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異世界権利者の報酬

 それからの日々は忙しなく流れていった。

 壊れた場所の修繕や魔物の死骸撤去、亡くなった方の葬儀など魔物の傷跡は根強い。

 これ等をミッドとリーズが中心となり冒険者ギルド、教会、都市の人々はどれ一つ取っても大事な事なので一つ一つ繊細に片付けていった。

 最終的にブリストールが都市として機能を始めたのは結局一週間も経っての事だった。

 ちなみに一週間は現実世界とは違って火水風土空星の六日の事を指す。

 四属性と二属性からなる日計算だそうだ。

 尚、月は夜を指す言葉の一つで、陽が出ている時間を光、陽が沈んだ後の時間を闇と例える。

 月が出ていると月と例えるのは、この世界が多種族連なる世界だからだろう。

 闇夜を力にする者もいれば、月の光を力にする者もいる。

 俺もどちらかといえばその種族なので理解できる考え方だ。

 まあそういう訳で今日、冒険者ギルドが本格稼動すると聞いて俺は直に登録へ向かった。

 のだが。

「救世主様は冒険者に興味があるのですか?」

 冒険者ギルドの職員。

 避難所になっていた際、俺に食事を配ってくれたお姉さんが言った。


 種族/人間 性別/女 年齢/22

 出身/人間界 容姿/中の下 社会的地位/冒険者ギルド職員

 称号/インヴァメルスィールの大掃除 レベル/8

 取得能力/整理整頓、書類整理、掃除技能(超)、達筆、短剣技能、長距離徒歩法技術


 何を期待しているのか、凄いキランキランに輝いた瞳で見つめられた為、つい流れで審美眼が発動してしまった。

 なんというのか生活用能力が密集している。

 こういう能力だと仕事に困らなさそうだよな。

 だが、一つ突っ込みたい。

 何その称号。この子何をしてその称号手に入れたの? 気になるな……。

「はい、冒険者カードは持っていても損は無いと聞いたので」

「そうですね。各地に支部を持つので提携などもしておりますので」

 なんでも冒険者ギルドの誕生は今より千年前に遡る。

 今もそれ程変わらないが冒険者という夢追い人を支援しようとした冒険者ギルド創業者が考えた理念と経緯は多岐に渡る。

 例えば領土や橋の通行には多額な税金が徴収される。

 旅をするだけで金銭を毟り取られるのでは冒険者はやっていけない。

 そういう訳で冒険者ギルドは生まれた。

 だから冒険者カードを所持している冒険者は払う税金が少なくて済むという特典がある。

 他にも元々冒険者は未知の元素や素材、希少な道具を見つけ易い立場にいる為、千年という長い時を掛けてゆっくりと文明を発展させていった。

 今では魔物退治に始まり、治安維持協力など各国の騎士団などと提携しているんだとか。

 話では冒険者カードも文明の発展で生まれた産物で元々はかなり重い代物だったらしい。

 あれだ。なんとなく携帯電話の話に似ているよな。

 最初の携帯電話って無線みたいに大きかったし、その前はなんだっけポケベルだっけ。

 あんな感じだ。

「では、この書類にご記入をお願いします」

 良く考えれば会話が成立するから問題なかったが、もしかしたら文字は違うかも……。

 ……そう思ったのだが日本語だった。

 ひらがなにカタカナまであるぞ。

 ファンタジーな異世界で日本語の書類にちょっと違和感。

 ま、まあ解るのは良い事だよな、うん。

「えっと、名前が先なのか」

 ユタカ・ダイショウジっと。

 他細かい記入が続いて、その辺りを書いていると職員のお姉さんは何かの機材を持ってきた。

 占い屋なんかで展示されていそうな水晶球だ。

「これは?」

「これは魔力判定機です」

「魔力判定機、ですか?」

「はい。全ての生命は等しく魔力を持っています。その魔力が十年前、個々人で固有色素が全く違う事が判明しまして、冒険者ギルドでは身分証明に取り入れたんです。これによって冒険者カードは固有色素にしか反応しない唯一無二の道具になるので持ち主以外の方では使う事ができなくなりました。なので第三者に盗まれても不正に利用される心配はありません」

