10 父さん
「……でも隊長!、本当に良いんですか?。私たちを助けて……。」
エリーザは歩きながらローレンスにそう問いかける、するとローレンスはハハッ、と笑うと、
「元々俺たちは正義の為の組織だ。そして今回は軍が悪でお前らが善と判断した、それだけだ!。」
と言った、その時、
――「いたぞーっ!。」
と言う声が後ろからする、見ると軍人たちがこちらに向かい攻撃してくるのが見える。
直ぐに銃撃戦が始まった。
ローレンスはエリーザたちに、
「早く行け!。良いか!、既に軍本部は作戦は中止した!。ここで戦っている奴はそれを知らない奴等だ!、屋上に20:00ピッタリに国連軍のヘリが来る!、お前たちはそれに乗って逃げろ!。」
と言う、エリーザは、
「そんな!、隊長たちは!?。」
と言う、するとローレンスは笑って、
「エリーザ!、お前は今日で退職だ!。ナジェージダとか言ったか?、エリーザの事、任せたぞ!。行け!。」
と叫んだ。
それを聞いたナジェージダはエリーザの手を掴む、そして、
「行くよ!。」
と言ってステパンと共に走った。
…………
――『現在ロシア軍第一部隊はロシア警察特殊部隊と交戦中です!、先に進めません!。』
無線からはそんな事を悲痛な声で喋る部隊長の声が聞こえる、アドリアンは、
「……もういい!、我々は別のルートを使う!。」
と叫び無線を切る、そして部下の一人に、
「奴等は恐らくエレベータホールを使うはずだ!、そこまで急ぐぞ!。」
と言った。
……………
「……ここだ。」
エリーザたちがやって来たのはエレベータホールだった。
細長い部屋の壁には5つ程のエレベータのドアがある。
ステパンは入口に電子ロックを起動させ扉を閉めるとエレベータのボタンを押した。
五秒程でエレベータの扉は開く。
ステパンは、
「屋上へ行くにはここのエレベータを使うしか無い、俺はここで奴等の足止めをする、お前たちは行け。」
と言った、するとナジェージダは、
「……ステパン……、さん?。」
と呟く、するとステパンは、
「……お前の事、最初は彼女に託されたからって理由で、ただそれだけで育ててた。……けどな、いつの間にかお前に本当に愛情が湧いてしまってな……。」
と言う、その表情はエリーザが初めて見る物だった。
親が子供を慈しむ時の表情……。
「……だから、お前の為に戦う。……お前の為になら、死ねる。」
そう言ってステパンは胸ポケットから写真を出すとナジェージダに渡した。
その写真は角は既に丸くなっており、写真には噴水の前で笑顔で写っている若い頃のステパンとそのとなりで微笑む紅色の瞳の一人の女性――、
「お前の母さんだ……。お前のその目は母さんにそっくりだよ。」
と言った、それからステパンは、エリーザの事を見た、そして、
「……こいつの事を、頼む。」
と言って私たちをエレベータの中に押し倒した。
――『ドアが閉まります、御注意下さい。』
そんな無機質な人工音声のアナウンスと共に、エレベータの扉は閉まってゆく。
ナジェージダは、ステパンに向かい、
「父さん!。」
と叫んだ、するとステパンは笑顔で、
「ありがとう、最期に父さんって呼んでく――。」
――ガヒャン。
そこで扉は閉まった。
……………
「さて……、と。」
ステパンはエレベータの回数表示が上へと上がって行くのを見ながらそう呟いた。
そしてゆっくりとポケットの中に手を入れ、煙草と一つのスイッチを取り出す。
ステパンは煙草を口にくわえるとスイッチを押した。
――ピポッ。
そんな電子音が聞こえる。
そしてステパンが煙草に火を着けると、ゆっくりと深く煙を吸い込んだ。
その時、ドガッと言う音がしてロックを掛けた扉がひしゃげる。
ステパンはニヤリと笑うと、
「さてと、これがステパン・ステンレフ最期の戦いだ。」
と言って肩に掛けていたライフルを構えた。




