第1話
メイは彫師の店に走った。
夢への再挑戦のためだ。
魔法陣型魔術、それがメイに残された唯一の道だった。
魔法陣型が本当に自分に使えるのか、という確認も忘れてただただ走った。
メイには他のことが見えてなかった。
横開きのドアを勢いよく横にスライドさせると、
カウンターに座っていた彫師は驚きのあまり、体が固まった。
***
「本当に良いんだな?」
「お願い。」
「上半身下着姿で男の前で仰向けで寝るんだぜ?恥ずかしくないのか?」
「恥ずかしさなんて疾うの昔に捨てたわ。」
「イタイぞ?」
「大丈夫よ。」
彫師とメイは話し合っていた。
彫師はメイを心配するが、メイはそんな事知るかと言わんばかりに彫師の心配を押し切り、体に入墨を入れようとしていた。
紙に書いてある魔法陣を、特別な素材で、体中に彫れとメイは指示をした。
彫師はもちろん心配した。
だが、メイの勢いに押され結局彫ることになった。
メイは施術台に仰向けで寝転び、目を瞑った。
やがて、皮膚を弾くようなプチプチとした音が鳴り、
「イタい!イタい!ごめん一旦止めてェェーーーーーーーーーーッ!!!!!!」
メイは発狂した。
彫師の彫る手は止まらなかった。
この地獄が12時間続いた。
普通は施術を数回に分けるのが普通なのだが、メイはその言葉を聞かなかった。
彫師は仕返しとして、一度にすべて彫ることにした。
施術台はメイの涙に濡れていた。
「大丈夫か?」
「逆に大丈夫に見える?」
「いや全然。」
そんな言葉をかわし合い、メイは自分の体に視線を落とした。
いろいろなところに、一見同じだが、ぜんぜん効果の違う魔法陣が刻まれていた。
魔法陣は怪しく光っている。
メイは彫師に制服の分の返されたお金を渡し、店を出た。
自分の力を見るのが楽しみでたまらなかった。
「ちょっとお金足りない!!」
「............まあ、一回くらい良いか。」
なんやかんやでやはり彫師は優しかった。
***
魔獣の森で、メイは走る。
少女の割にはかなり速かった。
それもそのはず、魔術で強化しているのだから。
メイの実験は成功した。
メイのふくらはぎの魔法陣は青緑色に光り、風の魔術を発動させていた。
メイが走ったところには嵐が起こった。
次に手を突き出し、弾を射出するようにイメージすると、右手首に巻き付くように描かれた文様が焦げ茶色に輝き、
手元に土塊が出現した。
メイは興奮を抑え、唱える。
『射出』
超高速で土塊が飛ぶ。
的にしている木を貫通し、3本貫通した後、止まった。
「おぉぅ...」
さすがのメイでも少し困惑した。
ここまでの威力とは思わなかったからだ。
「彫師さん、めっちゃサービスしてくれたんだなァ...」
どこまでも彫師さんは優しい人だった。




