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心を縛るXXX  作者: 一布
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おまけ・3 最後に、作品について


 ここまで読んでいただき、ありがとうございます。


 ここから、少し真面目に本作について書こうと思います。


 いや、おまけの1・2が不真面目に書いたかと言えば、そんなことはないんですけどね。軽い文体で書きつつも、できるだけ訴えたいことを書いたつもりですし。


 さて。


 本作は、言い訳でも責任転嫁でもなく本当に誰かのせいで心に傷を負った人が、どう生きるか。そんなことを書こうと思った作品です。


 そのため、一部緩和して表現したところはあるものの、基本的には人の心理や心情を現実的に描くことを心がけました。


 一布の作品は、まずプロットを完全に作成することからスタートさせます。伏線を引く場所、人物のどの心情をどの場面で出すか、どの場面で大きな転機を作るか。


 そのため、主人公である洋平が死ぬことは、プロット段階で確定していました。


 こんなに愛情深い、真面目で、純粋な少年が、親に恵まれず、「正義」を語る行政機関に見捨てられ、その結果、生き直しても命を落とす。それを、どう思うか。


 可能な限り人を傷付けず、命の重さを知り、自分が生きるために必要な範囲の犯罪しか犯していません。本来であれば、犯罪など犯したくない。けれど、生きるためにそうしなければならない。


 そんな少年。


 ──世の中には、理不尽が溢れています。


 幼児への虐待。


 力ない者へのいじめ。


 倫理を語りながら非道なことをする社会人。


 ネット上での、人を自殺に追いやるほどの誹謗中傷。


 幼い子供を乗せた車を煽り、恐怖させるチンピラ運転手。


「お客様は神様」という言葉の意味をはき違え、立場の弱い人を追い詰める疫病神。


 例を挙げればキリがありません。


 それでも、加害行為が犯罪に該当するのであれば、最悪の場合でも、司法や行政が力になってくれる。国民である以上、そう思うのは当然だと思います。


 けれど、そうはならなかった事件が、現実にあります。


 警察の怠慢により失われた命があります。


 その警察の怠慢に対して起こされた国家賠償請求訴訟で、信じられない判決文を述べた判例があります。


 冤罪により、大きく人生を狂わされた人がいます。


 そんなときに、人は、何をすればいいのでしょうか。


 それでも人を思いやれる優しさを持つ人は、どうしたらいいのでしょうか。



 この物語の主要人物は、三人


 理不尽な境遇でも必死に生きる、心根は優しい少年。


 理不尽な境遇にあり、自分の心にある優しさに気付けなくなった青年。


 そんな二人を結びつけるような、親の愛を知らない少女。


 

 この物語は、そんな三人の悲しい気持ちを書き綴るつもりで考え、構築していきました。


 最終的には主人公の死によって完結し、それほど多くはならないだろうと予測していた読者の方々に、問いかけるつもりで書きました。


 この少年をどう思いますか?

 彼の死について、何を感じますか?

 彼を幸せにしたいですか?

 彼を不幸にしたいですか?


 彼は、死んで当然の人間だと思いますか?



 ・・・が。


 第三十八話の洋平を書いているときに、ふと、思いました。


「こいつ、死んじゃうの?」


 テーマを考えるのであれば、死ぬことが正しい。

 テーマを訴えるのであれば、死んで悲しさを伝える必要がある。


 でも、死なせたくなかったです。


 ので、考えました。ここからの展開で、どう生き残らせるか。


 例えば、土壇場で秀人が助けてくれる。

 例えば、目覚めたばかりの超能力でも正義達を圧倒して逃げ延びる。

 例えば、上手いこと切り抜けて逃げ出し、昔話のように「いつまでも幸せに暮らしました」


 この物語はフィクションです。

 でも、考え得る洋平が生き残るパターンは、全てがフィクションですらない「嘘」でした。


 結果、このような結末になりました。


 それでも、最後には救いがあったと、作者自身は思いたいです。


 洋平をできるだけ幸せにしたくて、「嘘」にならない範囲でできるだけのことをしました。結果として、テーマから少し外れました。


 ひたすら書き綴って、何度も「嘘」にならないように書き直して、結果的に、更新ペースが早くなりました。


 もし、現実の世界に洋平がいたら。


 きっと、物語の中にあったように、ネット上などで叩かれるのでしょう。


「死んで当然のやつ」と。


 人の命を奪う犯罪の被害者にですら、被害者遺族が裁判で戦う姿に「金目的の行為」と書き込む輩がいる世の中ですから。


 もちろん、作中で行っている洋平の犯罪行為は、許されるものではありません。償うべきです。


 ですが、同時に、洋平を傷付けた者達も人生をかけて償い、彼の人生が幸多きものになるよう尽力すべきです。警察側の不作為も含めて。


 そう思いながら、読者に問いかけるような物語にしたつもりです。


 他のおまけでも書いたように、作者の力不足故に伝え切れない部分がたくさんあったと思います。


 力不足故に、「おまけ」という形を取っています。


 いつも後書きで感想を求めていましたが、最後に、問いかけたいです。


 洋平をどう思いますか?

 秀人をどう思いますか?

 洋平を大切にしながら失ってしまった美咲を、どう思いますか?


 作者の私情は置いておいて。

 どうか、聞かせて欲しいです。


 ◇


 さて。

 

 この作品、テーマや内容から、正直なところそれほど読まれないだろう、と思いながら書き始めました。


 プロローグから残酷で悲しいですから。


 五人中四人はプロローグの時点で読むのをやめるだろうな、なんて思っていました。


 もし一布がプロの作家なら、そう予測できる作品に着手する時点でプロ失格です。プロは、売れてこそのプロですから。もちろん、一部の読者に間違いなく売れる、という目算があるのであれば話は別ですが(万人受けしなくても、国民の百人に一人が購入すればその時点でベストセラーですし 笑)。


 また、「なろうではまず読まれない」「なろう向きではない」等の声が、感想欄以外のところで入ってきたこともありました。


 それだけに、読んで下さった方、感想をくださった方、評価してくださった方には、ただひたすら感謝です。


 実は、美咲や秀人の未来について、頭の中に浮んできています。


 ああ、きっとこうなんだろうな、というような。


 ただ、作品として書き、投稿するかと言えば──実は、しないだろうな、と思っております。


 書くことはあっても投稿はしないだろうな、と。


 なので、この物語は、この「おまけ」で完結です。


 また別の作品で会うことがあるでしょうが(お願いします! 別作品にも顔を出してください!)、とりあえず、一区切りとして。


 改めて、この場を借りてお礼申し上げます。


 本当に、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一気に最後まで読ませていただきました。 素晴らしい作品ですね。もう書くのをやめようと思ってしまう作品を読んだのは久しぶりです。 ですが、生きていて欲しかったですね。 イラストを描くときは最後…
[良い点] ∀・)ひとまず僕にとって凄まじいインパクトを残した作品でした。ジャンル的には僕が論ずるところの「ダークヒューマンドラマ」になると思うんですが、1つの小説作品としてずっとぶれずに何かテーマを…
[良い点] おまけ部分に書かれていたように「筆者である思いの丈を存分に暴れさせて読者に疑問を投げかけた本作」を私は評価し、尊敬に値すると考えます。執筆とは本来自由なものであり、読み手もまた自由に手に取…
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