蜘蛛と蜘蛛、そして我々 Ⅳ
うぉふうぉふ(おまったぁーせ)
うぉふ(アオハル出撃準備)
うぉふ(それとエリアボスの蜘蛛さん登場)
うぉふ([まだボクについては早いよ?]も登場)
うぉふ!(次回からバトルかしら?)
収納から出てきたおふね、空蟲航空巡洋艦アオハル。ざっくり言えば普通に航巡だ。
しかし普通の船とは違う、そう言える圧倒的な違いがある。
まず1つ。
「おおおおおおおお!良い!」
「うひゃあすごい!ねぇこれ宇宙戦艦?」
「バッカお前、航巡やぞ」
浮きます!
ええ、はい。何だか航空戦艦とか宇宙戦艦とか、そういうのに近付けたくてモンスターの羽をぶっ込みました。その結果、浮きますた。普通にロマンじゃな!よしよし!
2つ目。
「浮いてる……よりは、飛んでる?」
「お、大当たり。翅ですな」
浮くのに使っているのは翅である。まあ、羽ばたいているのだ。ということでプーーン、と怨敵モスキートのような羽音が聞こえる。しかし重量とか大きさで少しばかり変化があり、シィーーーーー、という感じの羽音である。
そして、大事なこと。
「ファンブル?」
「何よてるる?」
「見慣れぬ大砲が見えますねぇ?」
「よくお気付きに、閣下」
ニヤァと笑みを浮かべるてるる。
「飾りじゃあないかな?」
「動きますねぇ!」
「よくやったファンブル提督」
「光栄です閣下」
そう。ビーム砲である!クソカブトのコアをぶち込んだからビーム照射が可能になったのだ!素晴らしい!ちなみにただの熱線だから、クソカブトビームこと虚角深淵対消滅線みたいな消滅はしない。でもかっこいーのでいーとおもーの。
てるるとニヤニヤしつつ、アオハルを降下させる。ゆっくりと大地に接近し、もう少しの所で停止する。そしてタラップが……あれ?
「すいませんファンブル提督、乗れないんじゃあないですかね?」
タラップが来ない。あれー?
「これはもしやタラップとか無いタイプか?」
「えー?まぁじ?」
「想定外、いやこれはちょっと……」
「最悪登る?」
てるるとげんなりしつつ駄弁ると、ちーちゃんが『試してみよう!』とでも言うかのようにアホ毛をぴこっ!とさせ、登ろうとする。勿論船をよじ登るなんて芸当が出来る筈も無く、ぺとっと地面に落っこちる。あーあー泥んこ。
「ぶー」
「急ぐから」
「パパーだっこー」
「はいはい」
泥んこちーちゃんは若干涙目で抱っこをせがむ。ばっちいから泥落としなさい。
服をぱんぱんと払い、ちーちゃんは抱き付いてくる。
が、しかし。
「!?」
「ちーちゃん!?」
突然ふわーっと浮かんでいくちーちゃん。そしてそのままアオハルの付近まで浮かび上がると、ちーちゃんはアオハルに乗り込んだ。
成る程、そういうこと。
「分かった、これは跳躍がトリガーなんだわ」
「ほぇ?」
「お前その『コイツ頭沸いてるだろ』って表情やめろ」
「げっ!」
「おいてめえ!」
てるるはほっといて、ジャンプする。ぴょんぴょん。すると予想通りにふわーっと浮き……足にエルちゃんとガスプ姫が掴まる。おいそこ。
「パパーえへへーあんよあんよー」
「……脹ら脛……」
エルちゃんが凄い表情で足にほっぺたをくっ付けている。お前、もしやムッツリさんか?ガスプ姫はぶらんぶらんと足にぶら下がるも、ずり落ちそうになって慌てて自分で飛び始める。ぷぃーーーん。そして腕にしがみつく。離せ馬鹿。
そうして遊ばれながらアオハルに乗り込むと、ちーちゃんが嬉しそうに飛び込んでくる。たゆんたゆんばるるるんが押し付けられそうになるが、ガスプ姫がそれを遮る。全身を浮かせて邪魔する姫にちーちゃんはつっかえて倒れる。
「ぐべぇ!なぁにをすんのこのビッチ蜂!」
「ぷぃーーだ、ビッチはそっちでしょ?」
「あ、成る程。持たざる者故の嫉妬!」
「よし乳虫ちょっと来いよ」
ガンを飛ばし合う2人は睨み合いながら離れていくとぽかぽかぱんちのキャットファイト、ではなくガチバトルを開始する。君達落ち着け。
「……パパぁ」
エルちゃんは自分の胸部をさすさすと撫で、悲しそうに見上げてくる。ちーちゃんの言葉が深く突き刺さったようだ。おーよしよし。抱っこをすればぎゅーっと抱きしめ返し、頭をぐりぐりと押し付けてきた。可愛い。
「パパ、しゅき」
何だこのかわかわ。
「とぉぉぉぉおおおおおおう!」
「お前帰れ」
「アイエエエエ!?あっ、お楽しみで」
妙なポーズで頭上に飛来したてるるを無視してエルちゃんをあやす。よーしよしよし、あの変な人は無視しよーねー。
「うぉふ!」
最後に来たのはわふである。キョロキョロして辺りを確認してから走り寄ってきた。エルちゃん気付くとうぉふうぉふしてぷんすかする。嫉妬か嫉妬か?