「なるほど、便利ですね」

「ですが冒険者カード自体に貴重な材質を使っているので発行の際には1ハルマ金貨をいただくので紛失には気を使ってもらう事になります」

 そこで筆を動かしていた手が止まる。

 1ハルマ金貨なんて持ってないぞ。

 というか1カルド銀貨しか持っていません。

「後、救世主様は未成年ですよね?」

「……はい」

 一瞬何のことか忘れかけていたが俺って設定では十歳なんだっけ。

 この世界の成人年齢は十三だ。

「未成年の方の登録は保護責任者の登録も必要になります」

「なるほど、となると登録は無理……かな」

「失礼ですが救世主様、ご両親は……」

「訳あっていないんです。だから、そうですね、三年後にまた登録しますね」

 まさか未成年は登録できない規定があったとは。

 出来ない物はしょうがない、諦めるとしよう。

「お待ちください救世主様」

「はい?」

 俺が踵を返して去ろうとすると職員のお姉さんが呼び止めた。

「救世主様はブリストールの大恩人です。なので上の者に相談してみます。今日明日という事は無理だと思いますが、私が必ず何とかしてみせます。ですから安心してください!」

「ありがとうございます。では、おねがいできますか?」

「私情以外にも、冒険者ギルドとしましても救世主様とはご懇意にしたいと思うはずですので大丈夫だと思います」

 なるほど。え~っとこれは期待していいのかな?

