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第6幕 山田一郎の没落

 二つの派閥が瓦解している頃、山田一郎も危機に瀕していた。


 ヨガサークルの先輩に連れられて行った自己啓発セミナーから気が付けた高価な壺や英会話教材、クリスチャン・ラッセンの絵など大量に買わされ、金銭的に危機となっていたのだ。

 自身の預金だけでは足らず、母親の通帳から幾らか引き出した挙句、消費者金融にまで手を出していた。

のちに、当時のことを山田一郎は自身の手記にて以下のように書いている。


「あの頃は洗脳されていたんだと思う。みんなに責められたし、母親も泣きながら『あんたなんて産むんじゃなかった』と言っていたけど、そんなこと言ったってしょうがないじゃないか」(「山田中年の手記」(民明書房 2098年 初版)より引用)


 どこかの渡る世間は鬼ばかりいそうなところの息子さんみたいなやる気のない言い訳をしている山田一郎であるが、洗脳されたからといって言い訳できる話でもない。

 同志である「坊主」と「メガネ」の当時のLINEのやり取りでは、山田一郎に対して見限るような発言がされている。


(坊主)「山田の野郎、オタサーの姫※1みたいなのにめっちゃ貢いどるw」

(メガネ)「ドゥフフw テラワロスwww オタサーの姫てw」

(坊主)「某大型掲示板※2で晒そうぜw」

(メガネ)「いいでゴザルなw」

(2057年発刊「週刊センテンス・スプリング 15号」より引用)


 かくして、同志たちによって広められた痴態は話題を呼び、某大型掲示板でのやり取りをまとめた書籍『貢ぎ男』※3はミリオンセラーを記録、映画化やドラマ化まで果たした。

 日本中に自分の痴態が晒されるに至り、ようやく自身が詐欺に遭っていることに気付いた山田一郎であったが、手元に残されたのは壺と英会話DVDとクリスチャン・ラッセンのイルカだけであった。

 友を失い、金を失い、母親からも見捨てられた山田一郎は、かくて引きこもることさえも許されず、不幸のどん底に落ちるのであった。


※1 オタサーの姫 オタク系サークルに単体で存在する女性。エンチャント効果により、オタサーが場にあり、女性が一人である場合に限り顔面偏差値に+20される。

※2 某大型掲示板 年々平均年齢が高くなってきているネット掲示板。でも古いネット語を使うと叩かれる傾向にある。

※3 『貢ぎ男』 女性の顔がガンダムのザクレロに似ていることから、ヒロインがザクレロ呼ばわり。ひどい。


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