流氷船。
コンビニで、大きな筋子のおにぎりを買って頬張る。
ユウナの、大好物。
お土産に、出来たらな。
「麻里、又ユウナの事考えているだろう?」
「何で、わかるの?」
「目尻が下がって、ニヤニヤしているからな。」
「モゥ!」
何でも、お見通しなのね。
車が、網走港に着いた。
流氷ツアーは、砕氷船と言うのに乗る。
かなり揺れるみたいなので、私は旦那と共に〈ホーリー〉をかける。
さて、乗り込みますか!
うっ、しばれる!
思わず、旦那にしがみ付く。
やっぱり大きな身体、とても安心感がある。
出港!
ゆっくりと、湾内を進む。
まだそれほど厚くない氷を割り裂いて、船が進む。
沖に出ると、様相が一変した。
至る所が小山みたいになっており、その上に乗り上げない様に慎重に進む。
「凄い!同じ、地球なのよね。」
「と言うか、日本だな。ほら、あそこにトドみたいのがいるぞ。」
「ゲームしている、ユウナみたい。」
「ユウナも、連れて来たかったな。」
「あの子、寒いから外に出て来ないわよ。」
「子供なのに、外で遊ばないんだな。」
「今どきの子供は、ゲームやテレビばっかりよ。」
「でも、今ごろミミ様に鍛えられておるじゃろ。」
「あの子、真面目にやっているかしら。ミミ様に、迷惑かけてなきゃいいけど。」
本当に、母親らしい。
いや、ユウナはたぶん麻里が産んだんだろう。
添乗員さんから、甘酒が振る舞われた。
温かくて、うまい!
麻里、おかわりか。
本当に、好きだなぁ。
白クマに出会う事も無く、無事に港に帰って来た。
お昼ご飯は、港の近くの食堂。
時鮭の定食が幟にあったので、ここにした。
まあまあ、いいお値段だ。
定食には、焼き鮭と刺身それに氷頭なますとアラの味噌汁。
なかなかの、ご馳走だ。
私は、他にも時鮭の握り寿司も追加注文した。
先に来たお寿司を頬張り、麻里にも一つ食べさせる。
「んまーい、脂が載ってるけどしつこくない。全然、いつものサーモンと違う!」
「そうだな、時鮭は一万匹に一つくらいしか取れないそうだ。」
「お土産に買おうよ、長の家に送ったら喜ばれるんじゃない?」
「あぁ、そうしようか。」
いい、嫁だなぁ。
定食も、手元に来た。
予想以上に、美味そうだ。
サービスで、ルイベも付けてくれた。
女将さんに、お土産で買えないかと聞く。
この食堂の裏手が、水産卸をしているから買えるよとの事。
地方発送も、大丈夫らしい。
麻里が、財布を気にしていた。
「麻里、大丈夫だぞ。俺も、結構持っているから。」
「んー、でも郵便局寄って。心許ないから。」
「そうか、一応旦那なんだから甘えてくれよ。」
「一応じゃない、ちゃんと夫よ。もぅ!」
食べ終えて、網走刑務所に見学に行く。
往事の面影そのままで、良く保存されていた。
この寒さでこんな所に収容されたら、なかなかつらいだろうな。
それだけの罪を犯して、ここに来たのだろうが。
しかし、私たちの仲間も明治の開府以降かなり捕まった。
罪を犯した訳では、ない。
政府にとって、邪魔になったのだ。
殺されないだけ、ましだったのか。
ここに送られた者も、多数いる。
今は、冥福を祈るばかりだ。
「あなた、何思いつめてるの?」
「知り合いが、昔ここで亡くなったと聞いた事があってな。」
「そう、その人は何故捕まったの?」
「政府の機密に、触れてしまった様だ。元々、政府に頼まれた仕事だったらしいが。」
「〈ホーリー!〉」
「ありがとう、麻里。」
「あなた、これからどうする?」
「ちょっと遅くなるが、稚内まで行こうか?日本最北端だから、一度はな。」
「大丈夫、少し休んだら。」
「今日は、ほぼ運転していないからな。眠くなったら、無理しないで宿をとるよ。」
「うん、わかった。」
市街地を抜けて、飲み物やら買いにコンビニに寄る。
トイレを済ませて車に戻ると、旦那がナンバープレートを触っていた。
「貴方、どうしたの?」
「いや、ここから二時間程麻里に運転してもらおうと思って。」
ナンバープレートが、仮免許練習中に差し替わっていた。
確か、本免試験までに二時間づつ5回乗らなければいけなかった。
「でも、こんな冬道大丈夫かなぁ?」
「この辺なら、山道でも無いしゆっくり走れば大丈夫だろう。」
「ちょっと怖いけど、頑張るね。」
そして、運転席に乗り込む。
シートが、思いっきり後ろにある。
しっかりと調節して、シートベルトを締める。
前後左右を確認して、車道に出る。
わぁ、どこ走ったらいいんだろう。
「麻里、もう少し左側でいいぞ。フロントガラスの真ん中が、左側だと思ったらいい。もう少し、スピード出そうか。」
速度計を見ると、20キロしか出ていない。
結構、速く感じるのに。




