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第十章 別れ

私はいつも卓也には負い目を感じていた。


私の気分次第で卓也を振り回している自覚があった。


卓也はいつも私を全面肯定してくれた。

本来ならとっくに愛想をつかされても

おかしくないはずだった。


卓也は我慢強く私を支えてくれた。


私ができることは

感情障害が落ち着いたときに

明るくお茶目でかわいい女を演じることだった。


私は軽い女を演じた。

卓也の負担を軽減したかった。


卓也は誠実だった。

だから、私との不倫に心を痛めていると思った。


私はいつも

「そろそろ私としたんいじゃないの」

というような品のない言い方で卓也を誘った。


それは卓也を想ってのことだった。


ベッドの上では、私は卓也に尽くした。

そうすることで卓也にお返しをしたつもりでいた。

それは私の自己満足だったと思うけれど。


私と卓也が男女の関係を持つことは

暗く後ろめたいことではなく

明るく楽しいことだと思って欲しかった。


通販でエッチな下着を買ってホテルで着替えた。

卓也に楽しんで欲しかった。


卓也は優しいから、その下着をすごく喜んだフリをしていた。

実際は少しも喜んでいないことがすぐにわかった。

私は二度とそんな下品なことはやめた。


私の体をいつもキレイだって言ってくれた。


私は胸を豊胸手術している。

だから、体が細いのに胸が大きく形が整っている。


私の胸を強く触れれば、異物感があってすぐわかる。


卓也は、私の豊胸手術に気が付いていたと思う。

いつも優しく愛撫してくれて、気が付かないフリをしてくれた。


隠しているのがつらかった。

私はそのことを告げた。


そんなこと関係ない、麗子はキレイだよと

決して茶化したりせずに誠実に言ってくれた。


私は卓也とのその瞬間は、いつも最高の至福のときを迎えていた。

それは演じているわけではなかった。



私は感情障害を持った女。

卓也をこの2年間、振り回してしまった。

私は散々に卓也を困らせ、傷つけてきた。


それでも卓也は絶対に自分からは

別れようとは言わないと思った。


私の気分障害の悪化を考えてくれていたと思う。


私は、この2年間で充分に卓也に癒されたと思う。


私は卓也が好きだった。

もう私から解放してあげたいと思った。


卓也と全く縁がなくなるのは怖かった。

少しでも繋がっていられたら、別れられる気がした。


困ったときや助けが欲しい時に

少しでも卓也を頼ることができたら、

なんとなかなるように思った。


私は決意した。

いつもの我が儘な女を演じながら

卓也に話をした。


「そろそろ別れた方がいいよね」

「娘も小学校に入学だし」

「ただ、お互い連絡したいな~と思うときは連絡して

逢いたいな~と思ったら逢うというような関係はどうかな」

「お互いその方が楽だよね」


本当は娘の事は関係なかったが、

卓也には説得力があるような気がして付け加えた。


卓也は、とても悲しい顔をした。

「そうだね」と言ってくれた。


私は、心の中は泣き出したいほど悲しかった。

あまのじゃくでひねくれ者の私は、

そんな雰囲気は一切出さなかった。


「じゃ~そういうことでね」

「卓也さん、寂しくなったら連絡してもいいからね」

と私は軽い女、強気な女を演じてしまっていた。


卓也の前で思い切り泣いて

甘えて、頭を撫ぜてもらいたかった。



その日の夜、素直でない自分を嫌悪した。

私は涙が止まらなかった。





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