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猫洞通りはマンションがずらりと道沿いに並んでいる。それもレンガ風のタイルが貼ってあったり、逆にコンクリートの打ちっぱなしだったりして、なかなかおしゃれな印象の――あるいは家賃が高そうなマンションばかり。
ゆるやかに続く坂道をのんびりと歩きながら、ボクは適当な場所を探していた。最初はマンションの正面から入って、裏口から抜け出したらどうだろうと考えた。しかし、高級なマンションばかりで、同時にセキュリティーも高いから建物の内部に入るだけでも面倒だ。
例え進入できたとしても、こっちの都合にぴったり合う裏口があるのかもわからないし。
「どうしょうか?」
「とりあえず、ちゅー」
「意味わかんないし」
「後ろのヤツが記念写真を撮ってくれるから」
「新聞のネタにされるし、イヤだよ」
「日本中にオレたちが仲いいと宣伝できるじゃないか」
「日本中の人が読むような有名な新聞じゃないよ、それより考えてよ」
「森を走ったほうが早いんじゃないか?」
しばらく考えてから、隣でオトが言った。
ボクが出かけようとしたら、当然のようについてきたのだ。今日もフリルがいっぱいついたスカートをはいているけど、そういえば外出用の服はみんな派手なものばかりだ。いまのところ茶店の経営はほどほどにうまくいっているから、動きやすい服を買ってあげようかな?
着せ替え人形が勝手なことをして、と姉ちゃんが怒るかもしれない。でも、ボクも最近ちょっとオトのものをなにか買ってあげたくなる気持ちになることがある。色がわからないボクが服を見立てるのは無理があるかも。どっちにしろ今日のところはしかたないし、オトの能力ならドレスを着ていても問題なく尾行者を振り切れるだろう。
今日も五軒家さんがカメラを首からぶら下げて、二人の二十メートルほど後ろからついてくる。あれでこっそり尾行しているつもりなのかな? がんばるよね。
通りから奥の住宅街に入ってみた。細い路地を進むと敷地をゆったりとった一軒家ばかりになる。いまどきの建売住宅みたいな家はあまりなくて、キャッチボールくらいならできそうな庭や、二台は大型車が止められそうなガレージがめずらしくない。
このあたりは古くからの高級住宅地だ。
さらに進むと風致地区と呼ばれる、自然を残した広い土地があった。木を伐採することさえ市長の許可が必要な都市計画法の指定地域で、ちょっとした森のようになっている。
オトが言う、森を走れば早いというのは、ここのことだ。
その森の中にぶらぶらと歩いていき、草むらで五軒家さんの視線が遮られた瞬間、ボクたちは走った。学校の体育の授業や運動会であやしまれないようにするための表向きの走りかたではなく、本気の全力疾走だ。一瞬で五軒家さんを振り切る。
数分後、ずっと離れた場所で森から出ると、戸波さんの家に向かった。
敷地は三百坪くらいある。高い塀に囲まれて、防犯カメラや警備会社のステッカーがあちらこちらに見えた。
その塀に沿ってぶらぶらと歩く。
「強行突破して住人を皆殺しにするなら簡単だと思うけど、こっそり忍び込むのは難しいぞ。キヨ姉を呼ぶか?」
ここにくるまでに誘拐事件のことを説明したつもりなんだけど、どうもオトはまったくわかってないらしい。いつものことだけどね。それに姉ちゃんの手を借りるのがイヤということはないけど、それは最後の手段にしておきたい。あの人は切り札であり、奥の手なんだから、むやみに使ってはいけないのだ。
「ここの家の人を助けようと思ってるから、皆殺しにしてはダメ。忍び込む必要もない。したがって姉ちゃんも呼ばない」
「つまり……ハヤはなにがしたいんだ?」
