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第十一章 希死念慮

私は卓也と別れてから、気分が安定しなくなった。


私は気分の変動が激しく、その影響で

協力関係にあった仕事仲間も失い始めていた。


同じ専門学校に通っていた税理士受験仲間。


若い時からの付き合いで、共通の志があったのと

同じ職業の悩みを共有できた。


好意的な関係が続いていた。

定期的に情報交換と称する飲み会をしていた。


ソウ状態のときは、

口喧嘩を吹っ掛けたり、ハイな状態で

突拍子もない事業の話や下ネタを連発して

楽しい雰囲気をぶち壊していた。


ウツ状態のときはどうしても家を出られず

ドタキャンを繰り返した。


気分障害ということで大目に見てくれたが

そんなことが度重なると、よそよそしさを感じた。


私の居ないところで陰口で盛り上がったいることは

容易に想像できた。


卓也のように

私を全面肯定してくれる人はいなかった。

そんなことは願うこと自体が無理なことだった。


私は気が付かないうちに人間関係を破壊し続けていた。



私を誘ってくる顧問先の社長がいた。

全身をブランド品で固めていて、コロンの香りが強い男。

ブランド品の時計や財布が嫌味でしかない。

卓也と比べるまでもないが、品がない。


こういう男をみると卓也の誠実さと品の良さ、

スーツや持ち物のセンスの良さ、

男としての性的魅力に気づかされた。


いつもはそんな誘いを受け流していた。

その男の目的はわかっていた。


その日は、少し躁状態で気分が良くて、まぁいいかと誘いに乗った。

不自然に気分が良いのは気分障害の危険な兆候だった。


食事とバーまではなんとか付き合えた。

ホテルに誘われて、私は卓也とのセックスを思い出していた。


急激に私は卓也に抱かれたいと思った。

卓也の感触が全身を駆け巡った。


同時に、こんな男とは絶対にホテルには行かないと思った。


その夜に卓也にLINEをした。

新しい男ができたとわざと下品な感じで書いた。

性的な関係も持ったようなことを匂わせた。

卓也に嫉妬させたかった。


卓也は、必ず返信をしくれた。

まずは、私の体調のことを聞いてくれた。

そして最近の楽しかったことを書いてくれた。


付き合っていたころと同じで癒された。

卓也はいつも私に優しかった。


私が自嘲気味なることは、それは違うよと

諭してくれた。

卓也に言われると素直な気持ちになった。

ただ、そんな素直になった自分を表現する術をしらなかった。

わざと茶化した。


男のことはほとんど触れてこなかった。

ウソだと見抜いていたか、

わざとスルーしてくれたのかはわからなかった。


逢いたいと書いてきてくれたら、

しょうがないな~って感じで、

いつでも卓也に逢いに行ったのに。


卓也をベッドの上で

思いっきりいい思いをさせてあげたかった。


終わったらじゃ~ねと都合の良い女になったのにと思った。

卓也に負担はかけたくなかった。


ただ、それは自分への言い訳であって

本当は卓也に抱いて欲しいだけなんだと分かっていた。


卓也は、逢いたいとは書いて来なかった。


私からは逢いたいという雰囲気はどうしても出せなかった。


そんな夜は、

卓也に抱かれたことを思い出した。

耐えられずに私は自分で自分の体を慰めた。


鏡に映る自分の裸体はキレイだ思った。

卓也が私の体を見る時はとても優しい目をしていた。

麗子はキレイだねといつも言ってくれた。

私はその声を聞くだけで癒された。


卓也にこの体を見て欲しい。

そして抱いて欲しいと思った。


いつも私の体を大切な宝物のように愛撫してくれた。

私を包み込むように愛してくれた。


卓也の感触を思い出した。


私は体を硬直させた。

全身が痙攣した。

切ない気持で絶頂を迎えた。


悲しい吐息を小さくあげた。


同時に涙があふれ出てきた。


もうこの世から消えてなくなりたいと思った。





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