鬼族の警護。
「うー、うぇーん。お母ちゃん、ごめんなさい。ユウナが、間違ってました。許してください、お願いします。」
「麻里、その辺にしたらどうだ。ユウナも、反省してる様だし。」
「何にも知らないのね、あなた。この子がお母ちゃんって言う時は、心から思っていない時よ?いつも、自分ばっかりいい顔して。」
「そうなのか、ユウナ?」
「そんな事無いよ、パパ。お母ちゃん、欲求不満が溜まっているんだよ。パパの、せいだよ。」
「おっ、そうなのか?パパも、頑張っているんだがな。おい、麻里…!」
「ユウナ、言うに事欠いて!」
「ママ、痛い!お尻ペンペン、やめて。痛い、痛いよぅ。助けて、パパ!」
「イヤー、ユウナガンバレ…。」
「ユウナ、何でわかってくれないの?ママは、あなたの事しか考えていないのよ。」
「パパの事は?」
「ちょっとは、考えているわよ。」
「ちょっと、なのか…?」
「ママは、何でそんなにボクが大事なの?」
「お腹を痛めた子供が大事じゃない母親なんて、いないの。」
「へっ、ママから産まれたのボク?」
「そうよ、だからもっと甘えなさい。ずっと、ママはそばにいるから。」
「いいのぉ、いいなぁ。」
「あなた、煩い!」
「ハイ!!」
「ママ、ずっと一緒だよ。」
「ミュー、ずっと一緒だよ。」
「パパ、ミューちゃん迷惑がってるよ。」
「男一人だと、肩身狭いなぁ。」
「頑張って、弟作ってよ。」
「ユウナ、兄弟欲しいの?」
「うん、ボクお姉ちゃんになりたい!」
「でも、弟が出来たらママ取られちゃうかもよ。」
「大丈夫、ボクが大切にするから。」
「ハァン、いい子ね。ママのおっぱい、たくさん飲みなさい。」
「ママ、パパがもの欲しげだよ。」
「パパは、ミューちゃんの人参スティックしがんでなさい。」
「ミュー、ありがとう。お前さん、けっこう気遣いしてくれるんだな。」
「ミューちゃんは、出来るウサギなのだ。」
「ヴゥー、ヴゥー!」
そして、今晩もミューちゃんと一緒に寝る。
パパとママは、二階で頑張ってくれるだろう。
何を?あれを!
翌日も、俺は会社に顔を出す。
今日は市役所で、産廃処理場について会議がある。
年末も差し迫っているが、予算の計上をしなければならないので急務なのだ。
やはり、補償金の事で多少揉めている。
地元の漁協に都会の筋ものが、知恵を貸しているらしい。
娘の知り合いの成田組長に仲立ちに入って貰ったが、逆に嫌がらせを成田さんの会社に働いているらしい。
漁協も権利を貸すだけで、金が入って来る。
後々、そいつらに食われるとも知らずに。
そして、今日漁協側の代表として横浜から組のお偉いさんが来るらしい。
億単位の補償金を要求しているのだ。
それなりの人物が、来るのだろう。
「来られた、様ですね。」
ドアを開けて、紳士然とした初老の男性が入って来た。そばには、如何にも暴力沙汰に慣れていそうな大男がいる。」
「どうぞ、お座り下さい。私が、環境保全部の三沢です。こちらが、開発責任者の如月さんです。」
二人で、名刺を渡す。
「手間を掛けさせるな。俺が、漁協の代理人の稲沢だ。横浜で、しがない商売をしている。今回は、知人に頼まれてよう。よろしく、頼むぜ。」
「稲沢、えらく落ち着いたな。」
「テメェ、口の訊き方に気をつけろ!親分に舐めた口訊いたら、二万の子分が黙っちゃいねぇぞ!」
「やかましい、小童が!」
「何だと、テメェ!親分、何してるんですか?失礼な口訊いてるのは、こいつでっせ。」
「すいませんでした、どうか命ばかりは…!お前も、謝らんかぁ!」
「稲沢、何でこんな小さな事案にお前が関わっているんだ?お前も、今じゃ特定広域暴力団の最高責任者だろ?」
「如月さん、お知り合いですか?」
「昔、仕事でね。こいつも、駆け出しの無鉄砲な奴でね。今じゃ、舎弟が二万とか。出世、したもんだ。」
「大丈夫なんで、そんな人に…。」
「大丈夫だよな、稲沢!」
「ハイ!!この度の事は、全力を持って謝罪させていただきます。成田さんにも、丁重に応対する様に致します。何卒、平にご容赦の程を。」
「謝罪など、いらん。二度と、関わるな!」
「謝罪だけでも、お願い致します。組の存続が、掛かっておりますれば。」
「わからん奴だな、俺はカタギだぞ。お前等の様な者と、一緒にするな。」
「ははぁ、御慈悲の御心確かに承りました。」
「よし、帰れや。これで、終わりだ。」
いそいそと部屋を出て行く、二人。
「部長、済みませんでした。漁協には、常識の範囲内で補償金お願いします。」
「如月さん、あなた何者ですか?」
「嫁に頭が上がらない、はげ親父ですよ。」
「では、申請手続き始めますね。」
「よろしく、お願いします。」
部屋を出ると、福祉課の前に来る。
「すいません、土濃塚君はお手すきですか?」
「はい、お待ちください。」
「お久しぶりです、親方。今日は、こちらだったんですね。」
「あぁ、缶コーヒーでも飲みに行くか?」
「俺に、何か用ですか?ゴチに、なりますね。」
「義隆、明日外に出れるか?」
「はい、明日は生活保護者の観察なので比較的自由ですよ。」
「それは、単独行動かな。だったら、ユウナの警護をしてほしい。」
「ユウナだったら、大丈夫なんじゃないですか?同世代で俺より強いのは、姫様くらいですよ。」
「そうなんだが、ユウナは今幼児なんだ。それと、明日は母親と友達が一緒だ。それとなく、見守ってほしい。お前だから、身バレしても構わんがな。」
「母親?あっ、親方米高のマドンナと結婚したんでしたっけ。おめでとうございます、隅に置けないなぁ。」
「義隆、お前も早く結婚しろ。いいもんだぞ。」
「ごちそうさまです、俺もまだ未成年ですからね。それとも、姫様をくれます?みんな、狙ってますよ。」
「馬鹿もん、絶対誰にもやらんわ!」
「はいはい、姫様かわいそうに。じゃあ明日、しっかり姫様のストーカーしておきますね。」
「あぁ、頼むよ。」




