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今日も異世界ライフを満喫中  作者: ツヴァイ
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 極寒零度の中、無事なユーリ達の様子に精霊達が護っていると気付いた恰幅の良い貴族の男と背の高い細身の男が(かじか)んでまともに動かす事が難しい手足を動かして、満身創痍の様な雰囲気を醸しながらユーリ達の方へと近付いていく。


 もう少しで暖かい所へ行けると思っていた恰幅の良い貴族男性と背の高い細身の貴族男性は、


―――ガツン


 見えない壁に阻まれ、それ以上進む事が出来なくなってしまった。後、もう少し、ほんのちょっと先には凍える事のない場所がある。その場所は目で見える位置にあるのに手が届かない。


「くそぉぉぉぉぉぉ、入れろうぉぉぉぉぉ」


「私だけでも!!」


 目で見てない壁を叩くがびくともしない。どうしてもその場所に行きたい貴族の男性二人は暖かな空気に接する事が出来るのでは無いかと思ったのか見えない壁にへばりついたが、無駄だった。全く暖かくないはないし、むしろ冷たい。


 必死な形相の貴族の男を見てしまったユーリ達一同はドン引きしていた。醜い言動はとても貴族としての体面を保てるものではなかった。


 そんな中、ユーリは他の貴族達が凍傷にならないかと冷や冷やしていた。時折、ティアンとグラナトに視線をチラチラ向けている姿にアンリは嘆息した。


「もう、やめて上げなさい」


 アンリのたった一言でティアンとグラナトの怒気は霧散し、またブリザードも止んだ。


「なかなかな見所があるではないか。精霊の怒りを納めるなど」


 未だに歯をガチガチ言わせている恰幅の良い貴族の男性がアンリを見下ろしながら宣う。


「うむ。お前ほどの美貌ならば、貴族の娘達が放っておくまい。どうだ?私の娘は?」


 チョビ髭の貴族男性がそう言うと後から後から我も我もと名乗りを上げる。その誰もが目が虚ろな目をしている。


「ふむ。以前話の出ていたクリスティーナ嬢はどうだ?」


 ここに来てまたその名前が出るのかとアンリは嘆息した。


「いい加減お黙り」


 先程よりも鋭い怒気を孕むティアンの空気に軽口を叩いていた貴族達が押し黙る。


「言うに事欠いて…またその話を蒸し返すのかしら」


「我々貴族は優秀な精霊魔法を使う術師の血を取り込みたいのだ。その何がいけないのだ」


「ティアンから、この方にも手を出すなと言ってあったようだが?」


 ティアンと貴族男性の話に割って入るグラナト。


「そもそも何故、クリスティーナとかいうのとこの方との婚約に拘る」


 腕を組んだ状態で首を捻るグラナトと未だに怒りが収まらないティアン。ほぼユーリとナンシーとガンツとアーサーとフィーが蚊帳の外になってきているが、その事に対して誰も何も言及しない。


「そのクリスティーナとかいうのとこの不快な魔力に関係があるのか?」


 独りごちる様にボソッとグラナトな溢した言葉に反応があった。目の前にいる恰幅の良い貴族男性もそうだが、その反応を示したのがそのどれもが虚ろで眠そうだと思っていた者達だ。


「成る程ね。だからこの方に異常に執着するわけですのね」


 薄ら笑いを浮かべるティアンは手に持っていた扇で口許を隠す。そんな表情もとても美しく貴族男性達がうっとりと頬を染め、恋する瞳でティアンに見入る。


「致し方無い。不快だが排除しよう」


 本気で嫌そうに嘆息するグラナトの容貌もまた美しく、疲れたようなその表情にえもいわれぬ色気を振り撒き、何人かの貴族男性が頬を染める。


 組んでいた腕を解くと虚空に向かって腕を伸ばし、何かを掴む動作をする。


 その意味が分からない人々は固唾を飲んでこの後の展開を見守る。すると虚ろな瞳の貴族達が少し顔を(しか)め出した。


 グラナトは無遠慮にぐっと腕を引き下ろすと顔を顰めていた貴族男性達が一瞬にして白眼を剥くと意識を失い、その場に倒れた。驚いたのは周りの貴族達で倒れたのを抱き起こしたり、途中で受け止めたりと行動を起こしている。


「さて…」


 引っ張るような動きをすると何処からか水色の髪を振り乱した少女が空中に投げ出され、そのまま床へと叩き付けられた。


「あぅ!!」


 痛みにその場で体を丸める少女は、クリスティーナだった。


「私にこんな事してただで済むと思わない事ねなの!!」


 痛みに耐え、涙ぐんだクリスティーナがその緑の瞳を怒りでギラつかせ、グラナトを()めつける。怪しく光る瞳に更に不快そうにするグラナトの眉間に皺が寄る。その表情にまた貴族男性が熱い吐息を漏らす。


「その眼か」


「いっつ!」


 倒れるクリスティーナの振り乱されてボサボサになった水色の髪を乱暴に掴み、持ち上げる。


「グラナト!相手は女の子なんだよ!!乱暴は駄目だよ!!」


 宙を舞うクリスティーナに呆然と見詰め、成り行きについていけなかったユーリだったが、少女の髪を乱暴に掴んだグラナトを見て、これには堪らず、ユーリがクリスティーナを心配そうに気遣う。


「そんな気遣いしなくて良いだろう。こいつは“魅了の眼”を持っている。これまでの騒ぎはこいつが起こした事だ」


「魅了の眼ね。そんなものあったのね。異常な執着の成せる業かしら?」


 クリスティーナの傍へと遣って来たティアンが酷薄に笑い、冷徹な瞳で見下ろす。


「この瞳で男どもを操っていたんだろう。あそこで寝ている王もな」


 グラナトのその言葉に玉座を見遣ると意識を失った王が瞳を閉じて(くずお)れている。その顔は真っ青で掌からは未だに出血している。その姿を見たアーサーも真っ青な顔をして慌てて駆けて行った。










読んでいただきありがとうございます。

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