第133話 果樹の育成ペースと、軽トラと……
さて、先に植えておいた果樹園(と、呼ぶことにした)の方は、すでにけっこうな樹高になっていて……ブルーベリーと桑(マルベリーとも言う)の実が生っていたのを確認。まだ食べられるような状態ではないけど、少しは採れそうだ。土の精霊さんたち、ありがとう!
立ち枯れの拠点の果樹の方は、残念ながら、まだそれほど育ってはいない。浄化の方に力がもっていかれているのだろうか? ゆっくりでもいいので、しっかり浄化してくれるといい。
ハーブ類も、思ったほどに成長速度は早くない。精霊の力があんまり効かないのか、あるいは、これが本来のペースってことなんだろうか。どっちにしても、ハーブ類のある側も、浄化の機能のある果樹を植えてあげたほうがいいだろうと思い、梅を育てることにした。梅干しの種で。
一日1個、梅干しを食べては、種を出し、それを黒ポットへ。案の定、ちゃんと芽が出た。土はログハウスの脇の畑の土で、人工池の水をたっぷりかけたから、なんだろうか。大きく育ってくれるなら、それにこしたことはない。
ちなみに、最近の畑の野菜の育つペースは、以前よりもペースダウンしている。土の精霊たちがかなり分散したせいだろう、と勝手に思っている。でも、これくらいの方が、忙しなくて、いいかも。
この前、脚立を持ってきてくれた稲荷さんが、梅の木を確認していった。
「……なんとも、さすが(異世界と元聖女)ですな」
「すごいですよね(異世界って)」
黒ポットから生えている梅の木の芽を見て、やっぱり、ため息。まぁ、生えたんだったらいいんじゃないですか、と、投げやりになっていたのは……まぁ、いいか。
中古の軽トラについては、稲荷さんの知り合いの中古車業者を紹介してくれた。どうせなら一緒に、見に行かないか、とのこと。上手くいけば、そのまま買って乗っていてしまえば、なんて言ってくれるから、その案にいそいそとのってしまう。今の私には、この山のメンテナンスだけだから、スケジュールなんて、あってないようなものだし。
どんな軽トラがあるのかなぁ、と思いつつ、私はスーパーカブに乗って立ち枯れの拠点へ。いつの間にか、土の精霊たちが道の土を固めてくれたおかげで、スーパーカブでも通れるようになってた。運転してても、ガタガタしなくていい!
――地面がもうちょっと固くなってたらいいのにな。
なんていう独り言が、こういう結果を導いてくれたと思うと、ありがたい、と思うと同時に、不用意に言っちゃいけないかも、とも思った。
浄化のための梅の苗木がどんどん増えて行き、気が付けば『ヒロゲルクン』の地図の範囲のギリギリのところまでついた。ここで山に挟まれた土地の部分はもう終わりだ。
その先は、この時期になっても荒れ果てた茶色の平地が広がっている。その中で、黒ずんだ地面は瘴気に侵された土地で、明らかに周囲とは違っていた。どれだけの距離を、アレが進んできたのか、と思うと、ぞっとする。
「でも、ここから先は、人様のだからね。仕方ないやね」
ぽつりとそう呟くと、私は背中を向け、拠点へと戻ろうとした。
「……〇▼%$*〇◇?(なんだ? 子供か?)」
いきなり、聞いたことのない言葉が聞こえて、慌てて、周囲を見渡す。
すると、うちの山ではなく、隣の山の木々の間から……小汚いぼろきれのような服を着た大柄な男が現れた。