 まあそういう訳で冒険者カードの件については先送りとなった。

 さすが救世主効果、凄いね。

「って感じで後日になりそうだよ」

「そうなんですか、よかったですね」

 という話をその後やって来たフィスリムに話した。

 フィスリムとの関係は順調だ。

 特にソレっぽいイベントはあの日の一件以来まったく無いけどな。

 もちろん元々労働奴隷という事もあるが、種族や能力的にも優れるフィスリムともなると修繕の手伝いから何まで都市の為に尽くしているのでそんな暇無いとも言えるが。

 だが、フィスリムは時間が取れれば俺の所にやってきて一緒に行動している。

 俺自身はというと救世主様に汚れ仕事なんてさせられないだとか、救世主様はまだお若いんですから大人に任せるんだよ、とかそこだけ子供扱いされる。

 もっぱら最近では神体の如く道行く人の相談を受けたり、手を合わせられたりで、フィスリム達の手伝いをしたくても出来ない状況が続く始末。

 ちょっと窮屈だ。

「ユタカ様は冒険者になりたいんですか?」

「うん、その内ブリストールからも出て行こうと思っているよ」

「そうなんですか!?」

「え? 驚く事なの?」

 さすがにいつまでもこの街でのんびりとはしていられない。

 それに今回の件で痛く身に染みた。

 もっと強くならないといけない。

 今回は偶々、偶然、奇跡的に、本当に、予想外な幸運が続いてオークキングの様な強敵を倒す事が出来たが一歩間違っていたら誰かの命以前に自分の命すら危うかった。

 ブリストールはとても住み易い場所だけど、いつか旅立とうと考えている。

 後、俺自身が淫魔である事も理由として根強い。

 ブリストールの皆が俺を救世主様として慕うのは人間のユタカだ。

 サキュバスのユタカじゃない。

 さすがにいつまでも隠し通す事は不可能だろうし、ブリストールは宗教が盛んだ。

 教会の手がいつ俺を嗅ぎ分けてくるか解らない以上、留まり続けるのは危険だろう。

「だから、もしもフィスリムが良かったら一緒に行かない?」

「はい、喜んで! 絶対ぜ~ったいっ! ですからね」

「うん、絶対だ」

 そうフィスリムと約束する。

 そこで未だにフィスリムに自分が淫魔である事を話していない事が気に掛かった。

 仲良くなればなる程、言い辛くなる事というのはあるそうだが、まさにそれだ。

 不安で胸がモヤモヤするのだ。だけど、いつ言うかは決めている。

 もしも、フィスリムがサキュバスの俺を認めてくれるなら……。

「ユタカは冒険者になりたいのか?」

 場所が冒険者ギルドという事もあり、俺達に気が付いたミッドが割り込んできた。

 ちなみに教会ならリーズがやってくる、というのが最近のお決まりパターンだ。

 二人とも自分の仕事に負われているのか毎日忙しそうだ。

 なんせ俺はあの一件以来前記の通りほとんど何もしていない。

 なのでちょっと罪悪感を持っていたりする。

「ミッド、なんか久々だね」

「ははは、俺達はずっと街で色々やってたからな!」

「うっ……面倒を押し付けてごめん」

「いや~どちらかと言えば面倒を押し付けているのは俺達だぜ。最近じゃ勇者ミッドと聖女リーズは働き易くていいぜ」

「どういう意味?」

「いやな、皆勇者や聖女よりも救世主ユタカの方に執心でさ。最近は長時間呼び止められる事も無いから事件前よりも働き易いんだ。だから今のままでいてくれるとすげぇ助かるよ」

 おいおい、思いっきりダシに使われているな。

 なんか最近妙に色んな人に呼び止められると思ったら、そんな事になっているのか。

 どおりで話をしていたらいつのまにか夜なったりする訳だ。おかげでネトゲ位でしか使われなかった俺のコミュニケーション能力は絶賛ガシガシレベルアップ中だよ。

 ちょっと、顎が痛い気がするのは喋り過ぎって奴か……。

「まあなんて言ってもブリストールの救世主様だからな、ユタカは」

「そんな大層なものじゃないよ」

 ミッドとフィスリム、リーズ以外は俺を救世主様と呼ぶが未だに慣れない。

 というか、さすがに慣れようが無いだろう。

 俺は救世主なんだぜ、とか思おうと思っても咄嗟に拒絶するって普通。

「話は戻るがユタカは冒険者になりたいのか?」

「なりたい、というか冒険者カードは欲しいな~って、持っていて困るものじゃないし」

「あ~なるほど、色々と便利だもんな。もしよかったら俺の方でもギルド長に話しておくぜ?」

「本当? じゃあ頼めるかな」

「おう! 俺とユタカの仲だし任せろ!」

「ありがとう、ミッド」

「まあユタカなら俺が何もしなくても発行されるだろうけどな」

 多分、これ等の会話が原因だったと思う。

 職員のお姉さんにしてもミッドにしても皆良い人過ぎて、物事を適当に扱うって考えが無いのか、その後本気で上に掛け合ったらしい。

 いやまあ、誰かに親切にされるのは嬉しくないわけないけどさ。

 だけどさ。

 ここまで話を大きくするのはどうなんだろうね……。


 冒険者ギルドの一室。

 最上階の真ん中にあるギルド長室とかギルド長本人が言っていたっけ。

 ちなみにギルド長もブリストール奪還戦には参加していて、ミッド隊所属だった。

 なので俺が十字架と一緒に落下した姿はリアルタイムで目に入れていたのだろう。

「救世主様が冒険者登録したいと小耳に挟んだので、是非とも私共も歓迎したいと満場一致で可決されました」

 整えられた髭のヤリ手っぽい顔が特徴のギルド長だ。

 毎日良い物食べているのか恰幅は良く『書類仕事ばかりですよアッハッハ』とか気さくに言っている割には筋肉がしっかりと付いている。

 なんでもミッド曰く昔は本部でも名の知れた冒険者だった様で引退後冒険者ギルドに就職、大出世、今ではブリストールみたいな豊かな大都市のギルド長になる程頭が切れるらしい。