そうだなぁ、とボクは考え込む。オトに理解させるにはどうしたらいいんだろう? 暗殺にも大量破壊兵器にもなる、世界でもっともすぐれた戦闘マシンなんだけども、あいにく誘導装置のついてない核ミサイルみたいなもので、どこに飛んでいくかコントロールがまるできかないのが大きな難点。
「この家の子供を誘拐したヤツが敵。そいつをやっつける」
「おお! で、そいつはどこにいる?」
「それがわからないんだ。誘拐だから身代金を要求してくるんじゃないかな、たぶん。受け取りにきたところを――」
「オレがなぶり殺しにする!」
「しない、しない。なぶり殺しにはしない。人質を隠した場所がわからなくなったら困るでしょ」
「そうか。わかった、拷問だ。お願いしますからしゃべらせてくださいって土下座させればいいんだな。やっぱりキヨ姉を呼ぼう」
「あの人は呼ばないの」
「キヨ姉なら一瞬でいっそ殺してくださいと土下座させることもできるのに……あっ! わかった、ハヤはなるべく長く拷問して楽しみたいんだな。それなら人差し指を切り落とすのはハヤに譲ってやる。で、オレは中指を落とす。ハヤが薬指で、オレが小指。順番に指を一本ずつ切り落としていくとして何本まで耐えるかな?」
すごいうれしそうな笑顔で、なんとも不気味なルールを提案してくる。しかも冗談ではないところが、いっそうイヤだ。
「あとをつければ隠れ家がわかるんだから、むやみに拷問しない」
「面倒くさいな……」
オトはため息をついた。
ボクとしては尾行のほうがずっと簡単だと思うんだけどね。臭跡や足音だけで、尾行対象者の姿が見えなくても追えるのだから乱暴なことをする必要はない。
しかし、なにをやるにしても相手がいなければはじまらないのだ。次の角を曲がると、家を一周したことになる。誘拐事件が発生中のときに、被害者宅周辺を何周も意味なく歩いたり、近くで張り込みをしていたら絶対にあやしまれそうだ。警察もそうだし、犯人だって見張っているかもしれない。
大神としての仕事は失敗できないし、人質に少しでも危険が及ぶような行動は絶対に避けるべきだ。
それに五軒家さんも追いつくだろう。姿を見失ったとしても、ボクたちが戸波さんの誘拐事件にかかわるつもりなのはわかっているだろうし、それなら自宅を訪ねると推測するのに頭脳はいらない。聖泉スポーツ編集長は脊髄反射でここを目指す。
しかたなく、オトを連れて戸波さんの家から離れる。近くに姿を隠してこっそり見張る場所を探さなければならない。例えばビルの屋上から見下ろすことができれば、少し離れていても問題はないだろう。
だが、ちょうどいい建物はなかなかなかった。住宅街だからマンションはいっぱいあるが、どこもオートロックになっていたり管理人が常駐していたり、こっそり屋上にいき長時間の張り込みをするには不向きだ。
「やっぱり世の中、自分の都合のいいようにはできてないよね。でも、これ以上遠いと、いくら屋上からでも見えないだろうし……」
「ハヤ。なんかおかしくないか?」
「……包囲されてる?」
前に三人。後ろにも人の気配。やっぱり複数。足音からすると二人か。張り込み場所を探すことに気をとられて、まったく無警戒だった。
ボクたちの会話が聞こえたかのように、男たちは姿を現し、包囲網を縮める。
すでにオトの戦闘モードにスイッチが切り替わっていた。
だが、ボクにはにおいで相手がわかった。
同時に、気勢をそぐようなのんびりした声がする。
「ひさしぶりだな」
ボクたちの前をふさいだ三人のうち、中央にいた五十過ぎの男性が両手をあげた。見たところは前髪がかなり薄くなり、腹のまわりの贅肉がたっぷりした冴えないオッサンだが、妙に目に力がある。
「こんにちは、下庫理警視」
ボクは挨拶した。もともと康三さんに紹介された人だけど愛知県警の刑事。所轄署じゃなくて県警本部の捜査一課の管理官という、わりと偉い人らしい。ついでにいうと大神の関係者でもある。