とりあえず全員集合!
「「あ!パパが寝取られた!」」
「ぶっ、人気で?」
「黙れよ両性類」
「よろしい聖戦を始めようか!」
エルちゃんに抱き付かれたまま話を進める。エルちゃん以外は文句(喧嘩の口上含む)を宣ってらしたが無視である。エルちゃん可愛いねーほぉらよしよし。
「「きぃぃいいいい!」」
「フッ」
駄目だこの子達女の争いになりつつある!
「えー、皆さん。我等が空蟲航空巡洋艦アオハルによーこそ!」
「ファンブル提督が提督っぽいことしてる」
「そりゃ提督っつーか艦長ポジションだからな?」
てくてく歩きながら話をしていく。まあ施設の説明だな。製作者特権と言うのか、構造だとか能力は全て頭に入っている。搭乗方法?しししししししってたもん!
「アオハルですが艦長のワタクシ、ファンブルが認めた人物しか乗せられません」
「早速チート来た!」
「実際無敵だな?」
要するに、他のプレイヤーやNPC、モンスターは入れない。つまり絶対的安全地帯!勝った!
「そして何よりガスプ姫や」
「ほぇ?」
いきなり名を呼ばれた姫は呆けて首を傾げた。アホっぽいぞ姫。
「確か貴女、従者みたいにスタッグホーネットを召喚できたよね?」
「ほぇ、あー、うんパパ。一応従者っちゃ従者だけど、仮初めの命だからお好きに使って良いよ?」
よし来た!こき使ってやろう!
「この船はあくまでも航巡だ。つまり水上偵察機のような艦載機を載せられ、発艦できる」
「およよ?てるるがニヤニヤしてきちゃったよパパ?」
「流石ファンブル提督、分かってらっしゃる!」
「ねぇパパ、てるるさんのこの女の人にあるまじき表情どうかと思うよ」
「え?ボク男だけど」
「「「「嘘付け」」」」
「流石にファンブルはやめてね?」
「ハッハッハジョーダンジョーダン」
ニヤつくてるると虫娘を連れ、甲板のカタパルトっぽいのが設置されてある場所に向かう。これは実は特製のカタパルトです。そう、スタッグホーネット用の。
「姫、1匹出して」
「はいパパ」
宙にスタッグホーネットが出現する。意思無きその複眼は本能に従い、召喚主たるガスプ姫に向けられながら地に降り立つ。翅を収納してのそりと歩み寄るソレに姫は乗る。おーい?
「お馬さんごっこって奴ね!」
「それじゃホーネット君、ここによろしく」
「出来れば無視しないでほし……うわぁ揺れる!」
カタパルトの上に移動したスタッグホーネットは使用方法を理解したのか、身体を低くして空に尻を向けた。そのままガスプ姫を乗せて……。
「記念すべき第1回の鍬蜂空軍発艦、用意!てるる指揮官!」
「了解!前方確認よぉし!周囲の安全チェックよぉし!風向きなぁし!カタパルト点検!……分からぁん!大体オッケーかと思われます艦長!」
「了解!機体準備!」
「ギィイイ」
「了解!」
「あれ、もしかして……」
「発艦準備オールグリーン!指示を!」
「発艦!」
「ぷぃにゃぁぁぁぁぁあああああああ!?」
発艦したスタッグホーネットはカタパルトによる加速で宙に勢い良く飛び出し、自らの翅を広げて滑空。そして飛翔を開始すれば周囲を凄まじい速度で1周し、次第に高度を下げて甲板へと帰還した。
かぁあっくいぃい!
「「よぉし試験飛行も成功!スタッグホーネットを量産するぞ!」」
ガスプ姫はどこだぁ!量産体制に移るぞ!
するとエルちゃんが後ろから肩を叩いてくる。なぁになぁにエルちゃんちゃん?
