第六話 第二護衛艦隊群
いくら、不定期連載とはいえ放置しすぎましたことをお詫びいたします。それでは最新話をお楽しみください。
平成29年11月5日
長崎県佐世保市
海上自衛隊佐世保基地
この国の西側に対する防衛の要として、整備されている。海上自衛隊佐世保基地。ここ近年の極東情勢に合わせ軍事的バランスを保つために強化されている。年間2隻の割合で就役していた。汎用護衛艦(DD)は倍の年間4隻と言う割合で一就役し。前政権では不要として予算が凍結されていた。海上自衛隊初の量産型のミサイル護衛艦(DDG)「たかお型ミサイル護衛艦」十八隻の計画が見直され十隻に縮小させた上で再び浮上させ今年度予算案で一隻当たり建造費一〇〇〇億円のミサイル護衛艦二隻の建造が国会で与党の賛成多数により承認された。また縮小された四隻分の計画は次世代型の打撃型護衛艦の開発費に充てられる予定だ。これら護衛艦の建造速度は自衛隊始まって以来であり、それだけ極東の平和国家「日本」の新たなる指導者が国家安全保障に対して危機感を持っていると言う事を如実に表している・・・
その佐世保基地には帝国海軍時代に建設された8つのドライドックが存在する。このドック群は米軍と民間会社である佐世保重工業:通称「SSK」の共同使用と言う事になっており。艦船の定期点検及び修理が行われる。特にここ近年は海上自衛隊の艦艇増強に合わせて7号ドックと8号ドックが増設され修繕整備体制はほぼ完璧と言える状況だ。
その8号ドックに尊征が副長を務める護衛艦「ひえい」が入渠した。本日より1か月の間定期修繕およびFCS-5Bのデータ改修工事が目的であった。
「尊征ちゃんは、どこに行くのかな」
「だから、ちゃん付けは止めてください。西野さん。家に帰るんです」
愛車のランクル200に荷物を積み運転席に乗りかけていた、尊征だが華佳に声をかけられ中途半端な姿勢で華佳と話していた。
「あれ、尊征は実家が横須賀じゃなかったか」
「借家ですよ、佐世保に配備されてから寝泊り用に借りているんです」
「準備がいいな、流石だ。よし行こうか」
「はい?」
尊征が人生最大級であろう間の抜けた返事をする。
「だから、行こうか。実はまだ寝床を確保してないんだよね」
ケタケタと笑いながら華佳は言うが、尊征の志向はしばらく停止していて再起動までしばらく時間が掛かりそうだ。
「冬華に泊めてもらおうと思ってたんだけどな、冬華が先に帰えちまって。どうしようかと思っていた所に、尊征ちゃんを見つけたわけよ」
「はぁ、それで私ですか。ビジネスホテルとかあるでしょう」
「尊征ちゃん佐世保をなめちゃいけねぇぜ、何にもないわけよここらいったい」
「そうなんですか、あったとおもいますけど」
「いやない!」
あります!実際に佐世保には宿泊施設がいくつかあります。誤解を生む可能性があるので訂正させていただきます。
「仮にホテルに泊まったとしよう。一ヶ月だぜ、私の安月給で持つわけがない!」
「いい給料もらっているはずですけどね」
「いいじゃないか、一日位とめてくれたって。この寒空の下私をほっておく気なのか、そこまでつめたいとは思わなかったぜ。明日の朝刊で海上自衛隊の隊員凍死とか書かれるんだろうな」
そんな物騒なことを言いながら華佳は、キャリーバックを引っ張りながら歩いていく。尊征は「はぁ~」と大きなため息をつき「一泊だけですよ」と折れた。
「マジでか、流石副長。心の広さは太平洋並みだな」
「例えが分かりにくいです。乗ってください」
「いやぁ、良い車だな。うんいい車だトヨタの・・・」
「ランドクルーザーです、トヨタの名車ですよ」
「流石無類の車好きだな」
「車好きというより、人が造り出したものが好きなんですよ」