当然のことだが大神一族の全員が同族婚をするわけではない。下庫理警視も何代か前に大神の血筋が含まれているということだろう。ただし、普通の人間との間に生まれた子供は能力がまったくないか、あってもかなり低い。
ただし、ごくまれに圧倒的で天才的な能力を持つ子供が生まれることもあるそうだが、ボクは会ったことがない。能力と引きかえなのか、極端に寿命が短く、三十歳を超える年齢まで生きることはないようなので、この世の中に知らないことはない祖父ですら、いままで一人しか見たことがないそうだ。
この下庫理警視がそんな例外に含まれることはないのは、たるんだ肉体からして明らかだ。害はないが益もない男というのが康三さんの評価だが、ほどほどに仲良くしておいたほうがいいと微妙なことも言っていた。
そして、実際に付き合ってみると本当に微妙な人だった。
「ちょっと話をしよう」
下庫理警視が軽く右手を上げると、ボクたちを包囲していた刑事が消えた。かわりに黒いクラウンがやってくる。乗っていたのはやっぱり刑事のようだが、車を止めると鍵を下庫理警視に渡して仕事に戻っていく。
「乗れよ」
さっさと運転席に座り、エンジンをかけた。
ボクたちが後部座席に座ると、すぐに車を出した。
「どうやら戸波朱里が誘拐されたことを知っているようだな。誘拐直後に一一〇通報があったが、現在は警察の介入を拒否してる」
「介入を拒否?」
「警察に知らせると人質の命はないぞというのは誘拐犯の常套句だが、高針聖夜という同じ学校の生徒が誘拐された一件がどうにもマズイ。なにしろ人質は助けられない、犯人を逮捕するどころか容疑者すら浮かんでない、死体も発見できてない、ないないづくしの最悪の事態だ」
あの殺害現場は犯人のデモンストレーションで、最初から連続誘拐を計画していたのだろうか? わざわざ殺人を宣伝するかのように、凶器や被害者の所持品を残してあった。それでいて死体は川に流したわけだが、おかげで何日もテレビや新聞の報道は続いた。
いまで朝昼晩と欠かさすニュースは続いている。
当然、戸波朱里さんの両親も繰り返し事件が報道されたせいで強い印象を受けたはずだ。そこに自分の娘が誘拐されてとあっては、犯人の言いなりになってしまうのもしかたない。
「戸波朱里という娘のことは知っているか? 同じ学校みたいだが」
「学年が違うので、まったく知らないです。名前すら聞いたことがなかった」
「使えないヤツだな。ちゃんと生徒については把握しておけ。こっちは派手に聞き込みするわけにはいかないから、あまり情報が入らないのに」
「少しは入ってるんでしょう?」
「遊び好きだったらしい。あまりタチのよくない連中ともつるんでいたみたいだから、そっちの線は有望だ。ろくでもないチンピラと知り合って金銭目的でさらわれた可能性は高いだろう。しかし、私のような世代からすると、聖泉学園といえば一般庶民が近づくことすら恐れ多い金持ちのお嬢さまばかりの学校だったのに、クラブで踊り狂ったり、ホストと遊んでみたり。高校生がホストクラブ……それも聖泉学園の生徒……」
「もしかしたら青春時代に聖泉学園の生徒と甘酸っぱい思い出でも?」
「くだらないことを想像するな」
「えっ、もう遅いですよ。想像してしまいました。ニキビいっぱいの警視が聖泉学園の女子生徒をストーカーしてるところとか」
「するな」
「盗んだブルマのにおいをかいでる警視とか」
「想像するな、と言っている」
声が低くなった。怒っているみたいだけど、怖くないし。なにがあっても下庫理警視は手を出すようなことはしない。ボクを殴るのは簡単だけど、そんなことをしたら怒り狂ったオトと戦うことになる。
それは五連発のリボルバーに四発も弾を込めたロシアンルーレットをやるより危険なことだ。だって、二割は生き残れるのと、百パーセント死ぬのでは、ねぇ。しかも、怒り狂ったオトが一瞬で殺してしまうわけがない。じわじわと、ゆっくり時間をかけて、それこと南米の麻薬組織の処刑より酷く殺すだろう。
