おまけのおまけ
~ と或る祝賀式典 ~
「久しぶり、リリィ、って・・もう男爵夫人、なのよね」
「今まで通りリリィと呼んで下さい、イサドラ様」
「この度はおめでとうございます」
「ありがとうございます、マリサ様」
「ラツェット家がただの伯爵位だったのがおかしかったのよ」
「『辺境伯』って、この国では千年も使われていなかった称号ですよね。最初に打診を頂いた時、義父も義祖父もポカンとしていたらしいです」
「ふふ、まさしくロッチの血筋っぽい反応ね。慌ただしくなるわよ、夫の実家が一気に陞爵、叙爵されるんだから」
「実感が湧きません」
「リリィらしい」
「ロッチ、おめでとう」
「わぉっ、ルカ!」
「ごめん、驚かせた?」
「うぅん、ちょっと気を抜いてただけ」
「表じゃ声掛けられないから」
「そか、ルカ忙しそうだったもんな、あっちこっちのテーブルから呼ばれっ放しで。大丈夫?」
「うん、要領よく休憩してる。各国間のネイティブ通訳出来る人材が少ないから、こういう時に役に立てなきゃ、また税金喰い部署とか言われちゃう」
「ラツェットのお祝いなのに、何で周辺諸国からこんなに集まるの?」
「それだけラツェットは周辺国から尊敬集めてたの」
「へえ」
「知らないのは本人たちだけだったようだね」
「ロッチが隣接領地貰って叙爵されるのも、僕は時間の問題だと思っていたよ」
「えっ、俺は晴天の霹靂だったよ。兄貴たちの騎士爵は分かるけど、何で俺が男爵?」
「『誰だあの何やらせても予想を越えて成果を上げる新米は!?』って、他部署では有名になってたよ。外遊事業でアーサー様にしごかれて相当スキルを積み上げたみたいだね」
「…………」
「知らぬは本人だけって、ラツェットの伝統なの?」
「そっか、でもよかった」
「うん、おめで……」
「ルカがいつも通りで」
「…………」
「いきなりラツェット男爵様とか呼ばれたら、身体中の血が足元に落っこちたと思う」
「……他の人のいる場所ではそう呼ぶよ……」
「ね、もう一回おめでとうって言って」
「はいはい、おめでとう、ロッチ」
「うん、ありがとう、ルカ、ありがとう」
「今回、嫡男以外の五兄弟に爵位を与えた訳で、それぞれに家名を考えておけと通達していたのですが」
「うむ」
「全員がラツェットという家名に執着とも言える誇りを持っておりまして」
「はあ、まぁ、あそこんちはそうだろうな……」
「各々ミドルネームを挟ませる事でおさめました」
「妥当だね」
「リリィんちの家名、二人で考えたの?」
「最初、だんなさまが、これでいいかなって聞いて来て」
「あら、ロッチが?」
「びっくりしたけど、口に出して並べてみたら、響きが可愛かったので、賛成しました」
「可愛いが基準とか、ふふ、さすがリリィね」
「でも確かに、素敵な響きだわ、『クナゥ・ラツェット』」
「リリシア・クナゥ・ラツェット夫人、これからも宜しくね」
「はいっ」
~了~
これにて、『きよらかな王子さま』番外編は全部終了、ひとまず完結!
ここまでお付き合い頂いて、まことにまことに、ありがとうございました。
別掲載の『きよらかでない公爵令嬢』(マリサ主人公、時系列は二章と三章の間、約五万文字)も、ちょこっと覗いて頂ければ幸いです。https://ncode.syosetu.com/n6689mr/




