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盆の入り
「家、帰るぞ。蒼汰。盆だから、先祖が帰ってきただけだ。ソイツは、この山から出れねぇ。心配することなんて、なんもねぇ」
僕の手を握り、バァちゃんが言った。いつも熱いくらいのバァちゃんの手が、冷たい。焦りなのか怒りなのか悲しみなのか。日が傾き始めて、顔がよく見えなかった。たぶん治くんと同じくらい、バァちゃんも生前の鼎造のことが好きだったんだろう。
帰る前に、ひとつ聞いておきたいことがあった。
「鼎造さん。今までに、僕のために…僕のせいで死んだ人はいますか?」
鼎造は穏やかな笑みを浮かべた。
「心当たりがあるのかい。またここに来た時に教えるよ」