「しかし、警察の介入を拒否というと脅迫電話の逆探知とか、録音もできないですよね? そもそも脅迫電話がかかってきたことすらわからない」
「わからないことはないが、完全にわかるわけでもない、ということだ」
「なんですか、それ?」
あー……と下庫理警視は言いよどみ、わざとらしく咳払い。
「ラジオを聴いていたら偶然なにかの電波をキャッチすることもある。たまたま偶然だぞ、偶然そんな電波をラジオが勝手に拾って聞きたくもないのに聞こえてしまう、そんなことが絶対にないとはいえない」
「その素敵ラジオはどこの電気屋さんで売ってるんですか? あっ、この車にも変なラジオがついてますね。ディーラーのオプションでつけてもらえるんですか?」
「コードレスフォンには注意すべきだな。しかし、すべての会話が聞けるわけではない。携帯電話はデジタルだから裁判所から正式な許可をもらって電話会社で聞くしかないし、室内での会話を盗聴するのも無理だ」
「誘拐事件でもっとも犯人に近づける瞬間は、なんといっても身代金の受け渡しじゃないですか」
「いまのところ、いつどこでおこなわれるかわからん。それから身代金の受け渡しに使われる鞄に発信機を仕掛けることも、紙幣の番号を控えたり、特殊なインクで印をつけることもできない」
「それで張り込みを?」
「近所に空き家があって、そこを借りている。さすがに部外者をその家にあげるわけにはいかないが、なにか動きがあったらすぐに知らせる」
「だから、戸波さんの家には近づくな、と?」
「そういう意味ではない。協力を頼んでいるのだ。私は高卒で交番勤務からはじめて、いまは警視だ。わかるか? ノンキャリアの警察官としては最高レベルの出世だぞ。これは私の頭脳が優れているというだけでなく、いままで数多くの手柄を立ててきたからだ」
いつもの下庫理警視の自慢話がはじまった。
大神が事件を解決したとする。しかし、正体をあかすわけにはいかないから、それは表には出せない。かわりに下庫理警視が解決したことにする――これがノンキャリアなのに警視まで出世した秘密だった!
……微妙だよね、いろいろ。
警察に限らず、役所で出世してくれれば大神一族のほうでも利用価値も高くなるわけだから、そういう意味では出世してもらいたい。
それに一族が助け合うのは当然だ。
しかし、お互いに利用しあうのはいいとしても、相手のほうが利益が大きいような気がするんだよね。かといって、秤の目盛りをいじることもできないし、関係を切ってしまうとお互いに不利益ばかり。
「おまえたちは引っ越してきて半年以上たつのに、つまらない空巣や車上荒らしを何人か捕まえただけじゃないか。ちゃんと誘拐犯を捕まえて、私に手柄を立てさせろ。いいな? 康三も以前は熱心だったが、最近はラーメン屋の主人になりきってしまった。ちっとも大神としての役割を果たしてないじゃないか。あいつも昔は当番衆として派手に名を売った男なのに……」
「えっ、康三さんは当番衆だったことがあるんですか?」
「知らなかったのか? 学生時代にアルバイトとして結構やってたぞ。あの流行らない神社の神職になってからも続けてたみたいだ。まあ、あんな氏子もろくにいない神社ではアルバイトでもしないと食べていけないだろうが」
「それでラーメン屋をはじめてからは当番衆の仕事はやらなくなった?」
「あんな脂まみれのラーメンを作って小銭をちまちま稼いでいるより、大神に逆らったバカを相手に天罰をくだしてまわっているほうが儲かるだろうに、なにを考えてるんだか」
チッと下庫理警視は舌打ちする。
たぶん、いろいろ考えてラーメンを作っているほうが罪がないと判断したのだと思いますが?
