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魔物から助けた弟子が美女剣士になって帰って来た話  作者: 古河新後
遺跡編 第二幕 殿の兵士

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第74話 “世界”はほんの少しだけ夢を見た

「セルギ」


 ゼウスはセルギへ近寄ると、彼女の容態が安定した様子を確認する。危険な状況は過ぎ、少しずつ『聖人の骨』は手足の再生を始めていた。


「【オールデットワン】……死んだんスか?」

「……限界だったの。どのみち……長くはなかった」


 【オールデットワン】は不死身に見えるがそうでない。

 継続的に戦闘を行うために存在する再生機能。それを使うための代償は己の寿命だった。


「じゃあ……皆……皆の犠牲は……無駄じゃ無かったんスね……」


 そう言うとセルギは眼を伏せる。まだ彼女は立ち上がれる程、身体は回復してない。


「……う……ぅぅぅ」


 しかし、次にセルギが見せる感情は嬉しさでも、勝利した事による達成感でも無かった。


「ゼウス様……ウチは……やっぱり嫌っス……」


 悲しみの感情からポロポロと彼女の瞳から涙が落ちる。


「マリ姉……ソイ姉……」


 疫病で死にかけていた自分を見つけてくれたマリアと教育係のソイフォンはセルギからすれば姉の様な存在だった。


「……エクレアさん……フレイ……水月くん……グランさん……」


 短い間で仲良くなった四人。【エレメントフォース】などと呼ばれていて警戒されていたが、話してみると皆、良い人たちだった。


「この気持ちを……ずっと抱えて生きて行かないと……いけないんスか? ウチは……ウチは……」


 セルギは戦争に従事する者としてはあまりにも未熟すぎた。そもそも、彼女は親しい者が目の前で死ぬ事に耐えられなかったのだ。


「皆に……マリ姉と……ソイ姉に……会いたいっス……」


 死んだ者は生き返らない。そんな事はセルギにも解っていた。解っていたけれど……吐き出さなければとても耐えられそうになかったのだ。


「ええそうね。こんな事は……間違ってるわ」


 その言葉にセルギは顔を上げるとゼウスは決心したような瞳で見つめてくる。


「セルギ、『記録石』に皆の戦いを伝えてくれた?」

「……したっス……」


 そう言って、セルギは焦げた左手に置かれた『記録石』を持ち上げようとするが、ゼウスの方から優しく拾い上げた。


「セルギ、これは内緒にしててね」


 『記憶石』を持つゼウスは、コロン、と微笑むと自分の持つ唯一無二の魔法――『夢魔法』の発動に入る。






 『記録石』へ己の魔力を注ぐ。

 周囲から集まる魔力と自分の魔力を混ぜ合わせてゆっくりと必要なモノへと練り上げる。

 ゼウスは『記録石』を胸の前に浮かせると、自身も浮かび始めた。周囲の魔力は虹色に変わり、彼女の回りへ集まって行く。

 虹色の魔力は『記録石』を包む様に回転を始め、ゼウスの胸の前から更に浮かび上がる。


「――――」


 ソレを唯一見ているセルギはゼウスを中心に彼女が巨大な“木”に見えた。うっすらと幹の輪郭を虹色の魔力が作り、包まれる『記録石』は実の様に光り輝く。


 それは遠目からでも解るほどに巨大な流れとなり、多くの人々が“巨大な虹色の木”を目撃する。


「セルギ」

「は、はいっ!」


 神々しさを感じるゼウスからの言葉にセルギは思わず畏まる。


「皆、困惑すると思う。だから貴女が導いてあげてね」

「導く……? ウチが……?」


 困惑するセルギにゼウスは、コロン、と微笑むと魔法の発動に全ての意識を向けた。

 『記録石』が強く光る――


 世界よ――

 今――

 この瞬間を――

 “悪夢”とする――


 虹の波動が鼓動の様に世界へ流れる。一回、二回、三回、四回目で大きく世界へ広がった。






「…………」

「今のは……良いのですか?」

「許可を頂ければワタシが赴きますが」

「いや、気にしなくて良い、クライブ、ネイチャー。これは禁忌じゃない」






「ゼウス。そうまでして護りたいモノが貴女にあるのですね」

「どうされました? 師よ」

「なんでもありません、ファング。闘争を続けましょう」






「ヤマト、今のを感じたか?」

「……」

「『原始の木』でも納得が行かない事があるとはなぁ」

「スサノオ。今ので『始まりの火』が昂った」

「やれやれ。色即是空で抑えに行くぞ」






 その日……“世界”はほんの少しだけ“夢”を見た。

 人によっては、あれ? これ見たことがある。と思う程度の夢。

 しかし、ソレは夢ではない。実際に起こったことが“夢”として処理され過去が“現実”となる――


「『夢界(ドリームバース)』」


 ゼウスが静かにそう言うと、世界は“夢”から覚める――

 その覚めた瞬間は――






 中心拠点にたどり着いた【トライシスター】と【エレメントフォース】に無数の武器が降り注ぎ、ソレをエクレアの『磁界制御』で反らした。

 周囲に無数の武器が突き刺さる。


「…………」

「――――え?」


 セルギはいきなり目の前で【オールデットワン】と接敵している状況に思わず停止した。

 そして、自分の手足は存在し、隣には――


「これから『戦いの謳歌』をかけます。セルギ、ソイフォン、私の護衛をお願いね」

「セルギ、ぼさっとしない」

「マリ姉……ソイ姉……」


 前に出る二人に思わず抱き着こうとした時、


「…………」


 トッ、と目の前に【オールデットワン】が着地した。


「総員――」


 エクレアさんが号令と共に『雷魔法』を纏い始める。

 アレが繰り返される……何が起こったのか解らないが、駄目だ……【オールデットワン】に戦いを挑んだら……皆死ぬ――


 すると皆の戦意を遮る様に先頭に立つゼウス様(・・・・)が、ばっ! と小さな腕を横にかざした。


「皆、ここは(わたくし)が引き受けるわ。砦から退却して」

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