カルトなオカルトのアラカルト話(13)
何やら後ろでパニクっているが、暴れていはない。月が間近に感じる程の高さだ。下手に口を開けて叫んだら後が怖いとわかっている。
ごみ捨て場は野っ原の北東にあるのだけど、少し無理があった。どんどん飛距離は落ちていく。誰かの牧場にズドンと着地。土煙が起こり、音がもの凄く響いた。寝ていた羊は驚いて起き上がり私たちを見ている。何も壊してないから問題ない。家主が来る前にまた跳ねる。
今度はちゃんと目的地まで飛べた。マユさんを下ろし、ライターを灯してゴミ漁り開始だ。といってもほぼ農家で閉じられた村である。何かと再利用するしかなく、幸いなことにゴミは少ない。前はざっと見渡しただけだった。今回はしっかり探す気なのですぐ見つかるはずだ。
「チビるかと思った……」
くそ真面目な顔で何を言う。彼の面倒は見ると言ったけど、そこまでする気はない。
絵面的に、筋肉ダルマが美少女の下の世話をするなんてダメだ。いっそのこと、しばらく女の姿をしようか。ダメだ、私は元が悪い。どの姿でも彼とは釣り合わない。どうも、この人といると自分の見目の悪さが嫌になる。
「何さその目。一滴もチビってないよ!?」
はいはい、適当に返事する。
「ぼくも光ちょーだい」
私だけ光源を持っていても探しづらい。ポケットを漁ると、お菓子のおまけである手のひらサイズのランプや犬笛がごちゃりと出てきた。お互い黙ってしまう。
「離れた時に何かあると困るので」
「わかった」
非効率的と思いながら、屈み込み2人つかず離れずの距離でタバコを探す。
私が吸うものは白い紙タバコである。ドゥルジやアシャのように凝ってオリジナルブレンドの刻み葉を巻いたり煙管に入れたりしていない。それと比べたら見つけやすい。
「だけどさ。こんな広くて暗い場所で見つけるの……あの鳥! ぼくが見たのだ!」
灯りを向けると、小さい灰色の小鳥が私のタバコを咥えてパタタタ忙しなく飛んでいた。
反射で地面に耳を当てる。2人、何かを探すような足音。マロウトやトクマルならありがたいが、あの小鳥がいるからヴィラン帝国の斥候だ。近くで夜営しているのか。音は聞こえないから、5里以内(約20km)はいないということだ。しかし、嘘か誠かあの軍は1日で40里以上(約160km)も移動が可能というので、気休めにもならない。
それにヴィラン軍がいるなら、確実に団長達は逃げている。帝国からは、私以外にも賞金首や尋ね人がいるからだ。
「急にどうしたの。土下座?」
「違います。ここ、あと少ししたら攻め込まれますね。多分虐殺コースでしょうから早く逃げないと」
「なんでそんなことわかるの……」
「あなたが大騒ぎすると困るから黙ってたんですが、ここは国から追われるレベルのカルトなんです」
マユさんは状況を整理したいのか、眉間にシワを寄せ額に手を当てている。待って、と手を出した。
「薄々ヤバそうとは思ってたけど、キングーさんは何したの?」
「政治家や貴族の子供を講演や合宿だとかで反強制的に引きずりこんでってやつですかね。洗脳して返すから周り巻き込んで戻ってくるし、要は巫女にお金を貢がせるためだけの宗教と新聞には載ってました。」
「幹部になったら楽な人生送れそう」
欲に素直な感想だ。
「で、この鳥、ヴィラン帝国が斥候に使う鳥なんです」
小鳥からタバコをもらって、火をつける。小鳥は一休みするためか、私のスカーフの中に潜り込んだ。
「中の薬草出すって」
「あれは出まかせです」
「はぁっ!?」
しまった。これは誤解を招く。
「私がタバコを吸うことで、病の広がりが収まるんです。よくなるかどうかは知りませんがね」
そういえば、自分が病の元凶と誰かに伝えるのは初めてだ。どんな反応をするだろう。怖がられたら嫌だな。
「サンさんが、ハニーの家族やガイドの妹ちゃんが倒れた病気の原因ってこと?」
「はい」
「うっかりタバコ吸ったことの言い訳じゃなく?」
まず信じていなかった。
ガキのときなんて、タバコを吸えばよいと知らなかったから勝手に発動して、言わずとも災厄の元凶として追っかけまわされたのに。
「えー……。いつからそんな体質なの?」
「体質ではなく、これは私にかけられた呪いです。世界を滅ぼすためだとかなんとか」
「そんな呪いあるの!?」




