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夏の病院
シトラスを出て、とりあえずウチに向かうことにした。トシ江さんの実家にまだ連絡していなかったらしい。車を置いている病院まで歩く。
病院が近付いた時、サクラが旧棟の方をジッと見て止まった。
「誰かいますね」
病院の旧棟は確か1階の備品室と2階の資料置き場、本館の空きがない時は霊安室もまだ使っているので人の出入りがあっても不思議ではない。
「ほら、5階の左から2番目の窓」
5階、と聞いてゾッとした。その階はかつて末期患者の病室フロアだったからだ。見なきゃ良いのに、ついそちらを見てしまった。
「あ、普通に看護師さんですね。びっくりしたぁ」
……なんだろう。この騙された感。けらけら笑うサクラ。わざとじゃないんだろうけど。よく見るとその階のいくつかの窓から患者さんと看護師さんが見えた。手を振っている人もいた。
後部座席に荷物を乗せて、家に向かう。
………違和感。
「あれ?今、お盆期間だし入院受け入れは本館でしかしていないはず……」
青ざめるサクラと思考が停止した僕は、旧棟を見ないようにその場から離れた。