 ブリストール奪還戦でもその手腕は見事発揮されて、ミッドと一緒に数多の魔物を屠ったと酒場では囁かれる程の逸材だったりする。


 種族/人間 性別/男 年齢/47

 出身/人間界 容姿/髭が特徴のキレ顔 社会的地位/ブリストールの冒険者ギルド長

 称号/槍使い、ギルドマスター、凄腕運営、地下迷宮最下層到達 レベル/42

 取得能力/槍技能、貫通、腕力上昇(中)、俊敏上昇(少)、槍技皆伝、カリスマ(微)、先読み(少)、書類整理、×××××、×××××、×××××、××××××


 ちなみにこんな感じで、ぱっと見てもかなりの能力者だ。

 ××が多いのはギルド長としての企業秘密といった所か。

 ともかく槍の使い手としての技術とギルド運営者としての能力が高いのは一目で解る。

「そこで救世主様とも置ける方ならば、その功績から登録に際してささやかな贈り物をしたいと私共は考えております」

「ささやかな贈り物?」

「はい、ではリーズ様」

「ええ」

 うわっ! ギルド長が座っている大きなテーブルの下からリーズが出てきた。

 隠れていたのか、ビックリさせんな。

 リーズの手には上等な紙に書かれた綺麗な文字と魔力の帯びた印。

 それはギルド長のテーブルの上にも置いてあり、計二枚の紙が俺の前に置かれた。

「これは?」

「これは冒険者ギルドと……」

 ギルド長は隣にいるリーズに視線を送り、リーズが続きを口にする。

「教会が発行している。証明書ですわ」

「証明書? 冒険者の?」

「はい、冒険者ギルドは教会と同じく各国に支部を持つ巨大な組織です。ですが真に恥ずかしながら何分大き過ぎる所為もあり、不正に作られた偽造冒険者カードなる物も多数出回っているのです」

「偽造……」

 なんか偽造パスポートみたいだ。

 というか分類で言えば同じなのか?

 まあ納税を安くしたり、提携店舗の宿や商品に割引を掛けていたり、これ一つでどこの冒険者ギルドでも使えるとなると偽造されて当たり前だよな。

「私共もそれ等の不正を戸籍書提出や出身地証明書などの制度を取り入れ、取り締まろうと躍起になってはいるのですが如何せん、不正者との追いかけっこ状態でありまして、現実問題中々に改善は難しい状態です」

「そうでしょうね。便利な道具ですから仕方ないと思います」

「ご理解深くて助かります」

 冒険者ギルドとしてもそりゃあ躍起だろうよ。

 冒険者ギルドの組合員が犯罪に加担していたりしたら信用問題にも発展する。

 仮にそれが偽造されたニセモノの冒険者カードだったとしても不正利用は後を絶たないだろう。特に犯罪組織とか地球でも偽造パスポートを使ったりするらしいし。

「そこで私共は教会と提携して身分証明書を発行しているのです」

「なるほど。それは冒険者カードに含まれるって事ですか?」

「その通りです。冒険者カードにはいくつかの階層がありまして、通常であれば個々人の仕事内容によって昇格していく作りになっています。救世主様の様な場合ではそういった物とは別換算となります」

 やっぱりランクとかあるのか。ゲームの時も何個かに分かれていたな。

 一ヶ月って時間だったからそこまで上がらないけど。

 確か達成する依頼のタイプでも分類されて色分けされるんだよな。

 魔物退治だったり、収集だったり、物品作成だったり、新発明だったりで。

 そこは冒険者ギルドとの折り合いが必要なのでゲームを楽しむ要素だった。

 こんな話聞いていると何かワクワクしてくるな。

 というか別換算?

「救世主様の場合、冒険者ギルドが認めた方……」

「そして教会が認めた人物ですわ」

「のみに発行されます、特別な冒険者カードとなります。これ以上の物となりますとインヴァメルスィール連合王国議会とスカンブリア帝国皇帝からしか得られない証明書となりますので事実上救世主様はかなり上級な冒険者カードの取得者、という事になります」

 つまり最大四つまで受けられる恩威の内二つを持っている事になるって事なんじゃ。

 しかも話を聞く限り、二つの国って人間界でも相当な領土持ってそうだ。

 事実上、高ランクの冒険者ランクって事じゃないか。

 ゲームとか詳しい方だから、なんとなくで解ってしまう。

 こういう高ランクって終盤に手に入る奴じゃないかな?

