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つつがなく 〜湯灌にまつわる二十の小話〜  作者: 藤紫


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2/20

2話目『襖一枚の向こう側』

私が以前とある葬儀会社で湯灌をやってた頃の話周りから『死んでる人って怖くない?』と聞かれたことがございました。

そこである日の出来事を話させて頂きました。。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

喪主様は80を過ぎた奥様でございました。

お疲れのご様子で、立っているのもやっとという風に見受けられます。


『湯灌が終わりますまで、奥のお部屋でお休みになられては…』


と提案させていただくと


『それでは…。おじいさんきれいにしてもらってよかったですね。おじいさんのこと、よろしくお願いします。』


と涙を浮かべながら、奥のお部屋へ入られました。


『パタン』


その襖がしまった途端、参列されていたご親戚の皆様方が


『あの家どうするの?』

『相続税とか考えると、売っ払わなくちゃ』

『ばあさんは…』

『お兄ちゃんのところで引き取ればいいじゃない』

『何言ってんだよ、そんなのムリムリ。』


と故人様、そっちのけでやいのやいのと話しはじめました。


私は心のなかで故人様に向かって


『じいさん、死んでる場合じゃないよ。あんたのとこのばあちゃん、家おん出されるかもしれんぞ』


と叫びながら、ご遺体を洗体させていただくのでした。


死んだ人間より生きてる人間のほうがよっぽど怖いというお話でございます。



それでは、次の斎場へ向かいます……

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