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さて、別棟にいる『毒草』たちの討伐をする前に、俺たちは神月の仲間集めを手伝うことになった。
この施設に連れて来られた『毒消し』は、綾崎と俺を除いて既に全滅してしまっているらしい。そのため仲間に誘うとしたらまだ生き残っている『毒草』たち。その中でも絶対に連れていきたいのはムクロだという。
別棟にもかなりやばい『毒』を持った者はいるらしいが、おそらくムクロに勝る者はいないらしい。万が一神月のエセ祈願や、『毒消し』である俺や綾崎らの物理的な抑え込みが通じなかった場合、ムクロは最後の切り札として連れていきたいとのことだった。
で、その交渉に向かわされたのは俺なわけで。
本当に最近の俺には権利というものが欠けているように思う。
人に流され人に試され人に使われ。
いい加減暴れたくなってくる。
だがしかし、これらは全て俺の実力不足に由来することだ。
突然拉致って来た黒服どもに負けない力の強さや、この場にいる毒草どもに影響を受けない心の強さを兼ね備えていなかったが故の事態。
要は平和ボケして鍛錬を怠ってきた、自業自得の結果。
愚痴など男としての格を下げることにしか繋がらない。
だから吹っ切れてできることをやるのみだが――
「……」
「……」
「…………」
「…………」
「………………その」
「なんでしょうか」
気まずい。
いつもと変わらぬ虚ろな瞳でこちらを見返す紫ツインテ少女。改めてリアリティゼロな存在だと不思議に思うが、目の前に実在している以上リアリティがないことはないのだろう。
それはさておき、どう切り出したものか。表情こそ全く変化はないが、前回最後に会った時の感じからするとまだ怒っている(?)可能性が高い。そんな中で新たな頼みごとをするのは、良識ある人間としてやや気が引ける。だから取り敢えず、
「その、すまん」
謝罪してみた。
しかし謝罪は全く心に響かなかったのか、ムクロはカタリと首を傾げた。
「それは一体、何に対する謝罪でしょうか?」
「いや、それは……なんか怒らせちまったことに……」
「ふむ。でもだとすれば、私が聞きたいのは謝罪の言葉ではないのです」
反対側にカタリと首を傾げつつ、じっと視線を合わせてくる。
ゾクリと背筋が震えるのを感じながら、必死に彼女が求めている言葉を探し出す。そしてふと、別れ際にムクロが言っていた言葉を思い出し、恐る恐る口を開いた。
「じゃあ……ありがとう?」
「疑問形なのがちょっと気になりますが、まあいいでしょう。それで、本当の用事は何ですか? まさか謝るためだけに、後ろにずらりと人を引き連れてきたりはしませんよね」




