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少年傭兵は幼女を拾った。でも厄災の魔女かもしれない。  作者: 阿井りいあ
一章

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18 ポレットは魔法を使えるか


 テオドールは、まずリグとポレットを町の外に連れ出した。

 ポレットに魔法が使えるのかを確認するためなのだが、事情が事情だけに人目につくのはよろしくない。

 宿舎にはすでに他チームがいる上、もし暴発でもしようものなら建物が崩壊して危険。


 というわけで、誰もいない森の中で試すしかないのだ。


 人の気配がない場所を探すのはリグの担当だった。

 リグは斥候としての才能が高く、勘も鋭い。恐らく、気配の察知ならチーム内の誰よりも優れていた。


「よし、それじゃあ結界を張るねー」


 いい場所を見つけた後は、テオドールの魔法によって結界を張る。

 危険から身を守るだけでなく、内側からの暴発を上空にだけ逃せる仕組みだ。

 その上、外部から内部の様子を認識出来なくなり、声や気配すら遮断してしまう。


 なお、ここまで高度な結界を張れるのは金糸を持つ魔法使いだからこそ。


「さて、まずはポレットちゃんが魔法を使えるかどうかを調べようか」

「たしか、魔力は封印されてるんだっけ? その状態で使えるのか?」

「だから調べるんじゃないか。少しずつポレットちゃんの身体に魔力が巡り始めているからね。魔力貯蔵庫に小さな穴でも開いていて、そこから生命維持のために流れているんじゃないかって思ってるんだ」


 そう考えると、その小さな穴から魔法を使う分の魔力を取り出せるのではないか、というのがテオドールの推測だった。


 リグは魔法についてはあまり詳しくないため、テオドールの言うことの半分ほどしかわかっていなかったが、そういうものだと思って小さく頷いた。


「ま、やってみよう。ポレットちゃーん、僕の手を握って?」

「……やっ!」

「そんなに嫌わなくてもいいじゃん……さすがの僕も傷付くよ……?」


 しかし、相変わらずテオドールに対して警戒心を抱くポレットは片手でリグの服を掴みながら拒否の姿勢を見せている。

 テオドールはわざとらしく萎れているが、この男のことだ。どこまで本音かはわからない。


「ポレット、俺が反対の手を握っててあげるからさ。頑張ってみよう?」

「……うー、わかった」

「複雑~。まぁいいや。ポレットちゃん、僕は魔法については真剣に教えるからさ、そこだけは信用してよね」

「…………や」

「とほほー。いつか好かれる日がきたらいいなー」


 軽口を叩きながらもテオドールは、自身の手に乗せられた小さな手をそっと握ると、これからやることを説明した。


「まず、僕が君に魔力を流すから。嫌がらずに受け取ってね?」

「うん」

「じゃあいくよー……っ、痛!」

「えっ、テオドール!?」


 テオドールがわずかな魔力をポレットに流した瞬間、急に繋いでいた手から火花が生じて離れてしまった。


「ポレットは大丈夫か? 痛くなかった!?」

「いたくない」


 手をヒラヒラさせながら眉をしかめるテオドールに対し、ポレットは何が起きたかわからない様子できょとんとしている。

 もしかするとポレットが無意識にテオドールの魔力を拒否したのかもしれないとリグは考えた。


「そこまでテオドールのことが嫌だったのかな……」

「ちょっとリグ、誤解しないでくれる? 今のは拒否じゃないよ」

「え、違うの?」

「そうさ。ポレットちゃんは、きちんと素直に受け入れるつもりだったよ。そこらの魔法使いだったら勘違いしただろうけど、この僕の目は誤魔化せないからね!」


 別にポレットが何かをしたわけではないのだが、ふんと鼻を鳴らして得意げにするテオドールに対し、リグは何も言わずに続きを待った。


「これは魔力に弾かれたんだよ。魔力ってさ、量だけでなく質にも強弱があるんだよね。僕の魔力よりもポレットちゃんの魔力のほうが強かったんだ。そして、魔力自体が他の魔力を拒否した、って感じかな」

「テオドールよりも強い魔力!?」

「びっくりだよねー。僕も驚いた! どうしよう、すごく面白い」


 自分よりも魔力が強いと知って、そこでなぜ面白いになるのかとリグの顔が引きつる。

 今のテオドールは明らかに不審者で、ぐふぐふ楽しそうに笑っているのが不気味に見えた。


「なんかよくわかんないけど……弾かれちゃって大丈夫なの? 訓練は続けられる?」

「もっちろーん! むしろこれでポレットちゃんにも魔法が使えるってことがわかったよ」

「……俺にもわかるように説明してよ。ポレットだってわかんないよな?」

「……このひと、きもちわるい」

「酷いっ!」


 終始ウキウキしていたテオドールに、ポレットの正直すぎる言葉の刃が突き刺さる。

 テオドールはこほんと一つ咳ばらいをして落ち着くと、今度はちゃんと教えてくれた。


「ポレットちゃんの魔力が僕の魔力を拒否した、ということは! 魔力がちゃんと反応してくれているってことさ。必要な時に必要なだけ出てきてくれるって感じだね」

「じゃあ、魔法を使うのに何も問題ないってこと?」

「んー、半分正解かな。魔法を使うことは出来る。でも使いすぎはダメ。なぜなら魔力貯蔵庫の封印が解けて一気に膨大な魔力が体内に流れ込んでしまうかもしれないからね」

「えっ、それってやばい、よな?」

「そう、やばいよ。でもそこまで心配しなくても大丈夫。そもそもこの封印は、ポレットちゃんを守るためのものだからね」


 たしかに、封印がなかったら魔力が溢れてポレットの身体は崩壊しているはず。この封印はポレットのためにあるというのは間違いなかった。


「弾かれた感覚からいっても、貯蔵庫の魔法はかなり精密で強固だ。普通に魔法を使うくらいなら都度、体内に魔力を補充してくれる感じだよ。魔力回復いらずの魔法使いってとこかな。ただし!」

「使いすぎたり、大きすぎる魔法は危険ってこと?」

「察しがいいね、リグ! その通りだよ」


 しかもその大きすぎる魔法の基準は、この森全体を燃やし尽くすレベルの魔法だという。

 そこまでの規模の魔法を使う機会はテオドールですらほとんどないため、気を付けるとしたら使いすぎのほうだ。

 こちらは魔法を使う際の心身疲労度に関係するというので、無理な訓練をさせないことに注意すれば良いとわかった。


「ぶっ倒れるまで魔法を使った訓練をしたらダメってこと。その辺の見極めは僕がしてあげるから心配無用! 以上を踏まえて、今日は簡単な魔法を使ってみることから始めよう。さ、なんの魔法を使ってみたいかなー? 火? 風? それとも水?」


 ポレット本人よりもウキウキ状態のテオドールを見ていたら、リグは自分が心配しすぎな気がして肩の力が抜けてしまった。

 リグもポレットのことをよく見ているつもりであるし、今はテオドールのようにポレットが魔法を楽しめるのが大事かもしれない。


「俺も見てみたい。ポレットの初めての魔法をさ」

「うん、やって、みる……!」


 リグの言葉を聞いて、ポレットもまた俄然やる気を出したようだった。


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― 新着の感想 ―
幼女に『プイッ』されるのは、ある意味ご褒美。度し難い
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