「パパ」
「ほいさほいさ!」
「ガスプは外に落っこちてったよ」
「「アッ」」
スタッグホーネットに乗ってたガスプ姫は最初の急加速で風に耐えられず、すぐに船外に放り出されていた。ごめんなさい。ぷんすかしながらふわーっと浮かんできた姫はなんとも可愛かったけど普通に殴られた。ごめんて。
アオハルの中に入っていく。てこてこ皆で着いていくの面白いな。なーんかよく分からん程に作り込まれた各部屋を覗きながら、ちょこちょこと進んでいけば。
「おおおお!それっぽいよファンブル!」
「ここが管制室かな。よぉし弄るぞてるる!」
「よしきた!」
指令部というか、艦長がいるとこに着くやてるると突き進んでしまう。こんなに弄れるのに目が輝かない方がおかしいよな!男の子なら誰しもが憧れるぅ!憧れない馬鹿は絶版だ!
計器がいっぱい配置されている。しゅきしゅき。気圧だとか高度だとかを計測してるのかしら。しゅきしゅき。たーのしー!
ふと後ろを見ると、虫娘3人とわふが微笑ましそうに此方を見ていた。やめろそれ。はじゅかちぃ。
「パパ子供みたーい」
「そういうのも割と良いと思うわ」
「エルちゃんよだれよだれ」
「へ!?おっといけない……貴女達は何も見てない。良いわね?」
「「アッハイ」」
何か聞こえたが関係無いだろう。とりあえず最大の利点をてるるに伝えてから狩りにでも行こうか。
てるるに近寄って肩を叩く。ぎゅるん!と首を回したてるるは正直変態だと思う。梟か?
「てるる」
「何さ」
「実はここにリスポーン地点登録できr「何だと!」って言ったっk「良かろう!」最後まで言わせないのな?」
言葉を遮って即答したてるる。落ち着け落ち着け。登録はー、これを……こうして。よしパーペキ!ではいざ!
「アオハル出撃準備!総員持ち場につけ!」
「了解!」
「「「パパのとこに行く」」」
「うぉふ」
どさどさどさどさ!
いっぺんに3人と1匹が飛び込んでくる。持ち場につけよ持ち場に。おひざとはちゃうぞ?
まいっか。
「空蟲航空巡洋艦アオハル、抜錨!」
「おおおおおおおおおおおおおお!」
乗ってくれるのがてるるしかいないという悲しさよ!もういいもん!わふをもふもふするもん!あーもうもふもふもふもふ!
同時間帯、某地点。
「ギヂヂヂヂヂ……」
森の中に発生した水辺に、ソレはいた。円盤状の胴と腹、昆虫ではない構成の身体が宙に浮く。細かな毛が身体を多い、そこから生える8本の太い脚が動けば大地は震えた。
その異形は真生多脚蜘蛛。
森の王者である。
「ギヂヂ?」
覇王たる真生多脚蜘蛛はある方向を見やる。そちらには宙に浮かぶ艦船が出現していた。言わずと知れたアオハルだ。
木々に岩、そして隠れるモンスターによって見えなくなっている筈のそちらへと顔を向けると、彼は歩み始めた。純粋な好奇心、それと疑念からであった。
アレは何であって、何故彼処にいるのか?
それを知るためだけに、木々は踏み潰される。小鳥や小動物は一斉に逃げ出し、恐れを知らぬモンスターの一部だけが残った。しかしソレ等もすぐに踏み潰されていく。
細く鋭く、屠るために進化した無数の脚によって。
斯くして、戦争は幕を開ける。
自己の疑問を明かす為に歩くモノ。そして迎え撃とうと準備する者と、従い支援するモノ。全てを見ていたのは彼等ではなく、1柱の『アイ』であった。
その『アイ』は仮面を通して異界で微笑む。
「はてさて。ボクのことを満足させてくれるのかな?ファンブル、いやカズ?」
その声は、虚によって誰にも届かず、しかし対象へと絶対的に届けられる。例え次元が、時間が、座標が幾ら違えど、神格には関係が無いのだから。
その邪神の名は『Rerzoviam』。
邪神の意を汲み取り、虚骸之死角仮面は妖しく、静かに起動した。
すごいどうでもいいけど次のエリアボスが決定してしまった。っぉぃっぉぃ。
読み方だけ教えておくとRerzoviamは[またかい?次の次ぐらいには分かるから!]って読むのよ。シリーズ的には全員出したいんだけど出したら出したで面倒なんでまずはRerzoviamだけ。
ニラカスは完全に絶版だぁぁぁあああ!永遠に我が庭から消えるが良い!(スコップ片手)