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キラースペルゲーム  作者: 天草一樹
正義躍動する三日目

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正義の使者による裁き

「どうも。早くもお仲間を失ったようで大変ですね、教祖様は。それともこれも狙い通りだったんですか」

「おはようございます東郷さん。いえ、正直こんなことになるとは予想していなかったもので、私としても驚きを隠せません。無理はなさらないようにと申し上げたのですが、どうやら昨日も温室での見張りを続けようとしてしまったみたいですね。おそらく藤城さんが温室で連絡通路を見張っていると知った者が、先回りして待ち伏せしていたのでしょう。まさかとは思いますが、東郷さんが殺したわけではありませんよね」

「橋爪の時もそうだが、教祖様は俺に人を殺させたいらしいな。まあ残念ながら今回も俺が殺したわけじゃない。俺や神楽耶、それに秋華にもばれているに関わらず、あいつが温室に出向くなんて想像もしていなかった。仮に出向くにしろ最大限の注意を払っていただろうし、早々奇襲が成功するとも思えない。加えてあいつは頭を何かで殴られて殺された様子だった。頭を陥没させるキラースペルは……なくはないだろうが、橋爪のスペルのように頭を爆発させるものがある中で、そんな中途半端で地味なスペルを与えられた奴がいるとは思いにくい。おそらく一井のように何かしら武器を用いたうえで、あいつに反撃させる間もなく殺したんだろう。まあそんなことができる奴なんて、俺には二人ぐらいしか思い浮かばないが。

 ――お前か宮城の二人ぐらいしかな」


 挑戦的な瞳で、明は目の前に悠然と立つ鬼道院を見据える。

 自身が疑われているというのに鬼道院に動じた様子はなく、首元の琥珀石をなでながら「おや、立場が逆転してしまいましたね」などと微笑みを浮かべていた。

 少なくとも外面上は藤城の死を気にした様子は一切ない。それがブラフで、本心では早くも仲間を失ったことに対する焦りを感じているのか。それともやはり藤城の死は計算通りであり、依然として余裕のままなのか。

 明にはどちらかさっぱり分からない。それでも、鬼道院がこれでまた一人になったことは間違いなさそうである。


 ガチャリ


 扉の開く音がして、大広間にまた新たに人がやってくる。

 入ってきたのは不機嫌そうな顔を一切隠さず、眉間にしわを寄せた架城奈々子。二日ぶりにその姿を見たが、初日と変わらず色味の少ない地味な服装で全身を飾っている。

 そうして架城に注目していると、扉が閉まり切る前にもう一人。朝早くから大広間に明たちを呼びつけた人物――(ほぼ全裸の)宮城濾水がこれまた不機嫌そうな表情で大広間に入ってきた。

 二日目に死亡したのはどうやら藤城だけだったようであり、現在この場にはここまでで死亡した四人を除く全プレイヤーが集結することとなった。

 宮城は扉をしっかり閉めるとその前で仁王立ちし、集まったプレイヤーを険しい表情で睨み付けた。


「貴様らをなぜここに呼び出したかは既に話した通りだ。今から貴様らにはこれまで犯してきた悪事を洗いざらい話してもらう。そして貴様らに与えられるべき罰がどの程度の物なのか判断し、正義の使者であるこの俺がその罪を裁いてやる。異論は一切認めない。が、何か質問があるなら各自一度だけチャンスをやろう」


 そう。驚くべきことに、生き残っている全てのプレイヤーが再度大広間に集まったのは、正義の使者による裁きを受けるためであった。

 早朝でまだ寝ていたプレイヤーもいる中、扉を何度も叩いて無理やり呼び出し大広間に来るよう命令した宮城。普通なら無視するか、用件を聞いたうえで拒否して部屋に閉じこもるところ。しかし宮城は出席するまで扉を叩き続けると宣言し、場合によっては扉を壊しての侵入も辞さない様子だった。

 その脅迫にほとんどのプレイヤーが屈し、渋々ながらも大広間に向かうことに。道中温室前にて頭をかち割られ死亡している藤城を発見するなどのハプニングもありつつ――勿論スペルの書かれた紙は見当たらなかった――、次々に人が大広間に集まった。

