
姉ちゃんってもしかしたら天才なのかもしれない。AI小説専門の投稿サイトに投稿しまくって、それを視聴者達に巡回させるという荒業で広告料を稼ぎやがった。何がヤバいって、姉ちゃん本格的に何もしてないんだよな。
まずURLとパスワードを知ってる人間なら誰でも共有できるサイトに視聴者を集め、AI小説を大量に用意させる。そして視聴者が作った自動投稿ツールを用いて、小説サイトに投稿。その間、姉ちゃんはただ寝てるだけだ。生放送とAI小説で同時に稼ぐなんて、とんでもないことしてんな(ちなみに配信の広告はシャレにならない頻度だが、どうせ広告があろうとなかろうと寝てるだけなので関係ない)。
『わぁ! 今日も百万PVいったぁ! 皆ありがとう! 愛してるよー!』
めっちゃ喜んでるやん。アンタ一歩間違えれば大炎上だよ? 普通の小説投稿サイトでやっちゃダメだからね? 倫理観終わってる人しかいないサイトだから炎上してないだけで、一般的にはアウトだからね?
ちなみに姉ちゃんのリスナー以外も小説を見てる。ランキングの上位を独占してるから、当然と言えば当然か。
姉ちゃんの快進撃は続いており、この前やってた視聴者参加型のVRエッチはとんでもない利益を生み出した(エッチと言っても、雑な言葉責めとかバーチャル電気あんまとかだけど)。これなんかの法律に引っかからんか?
んで俺はその莫大な利益を株に注ぎ込んだわけだが……。
「私が稼いだお金を塩漬けにしちゃうなんてねぇ」
「……面目次第もございません」
「私にギャンブル禁止令を出しておきながら、私のお金をギャンブルで溶かすなんてねぇ?」
「……まだ溶けたわけじゃ……」
「溶けたのと同義だよ、株価回復の見込みなさそうだし」
「……すんません」
まさか俺が説教される側にまわるとは……。
「リスナーさんに相談したら、いっぱいお金投げてくれたからいいんだけどさ」
「……それは申し訳がなさすぎる」
「建志君さぁ、最近はデート代も私任せだったよね? 私の方が稼いでるからってさぁ」
耳が痛い……。でも聞いてくれ、俺は無償で姉ちゃんに尽くしてきたんだよ? そんな姉ちゃんが金を稼ぎだしたら、甘い汁を吸いたくなるのは当然の話じゃん?
「さすがに結婚してくれるよね? 断らないよね?」
「……仰せのままに」
「もうそろそろ出産にリスク伴う年齢なんだけど」
「……今夜にでもお相手させていただきます」
責任を取って結婚なんて珍しい話じゃないと思うけど、責任って色々な形があるんだなぁ……。
「手毬ちゃん、パソコンの清掃終わったから動作確認してちょうだい」
「さすがお義母さん、パソコンの内部清掃できる主婦なんてめったにいませんよ」
「任せてちょうだいな」
母さんも完全に従者みたいになっちゃってるし……。あっ、ちなみに父さんも似たようなもんだよ? 趣味の道具(ゴルフクラブとかかな?)を姉ちゃんのギフトリストに混ぜてもらって、だいぶ良い思いをしたらしい。終わってるよ、この一族。
それと最低な話なんだけど、姉ちゃんのご両親も和解を持ちかけてきたよ。さすがに嫌になってくるね、どいつもこいつも金で手のひらクルクルしやがって。
「あのさ、姉ちゃん」
「ん? なあに?」
「俺さ、姉ちゃんがダメなフリーターのままでも好きになってたよ」
「えっ?」
「母さん達は知らないけど、俺は姉ちゃんが配信界から失脚しても離れないから」
「建志君……! ありがとう! 正直疑心暗鬼になってたんだよ、家族も友達も態度が変わっちゃったから」
あっ、鈍感そうな姉ちゃんでもそういうの気にするんだ。宝くじを当てた人は人間不信になるって聞いたことがあるけど、姉ちゃんもそのタイプだったんだ、少し安心したかも。
俺もとうとう結婚かぁ……。今まで彼女すらいなかったのに、初恋の人……しかも売れっ子のインフルエンサーになった初恋の人と結婚するとはな。




