08.
背後から温かいものに抱きつかれ、うなじにキスを受ける。
「……どこから入った?」
「隣の部屋の窓が開いていましたよ」
「不用心だな」
「本当に。施錠の警備を怠った者には罰を与えねば」
「……お前だろう?」
「では陛下自ら罰を」
「……それが罰を受ける奴の顔か?」
フィオリアが体を捻って見上げたリードの顔は、フィオリアしか見たことがない優しく愛が溢れたものだ。
そっと彼の顔に手をやる。
「……仕事がある」
「新婚の夫を放っておくのか?」
フィオリアの手をリードの手が包み、その指一本ずつにキスをしている。
「不甲斐ない妻ですまない」
くすぐったくてフィオリアの口元に笑みが浮かぶ。
彼女が素直に謝った言葉に対し、リードは小さく笑いを返す。
「昼間は少し控えようか?」
「そうしてくれ」
「……明るい日のなかで啼く君の裸は」
リードの言葉が言い終わらぬ内に、フィオリアが両手で彼の口を塞ぐ。
「何を言い出すんだ!」
フィオリアの声は小さいが精一杯怒りを含んでいる。
勿論、彼女が恥ずかしいだけだろうと分かっているリードは変わらない。
フィオリアは手のひらをちろりと舐められ、慌てて背中に隠す。
「美しいのにと言いたかったんだが」
リードは口の端に舌先を残し、面白がっている表情をする。
そう言う自分とて、騎士として鍛え上げられた体は思わず頬擦りをしたくなる程均整がとれているし、この国では珍しい漆黒の髪から覗く紫の瞳は穏やかな夜を思わせ、いつまでも見つめていられる輝きを持っている。
吸い込まれるような瞳に映る先はいつも自分だけだ。
「仕方がない。仕事が落ち着くまで君を手伝うよ……俺がフィオの負担を減らしたいからな」
遠い昔によく見ていた兄のように笑い、フィオリアの額に口づける。
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また続きでお会いできますよう。