 先に述べておくが俺はそんなにレベル高くないから難しい依頼はまだクリアできないぞ。

「えっと~私、そんなに難しい依頼とか達成できないと思うんですが……」

「そこは安心してください。上級証明書と冒険者のランクは同一ではなく別計算です。あくまで各組織が認めた人物という事で通常よりも受けられる恩威が多くなるというだけの話ですので安心してください」

「そうなんですか。ちょっと驚きました」

「具体的に通常の冒険者カードに比べて割引金額が三割程多くになり、宿屋に至っては半額の値段で泊まれます」

「……凄いですね」

「もちろん提供店舗限定となりますので、そこは注意してください」

「はい」

「教会側からも似た様な物ですわ。ですが、わたくしの印が入っているのでそれ以上の効果をもらえる事もあると思いますわ」

 聖女リーズ様、あんた何者だよ。

 聖女という身分が今一わからないのでどうとも言えないがリーズって相当な権力者なんじゃないだろうか。話し易いし気さくだから忘れそうだが、聖女って社交的じゃないと普通に務まらないよな。

 もしかして勇者様のミッドもしかるべき場所だと凄い奴だったりして……というか頭が足りないとかバカにしてはいるが、年齢が倍以上もあるギルド長よりレベルが高いし、今更じゃなくても相当凄いよな、ミッドって。

「一つ質問いいでしょうか?」

「なんですか?」

「なんですの?」

 俺が質問すると二人は同時に答えた。

 いやー……話の規模が大き過ぎて気後れしているんだ。確認にね。

「本当にこんな大それた物もらっていいんですか?」

「何を言っていますの! ブリストールを救った救世主の功績がこの程度なんて、むしろ足りない位ですわ。もしもユタカちゃんがいなかったらブリストールは魔物の手に堕ち、わたくしもミッドも、そしてここに連なる都市は今頃どうなっていた事か、想像に難しくないですわ」

「その通りですな。救世主様、謙遜は美徳ですが時に無礼にもなりえます。何よりもあの魔物の中でも極めて凶悪な怪物を早期に討伐できたのは名声以上の功績と言えましょう。おそらく救世主様の機転が無ければ今頃は厳しい局面にいた事でしょう」

