016 猫さん式レベル上げ方法
いちおう他にも魔法を使って戦える前衛職の人はいないかと聞いたら、武器が違うだけで魔法剣士とさほど変わらないみたい。てか、鞭やら扇やら武器なのか疑いたくなるような物ばかりが出てくるから、剣でいいや。
私の戦法は、魔法剣士に決定した。
「とにゃると、消去は必要ないかにゃ? スキル枠が増えたらスキルを足せばいいだけだからにゃ」
「あ、はい。それでお願いします」
「んじゃ、レベリングしに行くにゃ~。スキルポイントが5になったら戻ってくるんにゃよ~?」
「はいっ!」
こうして目標が決まった私は、気合いを入れて歩き出すのであっ……
「あの~……ついてきてくれないのですか?」
「吾輩、木を切るのに忙しいんにゃもん」
「何も使い道ないクセに~~~」
てっきり猫さんがついてきてくれると思っていたのでブーブー言いながらレベリングする私であったとさ。
それから小一時間後、割と早く終わったのだが……
「猫さ~ん。スキルポイントは溜まりましたけど、初級回復薬を使い切りました~。ここに入るだけで!」
バグエリアに入るのに2回失敗したので瀕死の重傷だ。モンスターからのダメージはゼロなのに!
「ありゃりゃ~。じゃあ、お茶菓子はHPが回復するマフィンにしようかにゃ~? お茶は紅茶が合うにゃ~」
「美味しそうです~」
マフィンに釣られて席に着くと、どっちも美味しい。これだけで怒りが吹っ飛ぶってモノだ。あれ? 私、めちゃくちゃチョロイ??
「んじゃ、そのスキルポイントを使って錬金のスキルを取れにゃ」
「錬金ですね……え? 私、魔法剣士になりたいんですよ??」
猫さんは何を言ってるんだ? 私、そこまでチョロくないよ??
「急がば回れってヤツにゃ。前衛職は回復が必須にゃし、裏技のレベル上げに使えるんにゃ。吾輩を信じてくれたら、お兄ちゃんより早く強くなれるにゃよ~?」
「はあ……」
やっぱりチョロイかも? 猫さんのことは無条件で信じたくなる。強いしかわいいし、いい猫だし美味しいお菓子くれるし……
「取りました」
「よし。その他は外して錬金だけセットしてくれにゃ……できたかにゃ? こっちきてにゃ~」
スキルのセットが終わった私は猫さんの後に続く。フリフリする尻尾を見ていたら、猫さんは止まった。
「この葉っぱ、見てもにゃにかわからないにゃろ?」
「はい」
「抜いてみたらどうにゃ?」
「これを、抜く……あ、薬草って書いてあります」
「じゃ、下を見ろにゃ」
「薬草が生えてるのが見えます」
「普通、知らないアイテムは使ったら名前がわかるようになるんにゃけど、錬金スキルみたいにアイテムに見合ったスキルをセットしていたら、手に持てばにゃにかわかるって寸法にゃ。あとは抜くだけにゃ~」
「これで回復薬を作るってことですね!」
タダで回復薬を手に入れられるのならば、やる気も出るってモノ。私は見えるだけの薬草を次々引っこ抜いて回る。
そうしていたら、「もうその辺でいいんじゃにゃい?」と猫さんに声をかけられて恥ずかしくなる。貧乏症とかじゃないよ? 初めてやる草刈りがちょっと楽しかっただけなの。これでは木をずっと切ってる猫さんを悪く言えないな。
猫さんと元の場所に戻ると、切り株の上に見慣れない壷が置いてあった。
「それはなんですか?」
「書いてるにゃろ? 初級錬金釜ってにゃ。このゲームではだいたい文字が出るから、早く慣れたほうがいいにゃ~」
「あ、はい。そうします。これにさっき取った薬草を入れたらいいのですね?」
「うんにゃ。薬草を2個入れて、その棒でグルグル掻き混ぜるだけにゃ」
「わかりました!」
初めてやることはちょっと楽しい。それにこれは魔女みたいだしね。
とか思っている時がありました。初級錬金釜から煙が上がったと思ったら、ボンッと爆発しました。
「わっ!?」
「うんにゃ。それは失敗の合図にゃ~」
「えぇ~……回復薬できると思ってたのに~」
「スキルレベルが低いから、成功確率も低いんにゃ。んじゃ、スキルレベル見てみろにゃ」
「スキルレベル??」
猫さんに言われた通りステータスを出して確認すると、錬金スキルレベルが2。ひとつ上がっていた。
「あれ? もう上がってる……」
「それが裏技にゃ~~~」
ドヤ顔の猫さんが言うには、スキルを少なくセットすると、経験値が集中するからすぐにスキルレベルが上がるらしい。私に薬草を集めさせたのも、錬金スキルなら採取での経験値も入るからだって。
でも、裏技ではなく、リハビリギルドで推奨されてるやり方とのこと。家族に強要されたスキル構成を改善するための小ネタで、チュートリアルでも説明されてるけど最後のほうだから誰も聞いてないんだとか……私も聞いてませんでした!
「失敗しても成功しても、同じだけの経験値が入るからにゃ」
「なるほどです! だから猫さんは錬金スキルしかセットしてなかったのですね!!」
「いんにゃ。斧を持つためにゃ。あとステータスを低くするのも目的にゃ」
「あれ??」
「そもそも吾輩の錬金スキルは99にゃもん。もうこれ以上あがらないにゃ~」
私のドヤ顔の予想、大ハズレ。錬金スキルはほとんどの武器が持てて、同じように全ての武器を持てる鍛冶スキルより攻撃力が下がるから重宝してるんだって……そんな理由で錬金だけセットする猫さんが悪いと思います!
「ところで猫さんって、スキルはどれだけあるんですか?」
「全部にゃよ?」
「ぜ、全部って……」
「初期スキルから派生スキル、派生から発生するレアスキル、イベントとクエストで貰えるスキルにゃ。昔から多くのスキルを持っていたから、ファーストキングダムのヤツらが面白がって挑んできたんにゃ~」
「はあ……」
そりゃ戦闘狂集団の格好の獲物だよ! だからゴウキさんが猫さんのことを最強とか言うんだよ! なんでこんな猫が知名度低いかますますわからないよ!!
私が猫さんのことを知れば知るほど、謎が謎を呼ぶのであったとさ。