尊征はそう答え。軽くアクセルを踏み駐車場から出る。基地の出入り口であるゲートの少し手前で歩哨の隊員に止められる。普段基地に入る時はとめられるが出る時に止められるのは異常だ。尊征は事情を聞くために、サイドウィンドウを開ける。
「どうしたんだ」
「一条二佐、実はこの先で団体さんが活動していまして」
歩哨の隊員は事情を説明する、聞くとこの先で自称平和団体がデモ行進をしていると言う。
「なるほどな、それで通れないのか。それにしても抗議理由はなんなんだ」
「ひえいの入港とその他いろいろかこつけてですね」
「ひえいか、迷惑な話だな。なんとかならないか」
華佳も身を運転席の方に乗り出して、歩哨に尋ねる。歩哨の隊員は「問題ありません」と言い待機所に待機していた隊員とゲートを警備していた政府が雇った民間警備会社と共にゲート周囲で活動している自称平和団体を排除する。
「凄いな、モーゼもびっくりな割け具合だぜ」
「確かにそうですけど、まぁいいです。出しますよ」
尊征は慎重にゲートを潜り抜ける、ゲートの両側には市民団体の幟が立ち上っている。さらに怒号が飛び交い今にも飛び出してきそうな勢いだ。
「家に帰るだけでも一苦労とは、まるで自衛官に人権がないような抗議だな」
「まったくです、ですが我々は日陰者がいいんですよ、それだけ日本が平和と言う事ですからね。平和でなければこんな講義なんてできませんよ」
ゲートを抜けSSKバイパスに出る。バイパスのところどころにも市民団体がいるが、むこうは尊征のランクルに気付かず抗議活動と称するデモ活動を行う。
「そういえば、どこに借りてるんだ」
「車を止めたいんで、一軒家を借りたんですよ」
「ほうそれはまた豪勢だな、高いだろ」
「うちの社宅ですよ、ちょっと遠いのが難点ですけど」
「あぁ、うらやましいぜ」
「特権ですよ・・・」
尊征の目が厳しくなる、ルームミラーにはゲートを抜けてから、つけてくる車両が映っていた。黒塗りのセダン。一見珍しくもないドイツ製のBMWだ。尊征は今までの経験から推測する(覆面パトはない、外車なんて使う警察は聞いたことがない…にしても下手な運転だ左通行に慣れてないのか…まさかな)ある結論が尊征の脳内に浮かぶ。ここ最近自衛官が事故に巻き込まれえることが多い、それもかなり不自然な数でだ。
「少し飲み物でも買いに行きます?」
「そうだな、ちょっと遠いんだろ」
「遠いです、車で30分強です、飛ばせばですけど」
「捕まるなよ」
「一応、無事故無違反です」
「見つかってないだけだろ」
「そうとも言えます、何か買ってきます。何がいいですか」
「私が買ってくるぜ、たまには奢らないとな」
「あぁ、有り難うございます」
「適当に買ってくるぜ」
コンビニの駐車場で二人はおり、尊征は軽く体を伸ばしながら。華佳を待つ。流石に制服姿であるため、かなり目立っているらしく。様々な目が向けられる。
「ん?あのBM」
尊征は少し離れたとこで停車しているさっきの黒塗のBMWに目を向ける。運転手は降りずにただ止まっているだけだ。ウィンドウにも濃いスモークがあり中の様子はわからない。
「買ってきたぜ、ホットでよかったな」
華佳は缶コーヒーを投げ渡す。尊征はなぜ投げると思いながらも難なくキャッチし銘柄を確認する。流石に付き合いが長いため華佳は尊征の好みをよく分かっていた。
「はい、行きますか乗ってください」
そそくさと、ランクルに乗り込み素早くコンビニの駐車場を出てバイパスに戻る。ドアミラーには例のBMWが映っていた。
「・・・つけられているな」
「気づいていましたか」
「下手な尾行だったからな流石に気付くぜ。最近どうもきな臭いらしくてな。上からも情報が回ってきていぜ。ホイ」
華佳はまるでガムでも渡すかのごとく軽いノリで、H&K HK45Tを手渡す。近年の海上自衛隊では9mm拳銃の更新型としてHK45Tが採用されていた。最新鋭艦ひえいの武器庫には幹部用等として数挺のHK45Tが収められていた。
