表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
35/53

その10-3 ふんわり桃色ディフェンサー

 フルクスは、スノーフィの能力を深くまで知らない。

 しかしそれは当たり前。

 基本的に『魔法道具』の性能は隠蔽するものだからだ。

 それでも『魔法道具』を使っていれば、自然とその能力が何なのかは想像されてしまう。

 だから、ある程度までは割り切っている。

 それに、多少能力の正体がバレたところで困る人物は『政府』には居ない。

 能力の正体が割れてしまったのなら、それを逆手に取って新たな『魔法道具』に切り替えるなり、現在の『魔法道具』を改造してしまえば良いし、単純に弱点を克服してやれば良い。

 破られたのなら、もっと強固なものを作れば良いだけだ。

 強固なものを作られたのなら、それを破る方法を考える。

 能力とはそうやって高めるものだ。

 高め合うものだ。

 だが当然、他人の能力を見破るのは容易くない。

 フルクスは、スノーフィが使う能力の全貌を知らない。

 それでも、彼女の能力は何度か目にしているので、ある程度は分かっている。

 スノーフィ。

凍った炎(トーチカ)』の名を持つ彼女。

 手に持った燭台は、当然のことながら『魔法道具』だ。

 絶対に揺らがない三つの炎を灯す燭台、『不完全燃焼之蝋燭台(カーネルパニック)』。

 その火が灯されている限り、彼女への攻撃は通らない。

 見えない壁。

 ほぼ不意打ちの攻撃ですら完璧に弾かれるその能力。

 魔法が発動した様子を見受けられないことから、それは自動で発動する能力……もしくは、常に発動している能力なのだろうと推測できる。

 防御特化。

 確かにそれは強力な能力だ。

 驚異的な、『魔法道具』だ。

 ならば。

「……ふむ」

 と、フルクスは瞳を細め、鎌を引いて下がる。

 スノーフィと距離を置く。

「……あら……どうしたの……? ……私をボコボコにするんじゃなかったのかしら……?」

「あー、あー、あー? 確かにそれはやってやりたいが……しかし、ワシの目的は、お前の足止めにある」

 つまり、相手が防御特化でしかないのなら、こちらから攻撃を仕掛ける必要がない。

 打ち倒す必要がないのだ。

 ボコボコにする必要があるのは――むしろ、スノーフィの方。

「お前こそ、ワシを潰すんじゃなかったのか? メリーゼを引き渡して欲しいのなら、ワシを潰さんとイカンぞ?」

 フルクスは舌を出して中指を立てる。

 防御に特化した能力なら、攻めるのは得意ではないはず。

 ならば、そこが弱点になり得る。

 攻撃してきたときに、なにか隙が出来るかもしれない。

 ほころびが見えるかもしれない。

「……ンフフ……」

 挑発するフルクスに対し、スノーフィはそんな風に口を歪めた。

 フルクスが浮かべる邪悪な笑みとはまた違う、暗黒に満ちた不気味な笑顔。

 長く伸びた桃色の前髪から覗く、薄っすらとしたジト目。

「……ねぇ……フルクス………貴方が使う『魔法道具』は……どちらかと言えば攻撃タイプよね……」

「あぁ? そうかもしれんな」

 唐突に何を言い出すのだろう、とフルクスは訝しげにそう答える。

 フルクスの血液操作は、攻撃に特化したものでもないが、それでもそのほとんどは戦闘にリソースを割いている。

 そしてそれは、スノーフィも分かっているのだろう。

「……だから……防御にはあまり……自信が無いんじゃないかしら……?」

「…………」

 何が言いたいのだろうか。

 フルクスは少しだけ警戒度を上げる。

「……それでも……攻撃は最大の防御とか……言うわよね……。……攻める側は守る側よりも有利……とか……そういうことなのだけれど……」

 ゆらり、とスノーフィは顔を傾ける。

 ふわりとした桃色の髪が揺れる。

「……でもそれって……私に言わせれば……逆もあると思うのよね……。……つまり……」

 不敵に唇をつり上げ、スノーフィは両手で持った燭台を、ゆっくりと左方向に振る。

「……防御は最大の攻撃ってこと……!」

 フルクスの小さな身体が吹き飛んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