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物言わぬ花嫁  作者: さい
13/35

13.急転

今回は展開の都合、短くなります。

 ――城壁宿が深夜を迎えた頃。

 留め置かれた客達の幾人かは部屋で眠り、あるいは明日の準備をし、他の大多数はお決まり通り酒場でまだ騒いでいた。

 そこへ突然、闇をつんざくような女の悲鳴が響く。気づいた者はぎょっとして、声の聞こえた城壁の外側に顔を向けた。それから幾拍、間を置いて。べしゃりと何か重たい水っぽいものが潰れる音が、緊張のしじまを破って地の底から響いた。遠く……軽く。


 聞いた誰もがまさかという顔で、凍りついた。

 

 二階の酒場も、例外ではない。

 小さな穴窓が外へとふたつきり開いていて、喧騒の中にも悲鳴は届いた。何事かと幾人かが顔を上げた途端、続く不気味な音がして、辺りが静まる。

 ダリバは一瞬で酔いが冷め、窓際へと寄った。

 見下ろす先は暗い。僅かに窓から漏れる光では、地上には届かず、闇の底に何が沈んでいるかは見えない。下の一階は巨大な城門を持つ分、恐ろしく天井が高いからだ。

 城壁宿の女といえばまず娼婦だ。しかし、それにしては声が若かったような?

 ここに留め置かれるのは領地外の旅人だが、うち女は少ない。郊外には夜盗も多く、旅は危険が過ぎるからだ。また近隣の野菜の行商女などは、大抵通行証を持っており、宿に泊ることはまずない。決め付けるのは早計だが、もしもさっきの悲鳴が娼婦でなく、宿に珍しい女客とすれば……ダリバ達が連れてきた一人を除いて、恐らく他にない。

 嫌な予感が背筋を這う。その時は、彼らにとって拙いことになる。

 

 仲間が顔を見合わせる中、リジムがふいに腰をあげ、階段の方へと足を進めた。

 と、その階段から年寄りの叫びが転がり落ちてくる。

 

「誰か。ああ。窓から見えたんじゃ……赤い……何かが落ちた。人かもしれん!」

 

 酒場は騒然となった。

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