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第41話 最弱にして最強の男。

みなさんここまで読んでいただき有難うございました。

 視界が暗転する、暗き瞳の裏から覗き込むように段々と僅かに漏れる微光。目覚めの証。


 「………ぁ」


 呻き声は狭い部屋にはよく響く、自分なのに自分だと信じたくない反響音が寂寥感を襲う。

 少年は子供と言って良い容貌をしていた、傷一つなく完璧で、それが異質な事だと気づく。


 「僕は、蘇生したんだ……」


 天井からは自然の明かりに照らさせて埃一つない、真っ白な空間。

 子供の頃から見慣れた場所、そこは教会の蘇生の間だった。

 だからこの結果は少年にとって祝福されるべき事象だったはず。

 なのに居た堪れない虚無感に襲われながらも必死に未覚醒の体を起こそうともがく、傍らには一人の神父がいた。


 「やっと戻って来おったか……英雄よ」


 英雄と言われ少年の瞳から涙が溢れてくる、失敗だ、自分は取り返しのつかない失敗を冒したのだ。


 「……おじいちゃん、僕は助けられなかった……おじいちゃん!」


 おじいちゃんの温もりにしがみつく、そうしなければ自己の存在を認めるわけにはいかなかった。

 夢であれば良かった、だか少年が知覚した温もりがこれでもかと言う現実を明瞭に伝えていた、だから抱きつきながら耳を塞ごうとする。

 これ以上の情報を遮断してしまいたかった。


 そっと優しい皺だれた手が少年の頭へと載せられる。しかし何時もと違った優しいのにどこか讃える手つきに違和感を覚える。

 少年は違和感からおじいちゃんの話に耳を傾けてしまう。


 「アレクよ……お主は真に英雄となったのだ、伝説として語り継がれる英雄の一人として」

 「何言ってるの、僕は救えなかったんだ!」

 「カカカッ! では見るが良い、お前が成した事。そしてアレクを待っている者たちをな」

 「待っている?……!!」


 ——それって!——


 アレクは蘇生酔いなんて構わず、勢いよく蘇生の間から飛び出す。

 失敗した? そうじゃ無いのだとしたら。もしかしたら。

 逸る気持ちを抑え切れず足が前へと走り出す。


 「おわっ!」


 気持ちが先行して、蘇生の間から出たところにある段差に足を躓けてしまう。


 「もぅ、成長しないわね……」


 横から優しくもツンケンとした声が聞こえる。

 優しく僕を支えてくれる糸の力。

 嬉しくて涙が出そうになる。

 振り返れば赤い燃える様な髪と人を射さす様なワインレッドの瞳。


 「……ユリ姉? ユリ姉!!」


 目の前にはユリア・スカーレッドがいた。


 「ふむ、存在を消してないのに私に気付かないとは少し傷付くぞアレク」

 「ふふ、ユリアさんに私も負けてしまいましたね」


 反対を向くとサラ姉とティア姉がいた。僕は夢でも見ているんだろうか。


 会いたい、一番会いたい人がいる。

 正面を向くと優しそうに、こちらに向かってくる青年がいる。


 佇まいは堂々としていて自信があるのが分かる。

 誰でも惹きつけてしまう鋭く青い双眸に、何処を向いても名高い絵画になるような好青年。


 名をラインハルト・ミュラーと言う。


 「お兄ちゃん!!」

 「おいおい、慌てるな! 死ぬぞ!」


 僕を抱きかかえて慌てる人、会いたかった人。

 僕は一人じゃなかった。


 「カカカッ! 英雄が一堂に勢ぞろいだのぅ」


 おじいちゃんがそう言って笑う。気づいて周りを見渡せば町のみんなが祝福してくれていた。


 口々に大賢者様! 大賢者様!と。


 「これ、夢じゃ無いよね」

 「何を言ってる現実だ、アレクは世界を救ったんだ。そして俺たちもな」


 やまない拍手の中で、アレクは思い当たる点があった。

 あの記憶の中の老人が渡してくれたもの。


 「僕に蘇生魔法をかけてくれたの……かな? なんてね」


 知るのは神か大賢者くらいだ。


 勇者と共に歓声を受ける、人生でこんな事初めてだ。

 上を向けば勇者様がいる、そんな勇者がアレクに手を差し伸べる。


 「アレク、まだまだ世界は広いんだ。俺と一緒に……いや、みんなと一緒に冒険へ行かないか?」


 まだまだ見果てぬ世界がアレクを待っている。

 きっと僕と勇者の冒険はずっと続いて行くんだ。


 だからもう、答えは決まってる。

 アレクは大きな声でハッキリと返事をした。



 「うん!」


 

 最弱にして最強の少年が歩んだ誰も想像しなかった永遠に語り継がれる伝説の物語。


 終幕。



 HP1の大賢者〜そんなHPで大丈夫か?全然大丈夫じゃない大問題だ〜   完

最後まで読んでいただき、本当に有難うございました。


当初の予定では「HP1の勇者」と言う5千文字程度のギャグ小説を書こうとしていました。

そんな途中でHJ大賞の布告を見て、長編へと伸ばした経緯があります。


タイトルと私の作品を見る限りギャグが強めです、本来はこの作品もギャグでした。

初めての挑戦となった長編作品でしたが如何でしたでしょうか?

かなーり不安が溜まっています。

伏線とか矛盾とかありまくりますが、全部回収して行こうとすると文字が収まらなくなる。

初めて長編に書くと分かる物語の纏める難しさ。


えーと次に短編を何個か挟むかそのまま長編にまた挑戦するか悩んでますが短編にせよ長編にせよ話は出揃ってます。

多分そのまま長編を書くと思います、なので宜しければ次の作品も読んで頂けると嬉しいです。


 今回の反省を含めて次作の長編は完成してから公開しようかと思っています、なのでまたですが二週間を目安に休息いたします。

 先に話しておきます、異世界転生・チートなし・男主人公・ギャグ要素多め・勘違い系です。

 このタグから分かる地雷臭、でも良いんです。

 なんでかこの話みんな書かないよなぁ、なんて思っていたので書こうと思っています。

 でも今回は伏線とかそんな脳の疲れることしません、投げっ放しエンドです。


 では早ければ再来週会いましょう。


 最後に改めて読んでいただき誠に有難うございました。

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