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木刀物語  作者: 山の麓
2/3

サクヤ


第二話です。

今回すごく長いです。


よく晴れた、ある朝のこと


ある山のふもとにある小さな村の宿屋の門の前で、一人の少年が、女将と主人に挨拶をしていた。


「よしっ!おばちゃん、お世話になりました!」


パンパンに膨らんだ荷物を稼いで、少年は宿屋の女将に挨拶をした。


「ええ。こちらこそありがとうねぇ。あなたほど色々手伝ってくれたお客さんは初めてよ」


女将は嬉しそうにお礼を言った。


二日間、この宿に泊まっていたのだが、その間、暇を見つけては二人を手伝ってくれたのだ。


「ああ。こんなにいい客は初めてだねぇ。まき割りも手伝ってくれてありがとうな」


妻の言葉に、主人も感動したように言ってきた。


そんな二人の言葉に、少年は笑って答えた。


「お世話になったから、これくらいはしないと。じゃあな、おばちゃんおじちゃん、ありがとな!」


そう言って、少年は歩き始めた。


「え~っと…確かこっち…」


そう言いながら、担いで荷物の中から、地図を取り出す。


この辺の地域は初めてだから、地図を見て行くしかない。


「次は『クミナシティ』かぁ…おっきいとこだといいなぁ」


地図を見るかぎりは、この道をまっすぐ行けばすぐ着く。


「よし。今日中には着くぞ!」


そう決心すると、少年は足早に歩き始めた。






――クミナシティのある武器工房


そこで、ミハエルは、一人、長剣を作っていた。


そこに、甲高い声が響いた。


「お父さん!なんで私なのよっ!?」


工房に入ってくるや否、怒鳴り始めた娘に、父はあっさりと言った。


「おや。サクヤは武器を作るの得意じゃないか。」


そんな父の言葉に、サクヤは詰まった。


「そうかもしれないけれど…。でも、私、品物になるようなのは作れないわ!」


「大丈夫だって。お前はもう、立派な武器職人なんだから」


父は優しく言う。


「何かあったらサポートするから。頑張りなさい。」


「……」


サクヤは、父が好きだったが、特に、武器職人として働く父が大好きだった。


自分もあんな風になりたいと思い、父の真似をして武器を作り始めたのが三年前。


最初は父にもばれないようにこっそりやっていたが、二本目に作った槍を褒められて以来、作るたびに父に見せるようになった。


それ以前から、槍使いとして活躍していた為、槍は、ちゃんとしたものが作れるようになった。が、今回の注文は剣だ。


「だって、剣でしょ!?私、ろくに触れないのよ??」


剣は、嫌いだ。触るのが。


最近は、見れるようになったけれど、少し前までは見るのも嫌だった。


見ただけで、吐き気がするほど。


だが、父は少しも揺らがない。


「触れないなら、触らないで作ればいい。それぐらいはできなきゃ、一人前じゃないぞ」


「一人前じゃなくていいもの。」


頭を下げて、彼女は言う。漆黒の髪が、炉の灯りでオレンジ色に輝く。


「私は、一人前になんか、なりたくないの!!」


彼女は叫ぶなり、工房を飛び出した。




もう夕暮れで、今からじゃ友達の家もご飯の準備で忙しいだろう。


何処へ行こうか悩んでいた時、気がつけば町を出て、街道に立っていた。


武器の材料で、鉄や鋼などを遠くの町から取り寄せたとき、この街道を通って運ばれてくるのだ。


小さいころから父の付き添いで、運ばれてくるたびにここに来た。


動かずに、立ちつくしていたサクヤだったが、しばらくして、人が来た。


「誰…?」


見たこともない容姿の少年だ。瑠璃色の髪と瞳。どこかの貴族?


サクヤの呟いたような言葉に、少年はにかっと笑って言ってきた。


「あ、俺?俺はコクト。旅をしてる。」


旅か…小さい頃、よく旅に出て、困っている人を助けたいと思ったことがある。


懐かしいな…


そう思うと、なぜか積極的になってしまう。


妙に親近感が持てるのはなぜだろう?


