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今日も異世界ライフを満喫中  作者: ツヴァイ
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 絶叫したのはクリスティーナだった。彼女の魔力回路にグラナトが無理矢理自分の魔力を流したのだ。


 普通、魔力回路に魔力を流すというのは安易にはしない。それぞれが持つ魔力には波長があり、その波長が合うものが魔力を流すとほんのりと温かく感じる程度だが、波長の合わない者同士でこれをすると大変な激痛を伴い、最悪、魔力回路がズタズタになり魔法を使えなくなってしまう。


 元々、魔力回路に魔力を流すというのは、魔力の扱いにまだ慣れない子供が親から手解きを受ける時にしてもらうのが定番だ。魔力の波長は受け継がれる事が多いので親子間で行うのがとても楽なのだ。簡単にいうと魔力に触れて慣れよう、と言う事だ。


 クリスティーナが絶叫する程の負担ならば、グラナトとクリスティーナの波長はあまり合わないと言う事になる。グラナトに言わせれば、「合わなくて結構だ」と言いそうである。


 魔力を流し終わったグラナトはクリスティーナの蟀谷から手を離すとクリスティーナはその場に顔面から崩れ落ちた。ガツンと良い音がしたが、グラナトは気にする事もなく、ユーリ達がいる所まで戻って来た。


 その顔は無表情でクリスティーナにあれだけの絶叫を叫ばせた事をなんとも思っていないのが見て取れた。


「煩かった」


 戻って来て早々に発した言葉がこれだった。それに同意するのが扇で遊んでいるティアンだった。


「なんて醜い断末魔の悲鳴かしらね」


「いや、死んでないから!」


 場の空気を壊すように朗らかに言った言葉をすかさずにユーリがツッコむ。


「あら?そうだったかしら?」


 可愛らしく小首を傾げるティアンにユーリは脱力感を覚えた。一つ溜め息をつくと腕の中のアンリの柔らかい髪に頬擦りをして癒される。


「ユーリ、くすぐったいです」


 クスクスと笑うアンリはユーリの胸に頬を擦り付けて甘える。そんな様子にグラナトとティアンが微笑ましそうに口角を少しだけ持ち上げて微笑む。


「で?この場の収拾はどうするのかな?」


 呆れ顔でユーリとアンリに眺めながらフィーが嘆息する。謁見の間は未だに氷河期か雪国位に寒いし、肝心の王は意識が無い。


「仕方ないわね。グラナト」


「そこでなんで他に振るんですか!」


 頬に手を当てて、仕方無さそうに溜め息をついたティアンがグラナトへと話を持っていく。話を振られたグラナトも慣れた様子だったが、それにフィーがティアンの行動に異議を唱える。


「俺は別に構わない。それにティアンが力を使えば、この場は地獄になるぞ」


 このグラナトの言葉でその場の全員がバッとティアンを見やる。集中した視線をものともしないティアンがニコニコ笑っている。


「私、元々大規模魔法が得意なのよ。だから細かい調整とか無理。その点、グラナトは緻密な魔法が得意なのよ」


 外見からして普通逆じゃないだろうか、と思う物もいたが敢えて言及しなかった。先程までのティアンの怒りの様子に怒らせてはどうなるか分からないからだ。


 グラナトは謁見の間の空気を暖かいものに変えた。すると直ぐに凍りついていた扉や床が溶け出して、元通りになった。

 温かくなったお陰で寒さに震えていた貴族達もほっと安堵の溜め息を漏らす者達がいた。


 意識のない王を休ませる為にこの場は解散としてはどうだろうと宰相が提案したが、ティアンとグラナトが認めなかった。仕方無く、そのまま王が目覚めるのを待つ事になったが、案外直ぐに王は目を覚ました。


