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こうして長い一日は終わった……ということでいいよね?
名古屋に引っ越してきてから姉ちゃんと会うのは三回目。実家にいるときは忙しくても時間を作って月に一度は遊びにきてくれてたから、顔を合わす頻度が少なくなったが、姉ちゃんはいつものように変態の姉ちゃんだから今回もボクとオトに服をくれた。
「着せ替え人形にプレゼント」
着せ替え人形とか言われちゃったよ。自分でもそう思ってるんだけど、面と向かって言われるとね。
姉ちゃんはアルバイト代でボクやオトの服を買ってくる。ボクたちのためというより、自分のためだ。でも、オトのほうがボクよりほんの少しだけかわいいからフリルがいっぱいついた服はみんなそっちにいく。
なのに、今日はボクのほうの紙袋にコートとスカートが入っている。コートはともかく、スカートをもらったのははじめてだ。オトが普段着ているようなかわいいのではなく、シンプルでおとなしいデザインのものなんだけど。
そして、オトのほうにはスーツ。色はなんだろう? ボクの目には灰色に見えるから、黒でも白でもない。
間違いかと思ったけど、スカートは黒。ボクは黒しか着ない。それは姉ちゃんも知っていて、そこだけは守ってくれる。
「どうして?」
「あんたミスター聖泉になったんだって?」
まさか見え透いた嘘をつくわけにもいかないのでボクはうなずいた。ミスなら栄誉かもしれないけど、女子高でミスターはどうなんだろう?
制服が廃止された十年前の学園改革でも共学だけは強硬な反対にあって断念することとなった。どうしても越えられない一線というものはある。
だけど、ボクとしてはそのとき共学になっていればよかったと思う。聖泉学園の全生徒のためにも、そのほうがよかったはずだ。共学の学校で一番の美男美女を選出するほうが、お祭りとして絶対に楽しいよね。女子高でミスターを選出するのは、かなり無理があるし。
「わたしのかわいい着せ替え人形に女子高のくだらない称号がつくなんて許せないの」
いかにも姉ちゃんらしい。女の子には男装させ、男の子には女装させて喜ぶ、とんでもない変態のくせに、他人がそれをほめると気に入らない。独り占めとか、嫉妬とか、いろいろ難儀な感情を抱え込んでいる人なのだ。
「このままだと、次は音瀬にミスだとかプリンセスだとか、妙な冠をかぶせようとするバカが出てくるかもしれないし。いまでも変態なファンがいるみたいなのに、わたしの着せ替え人形を汚い手でさわろうなんて図々しい」
「それでオトにもスーツ?」
「音瀬は男の子にしておくにはかわいすぎると思って女物の服ばかり着せてきたけど、かわいい男の子のスーツ姿というのも悪くないんじゃない?」
オトはスーツを羽織って姉ちゃんに見せている。似合うと賞賛の言葉をもらうと、今度はボクのほうに顔を向けた。
「事件も終わったんだし、冬休みはもう少しだけ残ってる。正月が終わったらデートしようぜ。オレはこのスーツを着るから、ハヤはそのスカートをはけよ」
「似合うかな?」
ちょっと……いや……かなり不安。男子小学生よりスカートが似合わない女子高生ってどうよ?
「きっと、すごく似合うぜ」
オトがボクの膝に乗ってくる。頭をぐいぐいと胸のあたりに押しつけてきた。今日はいろいろ大変だったから、きっとベッドにもぐりこんでくるだろう。
ボクにとっても今日は疲れた一日だった。終わってみれば、ただ虚しいだけ。いったい今回の事件は誰が悪かったのだろうか?
なにひとつ不自由させなかった親か、なにもかも不満な少女なのか?
てのひらで躍らせるつもりの少女たちなのか、いつの間にか自分勝手に踊っていたチンピラなのか?
この世界のすべてを知っていると豪語している少女は本当になにかを知っていた。
もしかして全知全能でもないくせに、神を名乗る中途半端な存在がいけないのかも。
まあ、なんでもいいや。
明日から正月を迎える準備だ。大掃除して、買い物して。大晦日には甘酒の準備をして……それが終わったらデート。
これで最終回です。お読みいただきありがとうございました




