少年と、異なる世界
召喚術1の授業から三日後、今度こそエンカの希望の異世術1を受けることになった。
「……わくわく……」
楽しみを口で表現している。そんな人は本当にいるのか?
しかし無口なエンカがそんなことを口ばしる辺り、よほど楽しみなのだろう。
対する四人は…?
「「「「………」」」」
やっぱりどんよりしている。
「……ねぇみんなは楽しみじゃないの……?」
「だって僕たち…」
「一年の時にひどい目にあったもの…」
「本心を言うと受けたくないんだよ!」
少し大声で言うテムダ。
「あら…わたくしの授業…受けたくないの…?」
「う…うぅわぁ!」
いつの間にか、テムダの背後には紫色のローブを着た、いかにもオカルト系の女性がいた。
「そんなこと言ってると…この辺の子供たちが…貴方を…呪っちゃうわよ…?」
「え…?先生、誰もいませんけど…」
「いるわよ…ほら…幽霊になった子供たちがぁ…!」
恐怖心を煽る口調でテムダを脅す異世術教師。
生徒を平然と脅す辺り、ミランダと似ているかもしれない。
「あら…わたくしとミランダは同級生で…一緒に学年を牛耳る存在でしたのよ…」
「先生…?また幽霊と?」
「いえ…星月にです…」
〔話しかけないでください…〕
「解説も…兼ねてたからいいでしょう…?」
「結局星月ってなんなの…?」
「さぁ…?」
「異世術は…この世界とは別の世界…俗に言う『あの世』の力を借りる魔術です…。死の世界とつながる訳ですから…術者に多大な危険が及ぶ事もよくある話です…」
そこからしばらく説明が続く。
「では前口上はこの辺にして…実技に入りましょう」
実技試験が始まる。幽霊を呼び出せれば合格。そうでなければ不合格だ。
「キャアッ!」
「うおわっ!」
呼び出しに失敗した二人の目の前に『不合格』という文字を持った幽霊が現れた。
教師の遊び心だろうが、意味なく怖いので笑えない。
「ダメ〜ッ」
サクヤも失敗する。
そしてアズラは…?
「うっ…」
「どうしたの!?」
カティが駆け寄る。
アズラの頭にノイズの入った声が聞こえる。
『コ…ス…貴……最…だ…。
……は……も…ダ…だ……め…ね……ラ…。』
「この…声は…?」
「アズラ!」
「!?あれ…僕は…?」
「ちょっとボーッとしてたのよ…。たまにいるわ…こうなる子…。一応…病院室に行ってらっしゃい…」
教師に言われ、教室を後にするアズラ。
「さっきの声は、一体…?」
そう、アズラは呟いた…。
異世術で妙な事が起こったアズラくん。
後に困るかもしれません。というより困らせます。