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24時間スーパーですが。  作者: 猫又


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6品目

 翌日、広永に言われた時間に吉田はスーパーを訪れた。

 店内に入っていくと野菜を並べたり、魚のパックを並べたりと従業員は忙しそうで活気があった。案内の女性従業員の後についてバックヤードに入った瞬間、前を歩いていた従業員が消えた。

「え!」

 消えたというよりは頭の上から黒い粒になり、彼女の身体はばらばらと崩れて消えてしまったように見えた。

 吉田は慌てて辺りを見渡した。

 所狭しと商品の在庫の段ボールが積みあげられているが人の姿は見られなかった。

「あ、あのー」

 と声をかけると、ぶおおおおというような低い声がかすかに聞こえた。

「え、なんだ?」

 そして吉田はぶるっと身震いをした。

 バックヤードへ入った瞬間、ぐっと気温が下がり背筋が寒くなった。


「どうも、店長の橘です」

 と作業服を着た男が声をかけてきた。

 背が高くほっそりとして、肌が白く、綺麗な顔の男だった。

 作業服よりも和服が似合うようなイメージがある。

 吉田はぺこりと頭を下げて、「吉田です。広永君に紹介されました」と言った。

「ああ、聞いてるよ。あ、ちょっと避けたげて、沢さんが通るから」

「え、はい」

 と通行の邪魔にならないように、吉田は壁の方へ寄った。

 カタカタカタキーキーと音がして、台車だけが動いている。

 コンテナに積まれたトウモロコシの山が台車に乗って、吉田の前を通った。

 吉田は目を見開いてその台車を見た。誰も押していない台車だけが通って行く。

 台車は店内へ続くドアに当たり、そのままの勢いでドアを押し開けた。

「そんな、馬鹿な……」

 台車がキーキーと音を立てて店内で出た。その台車の全てが店内へ入ってしまうと、最後に台車の持ち手の部分に手が現れた。二つの手が持ち手の部分を握っている。そして店内に入るに従い、二本の腕が現れた。そして制服を着てエプロンをした女性の顔、胴体、つま先が現れ、台車が進むにつれて完全な人型になった。

 女性従業員はそのまま野菜コーナーへ進んで行った。

「え!」

 吉田は隣に立っている橘を見た。

「あ、あの……」

「えーっと吉田君だっけね。バイトでスーパーとかコンビニとか経験はある?」

 その時、吉田の横をまた黒いもやのようなものが通って行った。

 薄暗いバックヤードに目が慣れてくるうちに、その黒いもやが人間のような形に見えてくるようになった。そしてそれはバックヤード内に何人もいた。

 また店内へのドアが開いた。押されたドアの扉には手の先が見え、ドアが開いていく度に腕、肩、胴体、頭、足先、店内の明るい照明の下でそれは男性従業員の姿になった。

 エプロンをした男性従業員は何食わぬ顔で店内へ入って行った。

「な、なんですか……あれ」

 と吉田は呟いて、橘を見た。

「え?」

「あれですよ! 黒いもやが人間に!」

「は?」

 橘は周囲を見渡してから首をかしげて吉田を見た。

「バックヤードは店内に比べて暗いからね。段ボールとかもたくさん積んでるし、人影と間違う事もあるけど、まあ、すぐ慣れるよ。そんなことより、コンビニとかスーパーとかでバイト経験、あるの?」

 と橘が言った。

「え、あ、はい、学生時代にコンビニで、でもスーパーではバイト経験はないです」

「そう、ま、いろいろ違うけど、慣れれば大丈夫だよ。力もいる仕事だから頑張って。で、いつから来られる? 希望の時間隊は?」

 橘は吉田の履歴書をペラペラめくりながら言った。

「うちは24時間だから、夜に人手が欲しいんだよね。昼間のパートさんは結構いるし」

「は、はい、じ、自分も昼は就活してるんで、夜を希望します」

「あ、そう。じゃ、明日から来られる?」

「は、はい……」


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