 二人は畳み掛ける様に口にした。

 確かにオークキングはとんでもない化け物だったので解る気もするが。

「そ、そうですか。今でも実感が無いので」

「いえ、私共も少々熱くなってしまい申し訳ありません」

「ですがユタカちゃん。あなたの成した偉業が過剰評価という事ではないのはわたくしの名と教会、そして冒険者ギルドが保障しますわ」

「うん、リーズがそう言ってくれるなら納得できるかな」

 自分で自分を褒める事は出来ないけど、仲間の言葉を否定する事はできない。きっとリーズは本当にそう思って言ってくれている。ならそれでいいじゃないか。

「付きましては冒険者カード以外に教会と共に何か贈らせてもらおうと考えているのですが何がよろしいでしょうか?」

 これ以上に何を渡そうって言うんだ、この人等は。

 上級冒険者カード+αってどんだけって話だ。

 ん? 上級身分証明書と贈り物? どこか聞いた覚えがあるフレーズだ。


 世界依頼/都市を救え!! 『達成!』

 内容/ブリストールの街が魔物に占拠された。

 達成条件/魔物の殲滅及び、魔物の親玉の討伐、あるいは撃退。

 報酬/達成者手動選択。

 適正レベル/100。


 世界依頼/聖女を守れ! 『達成!』

 内容/ブリストールの街が魔物に占拠された。

 達成条件/聖女リーズを保護し、他二つの依頼を達成する。

 あるいは依頼終了期間まで聖女リーズを守りきる。

 報酬/上級身分証明書。

 適正レベル/80。


 思い出した。

 ワールドクエスト達成時に、報酬欄にそう書いてあった。

 なるほど、ワールドクエストともなると世界に影響力のある組織から何か贈られるのか。

 じゃあ、そうだな。

「それって本当に『なんでも』ですか?」

「教会と冒険者ギルドで実現できる事なら『なんでも』ですわ。さすがに出来ない事もあるので出来ない場合無理ですわと言いますけれど」

「その通りです。救世主様が欲しいと仰ってくださればユニークウェポンなども進呈できるかと思われます。それ程にブリストールという都市の重要性は高いのです」

 ユニークウェポンだって? 確か通常の武器とは違う、専用効果のある武器だ。

 大抵は特徴を一直線に伸ばした様な強烈な能力が付属されていて、使いこなせれば異常な能力を発揮できる。

 しかも通常武器と違って物によっては成長要素なんかもある。

 ノーマル、レア、レジェンド、ユニーク、エクストラと言った具合だ。

 欲しい。

 だけど、今回はそっちよりも欲しい『モノ』がある。

「いえ、ユニークウェポンはいりません」

「では何が欲しいんですの?」

「実現可能な物であれば冒険者ギルドも教会も労力を惜しまないでしょう」

 まあユニーク規模のアイテムを進呈とか言っているんだから多分、俺がこれから言う事位なら訳無いはずだ。それにな、この手のイベントで欲を掻くと碌な事が無いっていうのは大昔から決まっているんだ。

 だから俺は迷わず答えられる。

「フィスリムの奴隷身分を解放できませんか?」

「「…………」」

 リーズとギルド長だけ時間が止まった。

 まあユニークと比べると些細なプレゼントだと思うけどさ。沈黙は無いだろう。

 知らないのか仲間の命は最強装備よりも重いんだぞ。

 俺は仲間を殺す位なら限定アイテムを逃す男だ。ロ○サガ2とかF○6とかな。

「か、可能だと思いますわ」

 先に言葉を発したのはリーズの方だった。

 以前にも似た様な事があったので耐性でも出来ていたのだろう。

「なるほど、救世主様にとって彼女はユニークウェポン以上の価値がある様ですね」

「はい」

「私も長く冒険者、職員、ギルド長とやってきましたが救世主様みたいな方は見た事がありません」

「すみません。厚意を無碍にした形になってしまって」

「いえ、攻めているんじゃありませんよ。改めて救世主様が救世主である理由がわかった様な気がしたんです。うむ、では各所から伝令を出して名実共に彼女を平民……いや自由民の権利を与えましょう」

「ありがとうございます」

 俺は感謝の言葉をギルド長に交わした。

 これでフィスリムは自由だ。

 何をするのも自由。

 もしも俺がサキュバスだったと解ってもちゃんと断る権利がある。

「さすがユタカちゃんですわ。わたくしの予想を裏切りますわ」

「何を想像していたの?」

「逆方向に凄い事を言うと思っていましたわ」

「逆方向……例えば?」

「法律を掻い潜ったみたいな、とんでもない奴ですわ」

 リーズの中の俺ってどんなキャラクターなんだよ。

 そもそも法律知らないから。後、象徴的な表現やめて欲しい。

 そんな感じで苦笑いをしていると『う~ん』とギルド長が唸る。

「どうしたんですか?」

「いやね。奴隷身分解放は何等問題無いんだが、その程度の報酬ではむしろ冒険者ギルドの威信に関わるのではないかと思いましてね」

「言われ見ればそうですわね。教会も神の偉業を成した方にそれだけとなると問題に発展してしまうかもしれませんわ」

「そうなの? でも、フィスリムが劣る訳じゃないと思うんだけど」

 無論、なんと言われようとフィスリムの件を諦めるという選択肢は無い。

 俺としては正直上級冒険者カードだけでも多過ぎる報酬なので問題は無いんだけど。

 あ、じゃあ困らない程度の提案をしてみるか。

 序盤に一番困る問題の解決策。

 これ位なら冒険者ギルドと教会のバックアップがあれば可能だろう。

「じゃあ装備一式をもらうっていうのはどうでしょうか?」

「なるほど、それなら問題無いでしょうね。冒険者登録という名目にも当て嵌まっています」

「この際だからユタカちゃん。後でお店を見に行きます? そこで良い物を選べば早いと思いますわ」

「では都市の各所の商業組合と製造組合にそう通達しておきましょう。ついでに商売も盛んになるかもしれません。これで影の射した都市が少しでも活気付けば良いのですが……」

 こんな感じで話は進み、俺は上級冒険者カードと装備一式をもらう権利を手に入れた。

しばらく平和パートが続きます。

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