「すまなかった」


 目覚めて直ぐ、開口一番がユーリ達に対する謝罪だった。

 謁見の間に移動する直前にクリスティーナがどうしても相談したい事があるから会って欲しいと言われ、会う事になった。

 普通だったら貴族であろうと王に会う為には事前に御伺いをたてるものだが、この時は王妃からの口添えもあり、会う事になったのだと。そして、クリスティーナの魅了によって操られたのだという。


「では王妃もか」


 グラナトが腕組みをして嘆息する。どこまでも詰めの甘い王族だとでも言いたそうだが、そこまでは言う気がないので黙っている。


「うむ。どうやら王妃は主催するお茶会でクリスティーナ嬢と出会い、そこで魅了を使われたと思う」


 王妃の様子を確認しに行って貰うと案の定、ソファに座り本を読んでいる状態で王妃も気を失っていた。立っている時などに気絶しなくて良かったとユーリは一人安堵した。


「して?此度はどう言った事で召集されたのですかな?」


 王には操られていた間の記憶がないらしく、先程までの会話を覚えていなかった。


「ユーリが誘拐されたのよ。私は忠告したのにこの件をどうするのかしら?」


「まあ、その件はあの娘が操っていた輩の仕業だったがな」


 ティアンとグラナトが憤慨気味に良い放った言葉に王は瞠目すると二人の足元まで急いでやって来て、土下座した。


「申し訳ありませぬ。あの娘には極刑を…」


「だそうよ、ユーリ。どうする?」


「え?私?」


 突然話を振られてユーリは戸惑った。クリスティーナによって操られた男達に誘拐されたが、そこに関して不思議と悪感情が無かった。


「そうよ。被害者じゃない」


 ティアンにそう言われてもクリスティーナに恨みや怒りなどといった感情がないので、正直戸惑いしかない。アンリを想った感情が暴走して大事になってしまったが、彼女をどうこうしようとは思わない。


「私は無事でしたし、クリスティーナに少しの罰だ…」


「では、クリスティーナ嬢の被害を受けた一人として…処刑してください」


 ユーリの言葉を遮って発言したのはアンリだった。彼もまたクリスティーナの被害者だ。そんな彼は残酷な刑を所望した。


「アンリ?」


 朗らかに微笑んでいるが、とても怒っている気配を敏感に感じたユーリ。腕の中にすっぽりと収まる彼はいつも通りに可憐だ。


「僕の婚約者を拐ったんです。それ相応の処罰が妥当でしょう」


「え?私、いつからアンリの婚約者に!」


「ガンツとナンシーには許可取ってますよ」


 寝耳に水だった。驚いてガンツとナンシーを振り返れば、ガンツが苦笑い、ナンシーがサムズアップして満面の笑顔で答えてくれた。


「でも、アンリと私は年齢がね」


 離れてるでしょ?と言おうとしたが、微笑んでいたアンリが次の瞬間には泣きそうな表情でユーリを見上げている。


「ユーリは以前、僕と結婚してくれるって言っていましたよ」


「あれは大きくなったらって話だったと思うんだけど!」


 焦るユーリの背中にグラナトがぼそりと告げた。


「大きかったらと言うのは、大人になったらと言う事か?大人だったら結婚するのか?」


「え?」


 ユーリにも恋をして好きな人と結婚したいという思いは心の底である。だが、現実は男性が苦手で話すのも儘ならないのが現状だ。それでも此方の世界ティエラにきてからはそれも鳴りを潜めている。ユーリの周りの男性達が優しいというのもあるのかも知れない。近付いても大丈夫な男性もいる。ガンツやゴンザレスやグラナトやアンリだ。

 ガンツとゴンザレスは父親のようで一緒にいて安心するし、グラナトは頼りになるお兄ちゃん、アンリは近くにいるだけで和む。


「じゃあ、ユーリが結婚してくれるのなら僕大人になります」


 ユーリに抱き付いたまま興奮気味にアンリが宣言した。「大人になる」と言った所で本当になれるわけでなないだろうにと思うが、アンリはなる気満々のようだ。


 





読んでいただきありがとうございます。

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