まあ、下庫理警視にはわからないだろうけど……。
しかし、康三さんが当番衆で処置のアルバイトをしていたとは知らなかった。じつは大神としての能力が低いから、あんな小さな神社をまかされ、それすらも維持できなくなって放り出してラーメン屋になったものとばかり思っていた。
だけど、あらためて考えてみると心当たりがまったくないわけでもない。神社の本殿は康三さんの趣味であるモデルガンのコレクションルームになっていて、本来ならご神体が置かれる場所に飾ってあるのは神様と呼ばれた職人がハンドメイドで真鍮を削り出して作ったルガーP〇八。さらに床をめくると鋼鉄製で火薬で弾が飛んでしまう、とてもモデルガンと呼べない秘密の地下コレクションがあって、こっちは旧日本軍の二型機関短銃が一番いい場所に飾られていた。
神社の本殿は警察といえども家宅捜索しにくい場所であるのは認めるけど、そんな違法なコレクションをして……と思っていたが、あれは純粋な趣味ではなくて当番衆の仕事で使っていたのかもしれない。
「そんなことよりも、だ! 愛知県警は犯罪の発生率が全国でも指折りに高いのに、検挙率は最低だ。日本一。ワーストワン。知ってるか?」
「愛知県警が日本で最低という話は、たぶん二十回くらい聞きました」
「忘れてないならいい。これからも、ちゃんと覚えておけ。検挙率の低さも窃盗や詐欺なら知ったことではない。だが、殺人誘拐強盗のような捜査一課の担当で下手は打てない。だから、康三にかわって新しく大神神社を受け持つことになったおまえたちはさっさと高針聖夜の死体を探し出し、生きたまま戸波朱里を救い出し、ついでに犯人も捕まえるんだ。そして、他の警察官を呼ぶ前に私を呼ぶ、いいな?」
「わかってますよ? いままでだってそうしてきたじゃないですか」
「だから、ドロボウなんかいらない。私は捜査一課の責任者だぞ。誘拐犯の身柄を確保して、私に引き渡すんだ」
そして、車を止めた。そこは矢田川の河川敷。つまり高針聖夜の殺害現場とみられている場所だった。
今日も制服警官が一人で警備していたが下庫理警視は財布を出して千円札を何枚か押しつけた。
「昼飯は食べたか? 三十分ほど現場を調べたいから、その間に食べてこい」
「ありがとうございます。それでは三十分で戻ります」
きっと思いやりのあるいい上司と感じたのだろう。でも、本当はボクたちに犯行現場を見せるため、邪魔だから追い払っただけ。
そして、警官の姿が完全に消えてから車を降り、ボクはやっとグランドシートをどかして、ちゃんと現場を見ることができた。
「現物は科捜研に運んでしまったが、凶器になったコンクリートブロックはこのへん。鞄はここだ」
下庫理警視はキャビネ版の写真を出した。その場所に置いていく。
「これだけ時間がたつと、証拠らしい証拠は残ってないですね。血のにおいと……わずかに香水かな? 本当に微量なんだけど……」
イブサン・ローランのベイビー・ドールみたいな甘い香りなんだけど、少し配合が違う気もする……難しいな。
他にもなにか残ってないか、あちこち嗅いでみたけど、あまりに時間がたちすぎている。しかも、警察が調べて、消防団がかきまわし、マスコミがうろつきまわった現場周辺には何百人分の体臭があちらこちらにある。これで追跡するのは不可能だ。昼食にいった警官が戻ってくる前に消えたほうがいいと思ったので、帰ると言った。
「そういえばひとつ訊き忘れていたが、どうやって戸波朱里のことを知った?」
「学校の友達の噂話ですよ」
「報道協定を結んでいるし、表には出てないはずなのだが……冬休みだから広がらないだろうが、あまり噂が大きくなるとまずいぞ」
どうやら噂をこれ以上広がらないようにするのもボクの仕事らしい。それなら警視の仕事はなんだろう? 今度ゆっくり訊いてみようかな。