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初恋のお姉さんが「〝何もしてない〟のに彼氏に捨てられた」と泣きついてきたので、保護してしまった  作者: シゲ ノゴローZZ


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第1話 お姉さんは何もしていない

 幼少期の六歳差は、大人と比較にならないほど大きい。俺は小学三年生の時から近所に住む中学三年生のお姉さんに遊んでもらっていた。同級生に恋をしはじめる年齢の時に六歳上のお姉さんと遊んだとなれば、同級生の女子なんて目に入らなくなるのは必然。向こうからすれば年の離れた弟ぐらいの感覚だったんだろうけど、それでも一緒にお風呂は刺激が強すぎるって。しかも俺は男兄弟しかいないんだぞ。

 まあまあまあ、小学三年生の時ならまあそういうこともあるわいな。でも小学六年生の時も一緒に入ってくれたんだぜ? 中学にも上がってないガキが高校三年生のお姉さん……しかも気になってる相手と風呂とか完全に恋しちゃいますわな(中学に上がっていたら上がっていたで、恋に落ちてそうだけど)。それだけならまだいいんだけどさ、年齢が年齢だけにマセたバカ息子が反応しちゃいますわな。あの時のことを思い出すだけで、悶え死にそうになる。高校に上がる頃には鉄板のネタ、夜のオトモになってたけどね(マゾなのかな、俺って……)。

 なんて下品なことを考えることすら躊躇してしまうぐらい、俺は純粋に恋してたんだよ。恋愛対象として見られていなかったことぐらい分かってるけど、それでも引きずってしまうのが男ってもんよ。

 そんな俺も来月には二十二歳、当然彼女なんておりません。さすがにこの歳まで引きずるのはストーカーの気があるし、そろそろ吹っ切れなきゃ……と思ってた矢先にだな……。


「健志《けんじ》君だよね? 私のこと……ひっく……覚えてるかな……? 小さい頃に……ぐすっ……遊んだ……宮内手毬《みやうちてまり》なんだけど……」


 初恋のお姉さんが半ベソかきながら自宅にやってきました。何があったか皆目検討もつかないけど、女々しい初恋を吹っ切れそうにないことは確定している。


「てっ、手毬お姉ちゃん? なんでここが……いや、なんで俺のとこに……いや、なんでそんな顔……あっ、いやっ、とり……とりあえず上がってください」


 玄関前で泣きベソかいてる友人(しかも初恋相手)を家に招き入れてしまうのは当然の行いである。俺に非はないんだ、この先何があろうと。今となっては死ぬほど後悔してるけど、交通事故みたいなもんだから嘆いても仕方ない。かもしれない運転で回避できるような案件じゃないんだから、こればっかりは。


「ありがとう……。お邪魔します………………うわあぁぁぁん!」


 リビングに入るなり、大の大人とは思えないほど思い切り泣きじゃくる初恋のお姉さん。この時の涙は本物だったのだろうか? 演技には見えなかった……いや、演技じゃないと信じたいだけだろうか。


「お、お姉ちゃん? 何があったの? いや、何があったんですか?」

「敬語はやべでぇ……傷づぐがらぁ!」


 うん、やっぱりガチ泣きだな。借りにも乙女なのだから、さすがに演技であそこまで汚い顔はできないだろう。少なくとも当時の俺は本気で心配したよ。汚い顔だとも思ってなかった。


「ええっと、何があったの?」

「…………彼氏に……」


 この時は一瞬心臓が止まりかけたな。今年で二十八歳なのだから、彼氏ぐらいいても当たり前だし、なんなら結婚しててもおかしくない。さらに言うと子供が二人ぐらいいても不思議ではない。幼少期の記憶よりも遥かに美人になってる気がするし、さぞかし素敵な彼氏がいたことだろう。


「……彼氏さんに? 何?」

「何もじでないのに! …………何もしてないのに捨てられたぁ!」


 この時の俺の情緒はグチャグチャだったな。可哀想なお姉さんを憐れむ気持ちと同時に、お姉さんがフリーになったことに対する喜び、自分にもチャンスがあるかもしれないという一縷の希望、お姉さんを捨てた彼氏に対する怒り、お姉さんが泣いているのに一瞬でも喜んでしまった自分への怒りや嫌悪、様々な感情がグッチャグチャになったのを覚えてる。まあ、結論からいうと取り越し苦労というか、怒り損であり喜び損、自己嫌悪し損、まあ、損ばっかですわ。

 そこからお姉さんの話を黙って聞き最終的に、落ち着くまで俺の家に泊めるということになったのだが……。




「あっ、おかえりー! アイス買ってきてくれたー?」

「……勿論、忘れずに買ってきたよ」

「健志君サイコー! いやー、持つべきものはなんとやらですなー」

「…………どういたしまして。それよりベッドの上でスナック菓子を食べないでくれるかな? というかスナック菓子食べながら漫画読むのやめてくれるかな?」

「善処するよ、それより早くアイス出してよ」

「……一応聞くけど、掃除とか洗濯とかは……。いや、それはいいんだけど、ちゃんとハローワーク行った? 実家に顔出した? ご両親に相談した?」

「もし今日の日記をつけるなら『何事もない素敵な一日でした』かな」


 いやー、手毬お姉ちゃんはさすがですわ。たしかに嘘は一切ついてなかった。たしかに〝何もしてない〟よ、この人。彼氏さん、怒ってゴメンよ。謝罪ついでにお願いしたいんだけど……もう一度ヨリを戻してあげてくれませんか? 顔とスタイルと明るさだけは人一倍優れてるんですよ、この人。電化製品で言うなら、デザインだけは優れてるんですよ、機能はないに等しいけどインテリアとしては最適なんですよ。


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