ちなみに3年前の訓練内容の大幅な変更で陸海空問わず全自衛官は一人当たり年間1万発もの弾丸を射撃訓練にて消費することが義務付けられたのである。これはもちろん批判があったがこれまでの射撃訓練が少なすぎたのであり、ようやく自衛官はまともに銃火器を扱う訓練が出来るようになったのである。
尊征ら幹部大学校の卒業生は入学直後から銃火器の扱い充分教練を積んでいたため扱いには慣れている。
特に尊征は64式7.62mm狙撃銃での精密射撃を得意とし、官大の中でも成績は常に上位であった、また官大の学生と言う事もあり防衛省は尊征をロンドンオリンピックの男子50mライフル3姿勢の選手に推薦された。この防衛省の意図は初等部の学生数がなかなか伸びない官大をPRするため。初等部より訓練を受けてそれなりにビジュアルもよく若く活発的な尊征をダシにして官大の入学希望者増大を狙ったのである。その効果はあったようで翌年の初等部入学学生は微増している。
「艦長、また武器庫から勝手に持ってきたんですか」
「なんだよ、またって。今回はちゃんと許可を取っているぜ」
尊征は疑いのまなざしを華佳に向けながらもHK45Tを受け取りセンターコンソールに置くそれを見て華佳は「無造作だな」とつぶやくが尊征は「懐から出してきた人に言われたくはないです」と返す。そうこうしている間にランクルはバイパスを外れ脇道に入る。
「弾は何発ですか」
「10発だ、流石にこれ以上は許可が出なかった」
「まったく、何時からこの国は工作員がこう大胆に行動するようになったんですかね」
「戦後からだろ、今に始まった事じゃない」
「とにかく、人通りの少ない所へ向かいますよ、確り摑まってください」
尊征はシフトレバーをSポジションに入れ一気にアクセルを踏み込む4.6リッターV型8気筒DOHCエンジンが唸りを上げ3トンを超える車体は一気に法定速度を超えたのである。
「凄まじい加速だな」
「こいつは、まだましですよッ!追ってきましたね」
「尾行が下手なクセにしつこい奴らだな」
「長引くと、面倒です。発煙弾とかありませんか」
「それはないな、流石に」
「なんでハンドガンがあるのに、ないんですか!」
「あれだな、字が違うけどこれはどうだ!」
華佳は助手席の足元に潜り日本を走る車なら必ずある赤い筒を取り出す。そこにはこう書かれていた、発炎筒と………
「いやそれは………確かに音は同じですけど!」
「だろ、発炎筒だ」
「使いません、元に戻してください……あっ!」
「うん、ここじゃなかったか?ちゃんと戻したぞ」
「何も、公道で為を張らなくてもいいんですよね、林道に突っ込みますから!」
「なっぁ!ちょっ!」
「喋ると舌をかみますよ!」
脇道を走っていた。ランクルは舗装がされていない林道に突入する舗装路ではなくなったためランクルは激しく揺れる。
「SUVの真骨頂、見せてやりますよ!」
「十分見てる!いいかげんにッ!」
「それは奴らに言ってください!」
SUVであるランクルは悪路も難なく走破し、徐々に距離を広げ始めた。その時であった聞きなれたバァンッ!と言う音が反響した。尊征や華佳には聞きなれた音だったがその音は外では必ず聞きたくない音だった。
「おい、今の!」
「撃ってきましたね!そう簡単に当たる者ではありませんが」
「マジかぁ、やるしかないか」
華佳はセンターコンソールに無造作に置かれていた、HK45Tをとりため息をつきながらマガジンを装填しスライドを引いた。
バリンと後部の方から音が響く。リアウィンドウに銃弾が命中しリアウィンドウが砕けたのである。
「おっと、やられましたね」
「余裕だな」
「そう簡単に当たるモノではありません」
「よし!一寸待ってくれ」
華佳はシートベルトを外し、身を乗り出しHK45TをBMWに向ける。激しく揺れる車の中で華佳はいつも通りの信じられないほどの身体能力を発揮した。