「旅をしてるの??クミナシティへようこそ。私はサクヤよ」


「やっと着いた…」


少年は、ホッとしたように言ってきた。


それにサクヤは、微笑む。


「ね、今夜の宿、決まってないなら家にいらっしゃいよ!きっとお母さんたちも喜ぶわ。」


その言葉に、少年は嬉しそうに言う。


「いいのか?よかった。そろそろ路銀も底をつきかけてて…」


しかし、最後まで言い終わる前に、彼女はまたも微笑んで言う。


「ちょうどよかったわね。でも、ただで泊まらせてあげるんだから、私の言うこと、全部聞いてもらうわよ」


少年は首をかしげる。


「?」


彼女はただ、笑っている。


「ええ。当然でしょう。これから三日間、私の言うことを聞きなさい。いいわね?」


「いや…二日後にはこの町を出る…」


コクトが言い終える前に、彼女は一言。


彼女は、有無を言わさない口調で、ただ、言うだけだった。


「いいわね?」


コクトは、しばらく無言を続けていたが、威圧に耐えるず、頷いてしまった。


「は…はぃ」


それに、サクヤは、女の子じゃないような、恐ろしい顔になって…


「返事は『はい、サクヤさん』でしょう?」


コクトは、ただ言葉を返すことしかできなかった。


「は…はい、サクヤさん!」




サクヤは夕食で、コクトを紹介した。


サクヤの横に座ると、サクヤは話し始めた。


「旅をしているんですって。今日この町に来たばっかなんだ。」


「こ…コクトです。今日から三日間、お世話になります。」


サクヤに合わせて、コクトは名乗った。


すると、目の前に座っていた、コクトより四つぐらい年上っぽい女性が、話しかけてきた。


「サクヤの姉の、アルアです。ゆっくりしてって。あまり大したものはないけれど。」


名乗られたら、褒めるのが常識だと、昔誰かに教わったことがある。


「アルアさん。とってもいい名前ですね!」


効果は、抜群であった。


「ふふ。良い子じゃない。可愛いわね。」


普段は敬語を使わないコクトであったが、横からの厳しい視線に、敬語を使わざるを得なかった。


コクトは可愛いなんて今まで言われたこともなかったので、ちょっと恥ずかしかった。


すると、アルアの横、サクヤの前に座っている、優しげな女性が褒めるように言ってきた。


「あなたの髪と瞳、きれいな瑠璃色ね。珍しいわ。なんて綺麗なんでしょう…」


コクトは、今まであまり気にしてこなかったが、自分と同じ髪の人を見たことがない。


コクトが知っている限りでは、この髪をしているのは母と、自分だけしか知らない。


「あの…この辺りに、この色の髪をした人とかって、いないんですか?」


恐る恐る聞いてみると、彼女は頷いて言った。


「ええ。私、こんなに綺麗な髪を初めて見たもの。」


コクトは少しさびしいような気持ちになった。


「そうなんですか……あの」


お礼を言おうと思ったが、彼女の名前を知らない。


サクヤの母なのだろうが。


困っていたら、それを察した彼女はごめんなさい、とでも言うように言った。


「あ…私ったら。私はこの子たちの母で、サリ―よ。よろしくね。コクトくん。」


「はい。こちらこそ、お世話になります。」


「本当に、できた子だね。」


いままで、会話の中に入ってこなかった男性【ひと】の声が、部屋に響く。


「ええ。サクヤも、よく見つけてきたわね。」


サリ―も付け足す。


「たまたま街道であったの。宿も無いって言うし。」


そんな妹の言葉に、姉は首をかしげた。


「旅をしてるって…何かを探してたりするの?」


その質問に、コクトはうなずいた。


「お…僕には、大きな目標があるんです。お母さんの遺言でもあるんですが。

 それを達成するには、はるか遠くまで旅をして、強くならない――。

 そのために、今は仲間を探しているんです。」


「えらいわねぇ。で、どんな目標なの?」


「やましいことじゃないなら、教えてくれないかしら?」


「ぜひ、教えておくれ。」


口々に言われ、コクトは詰まった。助け船を出してもらおうと、サクヤを見たら、彼女は楽しそうな顔をしていた。


「そうよ。時間はたっぷりあるんだから。」





どれぐらいの時間が経っただろうか?


話し続けていたから、のどと口はからからで痛い。


「――ということなんです。」


「ほぉ。なるほどねぇ。じゃあ君は、そこそこ強いのかな?」


アルアはどこか面白そうな声音で聞いてくる。


「はぁ…そこそこですけど……」


その言葉を待っていたかのようにアルアはノリノリだ。


「そう。なら、サクヤと戦ってみない?この子、とっても強いの。きっといい体験になるわ。」


サクヤは驚いた。なんで!?


「お姉ちゃん!」


「良いじゃない。ちょっとしたお遊びとして、だし。」


「そんなぁ」


サクヤは嫌だった。


コクトはサクヤをちらちら見ながら言う。


「別に良いですけど……サクヤさんは?」


さっきの話を思い出して、サクヤははっとした。


コクトの武器は、木刀だ。


それなら、多少手を抜いてもお互い傷つきはしないはずだ。


「いいわよ。」


「えっ…」


「そうねぇ。どうせなら、なにか賭けでもしない?」


「たとえば?」


「コクトは仲間が欲しいんでしょ?」


「うん」


「私が負けたら、一緒に旅に出てあげるわ。」


「おっ!」


「そのかわり、私が勝ったら、私のお願い、聞いてもらうわ」


「お願い?」


「私が勝ったら教えてあげるわ。」


自信満々の彼女にコクトは少し不思議に思いつつも、頷いた。


「はい!喜んで受けます。」


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