056 騎獣愛護クラン
「どこかいい牧場知りませんか?」
猫さんから聞いたモフモフパラダイスに私の魂だけで遊びに行ったものの、できることなら生身でモフリたい。ゲームのアバターだろうというツッコミは無視だ。
「吾輩はあるとしか知らないにゃ~」
「そんなことないですよね? 長いんだから、お勧めのひとつや百個あるはずです」
「ないにゃ~。そもそも吾輩、行けにゃいもん」
「あ……檻に入れられちゃいますね!?」
「不本意ながらにゃ……」
今の、猫さんのジョークだったんですね。すいません。気付かず乗ってしまいました。私の百個発言は本気です。
「そういえば、フィールドはいくつもあるのですよね? 牧場もその場所その場所で騎獣は変わったりするんじゃないですか??」
「たぶんそうかにゃ? 手に入る騎獣はフィールド事に違うからにゃ。ランクの高いフィールドのほうが強いのが多いにゃ」
「ですよね。てことは、先に行ったほうが、いろんな種類がモフれると言うことですね……手に入れるなら、全てをモフってから決めたほうがいいか……」
モフリ具合は大事。1匹しか手に入らないなら、至極のモフモフを仲間にしたいものだ。
私は今すぐ手に入れることを諦める決断をしていたら、猫さんは腕を組んで難しい顔で考え込んでいた。
「猫さん? どうかしました??」
「にゃ? ああ……全てのっての、にゃんか引っ掛かってにゃ……」
「もしかして、全てのモフモフを集めた人がいるのでは??」
「モフモフじゃにゃくて、全ての騎獣……にゃっ! 騎獣愛護クランにゃ!?」
「騎獣愛護クラン!?」
なんて甘美な響きでしょう。絶対にいっぱいモフモフがいるはずだ。
「名前に偽りありにゃ。最初はモンスター愛護パーティと名乗っていたのに、騎獣の幼獣を保護するとか言い出してモンスターを殺しまくってるヤツらなんにゃ」
「う~ん……言い方に悪意がありますね。何かされたのですか?」
「うり坊の件で皆殺しにしたヤツらにゃ~」
「ああ~……」
猫さんが毛嫌いするのはわかるね。PKされそうになって返り討ちにしたら恨まれたんだから。
「猫さんと同期のクランってことは、最前線付近にいるんでしょうね」
「いや、ヤツらのヤサは、第2フィールドにゃ」
「はい? なんでそんな近くに……」
「第2フィールド解禁時に、買える牧場地の6割ぐらいを買い漁ったから動くに動けなくなったバカにゃ~」
「な、なるほど……」
猫さんって誰かを紹介する時、だいたい悪口言うな。他の人、嫌いすぎない??
それは置いておいて、そんな大牧場を持つトップクランが目と鼻の先にいるのは、神に感謝を! 猫さんと同じ古参なんだから、本当に全ての騎獣を放牧しているはずだ。
「あの、やっぱり、全ての騎獣がいるのですか? 私もモフれます??」
「確か全て集めたとか自慢してきたけど、にゃん年も前だからにゃ~……てか、ドラゴンがいないから、嘘つきにゃ。そう言ったらキレられたにゃ~」
でしょうね。なんで煽るかな~?
「クランが所有する牧場に入るには……確か会員証が必要だったはずにゃ」
「うっ……猫さんの喧嘩相手じゃ会員証なんて持ってないですよね……」
「いんにゃ。キレられた時に投げ付けられたから持ってるにゃ」
「持ってるんか~~~い!!」
これはアレだ。ファーストキングダムの人と同じ、猫さんは嫌いだけど相手に好かれてるヤツだ。猫さんも何度か遊びに行ってるし……本当に嫌いなの?
「それを譲っていただけるとか……」
嫌いならくれてもいいよね? ね!!
「うんにゃ。あげるにゃ~」
「やった~~~!!」
「……にゃ? あ~……これ、譲渡不可にゃ」
「なんで~~~!?」
ぬか喜び~! 猫さん……いや、騎獣愛護クラン、許すまじ……
「いちおう連れは同行できんにゃけど……行くにゃ?」
「神に感謝を!!」
「猫にゃんだけど……」
私が血の涙を流していたからか、猫さんは行きたくないはずなのに、優しいことを言ってくれるのであったとさ。
猫さんが行く気になっているなら、善は急げ。日を空けてゴネられる前に、始まりの町のポータルから第2フィールドの田舎町に移動だ。猫さんはフードで顔を隠してるよ?
「どこかなどこかな~?」
「恥ずかしいからスキップやめてくんにゃい?」
私が心リンボーダンスで躍りまくっていると、猫さんは辛辣なツッコミ。浮かれすぎていたのは自重します。心躍るって、普通リンボーダンスじゃないですよね。
やってきたのは、町外れにある大きな建物。大きな扉から入ると、獣の匂いが鼻に飛び込んできた。
「あれ? 外の牧場に騎獣がいるんじゃないですか??」
「騎獣ってのは、必要に応じて幼獣と成獣を選べてにゃ。大きさを変えられるんにゃ。クランホームまでは誰でも入れるようにして、小さい幼獣を使ってクランメンバーの募集というか、洗脳してるんにゃ」
「へ~。わっ! パンダの子供がいますよ!? かわいい~~~!!」
「もう洗脳されてるにゃ……」
猫さんの説明をそこそこ聞いた私は、幼獣がコロコロ転がるゲージの中に突撃するのであったとさ。