 唯一架城だけは頑なに宮城の呼びかけに逆らっていたが、どうやら宮城のしつこさが一枚上手だったらしい。結局彼の望み通り全員が裁きを受けさせられることになった。


 それにしても、と明は訝し気に宮城を見つめる。

 自己紹介の頃から周囲のプレイヤー全てを敵に回す発言をしていたこの男。明らかに変質者な恰好や戸○呂弟かよと思わせる筋肉を持っているものの、決して頭が悪いわけではない――それどころかむしろ合理的な考え方を持っているように思えた。

 にもかかわらず、わざわざ一対多の状況を作り、どう考えても自身に不利な場を作り出したのはなぜか。

 宮城の意図が読めずに明が困惑する中、場違いに明るい声で早速質問が飛んできた。


「いやはや、理由はともあれまさか宮城君からお呼びがかかるとは全く思っていませんでしたよ。こうして再度全プレイヤーが集まれたことですし、私としてはもっと楽しいお話をしたいところですが……ここは主催者である宮城君に譲るのが大人の対応というものですね。と、一つ質問が許されているということでしたので、さっそく私の方からぜひ尋ねておきたいことが。

 勿論、勿論私は宮城君に尋ねられたことに精神誠意お答えするつもりでいますよ! しかし中にはどうしても人には話したくない事情がある方もいるはずです。そうした方々はおそらく宮城君の質問に嘘の答えを述べることでしょう。そして不幸にもこの館には外界の情報を得る手段がありません。そんな状況ですからもし誰かが嘘をついたとしてもそれが嘘であるかどうかを判断することはできないと思うのです! おっと! 先に申しましたが私は無論、嘘などつくつもりはありませんからね! あくまで、そうした嘘をつく方がどうしても出てきてしまうだろうと懸念しているだけでして。

 宮城君が戦闘力だけでなく知力にも優れていることは、これまでの話し合いから分かっているつもりです。ですから何か秘策があるのだろうと理解はしているのですが――もしその点の対策が不十分であるのなら、ここは穏便に済ませて」

「無論対策はしてある」


 いつものように長々と語り続ける佐久間を一刀両断し、宮城は堂々と言い切った。


「いや、対策などという大それたものではない。そもそも俺は、相手が嘘を言っているのかどうかぐらい目を見れば判断できる。ゆえに貴様らが嘘をついたところで、真実を答えるまで再度質問を繰り返すだけの話だ。まあ、今回はそんなことをする必要すらない」

「はて、それはどういう意味でしょうか?」


 宮城の言っていることの意味が分からず、佐久間は大きく首を傾げる。佐久間以外のプレイヤーもその意図を読み切れず、不審そうに宮城へと視線を送る。

 それらの視線を一身に受けた宮城は、大きく息を吸い込むと、


「虚言既死!」


 と張りのある野太い声で叫んだ。

 一同が呆気にとられ、何が起こったかを理解しきれずにいる中、宮城は堂々と自身の思惑を語りだした。


「今この瞬間、俺のキラースペルは発動を開始した。言っておくが斧男や爆殺魔のようなはったりではないぞ。俺が運営から与えられたキラースペルは間違いなく『虚言既死』。俺の目の前で嘘をついた悪党を即座に死に至らしめる能力だ。こんな最低のゲームを開催した悪人どもから貰った力など使いたくはなかったが、能力自体は正義の使者たる俺に相応しい力だった。この力自体に罪はなし。加えてこのスペルを悪党に使われたとしても、正義の使者たる俺に一切のデメリットはない。人を不幸にする嘘をつく悪人同士、自滅していく分には俺の仕事が減るだけのことだからな」


 眉間にしわを寄せ、射貫くような視線で、宮城はこの場にいる一人一人の顔を見つめていく。

 ようやく事態の深刻さに気付いた者が焦りの表情を見せ始める。静けさは保たれたままでこそあるものの、どこかざわざわとした落ち着きのない空間へと変遷する大広間。

 その変化を肌で感じ取ったのか、宮城は筋肉を震わせながら重々しく忠告した。


「ここから先、死にたくなければ嘘偽りは吐くな。今この場において、貴様ら悪人共が得意とする欺瞞は一切まかり通らない。さて、他に何か質問がある奴はいるか」


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