第1話:異世界転生フラグと白い天井
はじめまして、ご覧いただきありがとうございます!
本作は、「異世界転生に失敗したオタク少年が、現実世界で【才能鑑定】のチート能力に覚醒し、隠れた天才たちをプロデュースしていく現代ファンタジー」です。
「異世界に行ければ無双できるのに」と現実逃避していた主人公が、一見地味なクラスメイトや厳しい先生、そして幼なじみが秘めた超規格外の才能を目撃し、彼らを裏から輝かせる「最高のプロデューサー」として現実世界を攻略していきます。
異世界転生・勘違い・無双系が好きな方
地味な奴が実は最強(隠れチート)展開が好きな方
主人公が知略やサポートで活躍する物語が好きな方
そんな方に楽しんでいただけるよう、書いてみました!
※毎日20時更新予定です。
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「また異世界かよ」
佐藤拓真はスマートフォンの画面をスクロールしながら、ため息をついた。
大手小説投稿サイトのランキングは、今日も異世界転生ものの作品で埋め尽くされている。
「異世界で無双、異世界でスローライフ、異世界でハーレム……みんな飽きないのかな」
そう呟きながらも、拓真の「お気に入り」フォルダには数百作品の異世界転生小説が保存されていた。
文句を言いつつも、彼自身が最も異世界に憧れているオタク少年だったのだ。
放課後の教室。窓から差し込む夕日が、空になった机と椅子をオレンジ色に染めている。
部活の声が遠くに聞こえる中、拓真はスマホを閉じて立ち上がった。
「たくまー、帰ろうぜ」
声をかけてきたのは幼なじみの高橋美咲だ。
肩まで伸びた黒髪を揺らしながら、彼女は教室の入り口で手を振っている。
「おう」
拓真は適当に返事をしながら鞄を手に取った。
美咲とは幼稚園からの付き合いで、家も隣同士。互いに異性として意識したことはないが、なんとなく一緒に帰るのが日常になっていた。
「ねえ、最近また小説ばっかり読んでるでしょ。目が悪くなるよ」
「別にいいだろ。どうせ異世界に行けば治るかもしれないし」
「またそんなこと言って……たくまは昔から空想ばかりだね」
美咲がクスクスと笑う。拓真は少しムッとした表情を浮かべた。
「空想じゃない。可能性の話だ。毎日毎日同じことの繰り返しで、何か特別なことが起きてもいいだろ」
「特別なこと、かあ……」
美咲は少し考えるような表情を見せたが、すぐにいつもの明るい笑顔に戻った。
「じゃあさ、今日は特別にクレープ奢ってよ」
「は? なんで俺が」
「異世界に行ったらお別れなんだから、今のうちに孝行しなさいよ」
「理不尽すぎるだろ」
そんな他愛もない会話を続けながら、二人は校門を出て大通りへと歩き出した。
夕暮れ時の商店街は、部活帰りの学生や買い物客で賑わっている。
コロッケ屋の匂い、ゲームセンターの騒がしい音楽、八百屋のおばちゃんの威勢のいい声――いつもと変わらない、拓真が「退屈」と感じている日常の風景だ。
「そういえばさ、来週の文化祭、たくまのクラスは何やるの?」
「メイド喫茶だってよ。またかよって感じ」
「あら、いいじゃない。私、たくまのメイド姿見たいな」
「出るわけないだろ。俺は裏方」
信号が赤に変わり、二人は横断歩道の前で立ち止まった。
美咲が何か言おうと口を開いた瞬間――
ドドドドドッ
不気味な振動と共に、大型トラックが猛スピードで交差点に突っ込んでくるのが見えた。
信号無視だ!周囲から悲鳴が上がる。
「まさか」
拓真の脳裏に、数多の小説で読んだ「異世界転生の始まり方」がフラッシュバックする。
(これだ。これが俺の転生フラグだ!)
恐怖よりも先に、歓喜が全身を駆け抜けた。
やっと、やっと俺にも順番が回ってきた。
異世界でチート能力を手に入れて、魔王を倒して、美少女たちに囲まれる生活が――
「たくまっ!」
美咲の悲鳴。
ドンッという衝撃。
視界が真っ白になり、意識が遠のいていく。
(来い、異世界! 俺の第二の人生! 神様、俺に最強のスキルをくれ!)
そして、すべてが闇に包まれた。
どれくらい時間が経っただろうか。
拓真はゆっくりと目を開けた。
最初に視界に入ったのは、真っ白な天井だった。
蛍光灯の淡い光。カーテンで仕切られたベッド。鼻腔をくすぐる消毒液の匂い。
「……ここは?」
声がかすれている。首を動かすと、枕元に点滴のスタンドが見えた。
自分の腕にはチューブが繋がれ、左手の人差し指にはパルスオキシメーターが装着されている。
「病院……?」
拓真は混乱しながら周囲を見回した。
テレビには見慣れたバラエティ番組が映り、窓の外には見覚えのある街並みが広がっている。
「異世界……じゃない?」
「あら、気がついたのね!」
カーテンが開き、白衣を着た中年の女性医師が顔を覗かせた。
名札には「内科 山田」と書かれている。
「佐藤拓真くん、わかる? ここは市立総合病院よ。あなた、交通事故に遭ったの。覚えてる?」
「交通事故……」
トラック。美咲の悲鳴。そして、あの時の高揚感。
「三日間、昏睡状態だったのよ。でも、奇跡的に大きな怪我はなくて、軽い脳震盪と打撲だけで済んだわ。本当に運が良かったのね」
「運が……良かった……」
拓真は力なく天井を見つめた。
(運が良かった……のか?)
異世界転生できなかった。
チート能力も手に入らなかった。美少女ハーレムも、魔王討伐も、冒険者ギルドも、すべてが幻想で終わった。
「がっかりだ……」
思わず本音が漏れる。
「え?」と首をかしげる医師に、拓真は「なんでもないです」と小さく答えた。
医師が去った後、拓真は再び天井を見つめながら考え込んだ。
(結局、俺はただの高校生のままか。異世界なんて存在しない。あれは全部、フィクションの中だけの話で……)
憧れていた大冒険の幕開けではなく、ただの不運な交通事故としての結末。拓真は深い溜め息をつき、静かに目を閉じた。
最後までお読みいただき、本当にありがとうございました!
『トラックに轢かれたのに異世界転生できませんでした。~現実世界で【才能鑑定】のチートが生えたので、隠れ天才たちをプロデュースして最高に面白い日常を作ります~』をお届けいたしました。
「異世界転生」という定番の約束事を一度盛大に裏切りつつ、「もし現実世界にステータス画面があったら?」というワクワク感を詰め込んだ物語です。
拓真が目指した異世界は存在しませんでしたが、私たちが生きる日常のすぐ隣にも、まだ誰にも気づかれていない輝かしい「才能」が眠っているのかもしれません。
チート能力を手に入れた拓真が、美咲をはじめとする「隠れた天才たち」をどう導き、どんな面白い日常を作り出していくのか――彼らの冒険はここからが本番です!




