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12の魔王と大魔王  作者: 緑葉遊
1/1

魔王フェイス

久々に魔王にあってみようとサクトはふと思った。

大魔王であるサクトの立場上あまり城から離れることができない。

しかし、ここ最近は勇者のゆの字もない。

ならば離れても大丈夫だろう。

そこからサクトの行動は早かった。

支度をするな否やすぐに城からでて一番近い魔王フェイスが支配している国、ホープに向かった。

「あんちゃん、さすがに身分証明書がなければ国に入れることができないよ」

今、サクトは門番につかまっていた。

なんでも身分証明書とやらがないと入国できないようだ。そしてサクトは身分証明書を持っていない

これではサクトはフェイスに会うことができない。

「そこを何とかできませんか?僕にはどうしても会いたい者がいるんです」

「そういわれてもねぇ、ごめんな、あんちゃん身分証明書なしに通したら俺が魔王様の顔に泥を塗っちまう」

「そうですか…、なら手紙を書くのでをマータという者に届けてくれませんか?」

「うーん、それくらいなら引き受けてもいいかな…?マータってやつだなわかった」

「はい、お願いします。僕は国の周辺にいます」

サクトはすぐに短い手紙を書きあげると門番に手紙を渡しその場を去った。

夜。

サクトはホープの近くにある森の中で焚火を焚き夜食をとっていた。

魔獣の肉に森に生えていた薬草を塗り込んだものと現地で調達したものばかりで作られていた。

ゴムに近い感触の肉を味わっていると、木々の間から男が姿を現した。

男はサクトの姿を見ると少し驚いた顔をした。

「ほんとにこんなところにいたんですね。サクト様。ヴィナス様が知ったらごちゃごちゃ言われますよ」

「ははは、そうだなアイツが知ったら絶対に文句を言ってくるだろうな。久しぶり、マータ」

「ひさしぶりです、サクト様」

マータその場できれいにお辞儀をした。

この男がマータ・フラン。

フェイスに仕える自動人形オートマターの一人である。

「それにしても手紙をもらったときは驚きましたよ、国に入れないから迎えにきてくれだなんて。サクト様は大魔王じゃないですか、門番そう伝えれば身分証明書がなくても余裕で入国できましたよ」

マータが言うとサクトは少し嫌な顔をした。

「マータも知ってるだろ、僕は特別扱いされるのは好きじゃない。できれば一魔族として過ごしたい」

「知ってますけど、はぁー…とりあえず森の中ではなんですし、一度わたしの家まで来てもらっていいですか?そこで話の続きをしましょう、事前にサクト様が入国できるように手配しておきましたよ」

呆れた顔をしながらマータが言うと、サクトは立ち上がりマータとともにホープに向かった。

「あらら、サクト様がいらっしゃるなんて、何も準備していないわ。どうしましょ、どうしましょ」

マータの奥さん、ギアナが急なサクトの訪問に驚き台所で右往左往している。

「すみません、普段はもう少し落ち着きがあるのですが」

「伝えていなかったのか?」

「いえ、伝えたのですが…その今ギアナは妊娠しているので、歯車がうまく回っていなかったようで」

ギアナの腹部を見ると確かに少し膨らんでいるのが分かった。

自動人形は子供を授かると体の機能のほとんどを子供を作るのに力を入れる。そのため記憶の欠落や落ち着きがなくなることがよくある。

「そうだったのか、それはめでたいな。しかし大変な時期に来てしまったな。申し訳ない」

「いえ、とんでもない。サクト様が謝ることはありません。すみませんが一度ギアナを落ち着かせてきます」

そういうとマータはギアナを落ち着かせるために台所に向かった。

コンコンー

マータが台所に向かった直後、玄関から扉がノックする音が聞こえた。

今はかなり遅い時間だ。普通こんな時間帯にモノが来るのはおかしい。

コンコンー

またノックの音がする。考えていても仕方がないのでサクトは扉を開けることにした。

扉を開けると一人少女が立っていおり、サクトの顔を見るとにっこりとほほ笑んできた。

「こんばん、うわっぁ!?」

サクトがあいさつをしようとする否や少女はサクトに抱き着いてきた。

それもかなり力が強く、全力で抱き着いてきたということがわかる。

だが、サクトはそれで抱き着てきた相手が誰なのか分かった。

「わかった、お前フェイスだろ」

サクトが言うと抱き着てきた少女は顔を上げまたもやにっこりとほほ笑んできた。

ノーン・フェイス。

12の国の一つを収める支配の魔王である。

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