「それだけ発砲してるんだ、正当防衛だぜ!」
華佳は躊躇なく二発発砲する、一発はボンネット、もう一発はフロントガラスである。フロントガラスに命中した銃弾はフロントガラスに蜘蛛の巣状の模様をつくった。それに驚いたのかハンドルを切り損ねたBMWは大木に激突し停止した。
「どうします?」
「助ける分けにもな、反撃されたら怖いしな」
「ですよね……ッ!!」
前方からワンボックスカー……ハイエースが近づいてくることに気付いた。尊征と華佳はとっさに身構える。挟み撃ちという最悪の事態が想定される。
「もう一戦か」
「多勢無勢でしょう、それにしては様子がおかしいですね」
ハイエースは道を開けるようにして停車したと思ったとたんドアが開き、中から全く統一性のない服装をした男女が四人降りてくる。
そのうち一人が無造作に近づいてくる、帽子を深くかぶり顔ははっきりわからないが、女性であることは確かだった。
女性は運転席のウィンドウをノックし、窓を開けるようにジェスチャーを尊征に向ける。尊征は警戒しながらもパワーウィンドウのスイッチを押した、華佳は警戒してるのかHK45Tの銃口を向けている。
「派手にやったみたいね、一条二佐」
「どこの所属か」
女性から殺意がないと感じとったのか、華佳はHK45Tを下ろす。尊征は自分の素性が分かってたことから相手の素性を確認しようとし、取り敢えず所属を聞く。
「警察庁と言えばわかるかしら」
「公安かご苦労なこった。もう少し早めに来てほしかったけどな。お蔭で発砲しちゃったじゃないか」
華佳は安全装置をかけマガジンを抜きながら、文句を言う。自衛官であっても公務員であることには変わらず、発砲の理由を書いて報告書を上に提出しなきゃいけないことを華佳は極度に嫌がっている様だ。
「こっちもどう、報告しようか迷っていた所よ。気づかれないように護衛していたのにいきなり速度を上げて、スピード違反に「うぐッ!」一時停止無視とか数えたらきりがないわね」
違反の一部が見られたことに尊征は衝撃を受ける。はたから見ても顔色が悪くなっていくのが分かり冷や汗も掻いている様だ。
そんな尊征の反応が面白かったのか、女性はクスッと笑った。
「後片付けはしておくわ、その代わり他言無用よ」
「了解した」
「よろしい、また会いましょう」
そう言って、女性は後方の応援に向かった。
「あいつ、またって言ったな」
「公安にはお世話になりたくありませんけどね」
「同感だ、どうするんだこれから」
「砕けたリアウィンドウを交換しに行きます、不審な目で見られますから」
「そうだな」
リアウィンドウが派手に割れたランクルは現場を離れ、舗装路へともどり何事も無かったかのように走り出す。
「なんだったんでしょうね」
「さぁな、だが…危なかったってことだけは分かるぜ」
「それは俺だって分かりますよ」
「………最近、海保が日本海で忙しいらしいな」
「なるほど、それが原因ですか」
海保が日本海で忙しい、この一言で尊征は瞬時に理解できた。半島・大陸の方がきな臭くなってきているということは水面下の話だが、内閣をはじめとした様々な機関が対応しているという。
「なるほど、それで公安ですか、おもろくなってきやがった」
「死にかけたのによく言うな」
「あからさまに狙われると、癪に障るんですよ」
「確かにな、そろそろ目ぇ覚ます時かもしれないな」
日本の国民の大半は平和主義者と言えば聞こえがいいが、実際は虚偽の安寧を疑いもなく甘受し平和ボケした国民が考えることを放棄した結果、一部の大きい声に従ってしまう大衆心理が蔓延し現在の形となった。
平和なことはもちろんいいが、平和ボケになり国民が盲目となると政治はおのずと悪くなるのである。
久々の小説投稿で自身がありませんが、いかがでしたでしょうか?
ご意見ご感想ご指摘お待ちしております。




