第940話 ママ軍団、登場
びえびえ、えぐえぐとヘルガさんの泣き声がうるさい。
気の毒に思えたのが、もう、いい加減にして、と思うくらい、止まらないのだ。
これはマックスさんでなくても、うんざりしそう。マックスさんも、下手に慰めたりなんかしたら、そのまま引っ付かれそうで、動くに動けない感じだ。
エイデンにいたってはめんどくさそうな顔しかしない。
「うるさいわねぇ、いつまで、サツキ様を待たせてるのよ」
不機嫌そうな声で現れたのはハノエさん。その後ろにはラナさん、マナさんとママ軍団が勢ぞろいだ。
「ゲッシュたちは?」
赤ん坊たちはどうしたのかと思ったら、孤児院の子たちに預けて、こっちに来てくれたらしい。ありがたい。
「で、どうすんのよ」
目の据わったハノエさんが怖すぎる。
村までそこそこ離れているというのに、しっかり聞こえていたらしい。さすが獣人の耳。
ジロリと睨まれたマックスさんは声もあげられず、キャシディさんにいたっては、長い尻尾を足の間に挟んでブルブル震えている。
ヘルガさんは、ピタッと泣き止んで呆然としている。
「大の大人がみっともない。いい加減泣き止みなさいな」
ハノエさんがヘルガさんのそばに行って、手にしていたタオルで顔を拭いている。
「(ちょ、ちょっと、あれ、ゲッシュの涎が)」
「(黙ってなさいよ)」
「(いや、でも、あれ、お尻も拭いてなかった?)」
「(え、マジ!?)」
後ろでラナさんとマナさんにが何か言っている。
「ず、ずびませんっ」
「いいのよ。で、マックス、この子の相手はあんたよね」
「ひゃ、ひゃいっ」
「はぁ……多くの獣人の男どもの性だって、私も知ってる。知ってるけどさ、そこは義理を通すってのが大事なんじゃないのかい?」
「……」
「せめて、相手が納得いくように、ちゃんと話をしてやんなよ」
大柄なマックスさんが、しょんぼりしている。
「それと、キャシディもだよ。こんな小柄な子……」
まだ気を失っているシーラさんを、気の毒そうな目で見ているハノエさん。
「うっ」
「あんたも、ちゃんと話をしなっ」
「う、うっす」
キャシディさんまで、ハノエさんの気迫に負けて、返事している。
「サツキ様、この子たちは村に入れるのは止めておきましょう」
「は、はい」
「あんたたちも、しばらく出禁ね。代わりに宿舎を使っていいから……って、いいですよね?」
「いいですー」
慌てて確認するハノエさん。
こんな何もないところで放り出されても、お茶をするようなところはないし、ゆっくり話をするような場所もないのは私でもわかるので、ハノエさんの言葉に素直に頷く。
「ちゃんと話し合いなよ」
「はい」
「うっす」
私の言葉に返事をしたマックスさんたち。四人は一緒に宿舎へと入っていった。
ちなみに、エイデンもハノエさんにビビってたのを追記しておく。
その後、ラナさんとマナさんがお茶を出しに行ったついでに、様子を見にいってくれた。逆上して、刃傷沙汰になったりしてないか心配だったけれど、そこは大丈夫だったらしい。
結局、その日は男女で別の宿舎に泊まり、翌朝には四人とも村から離れていった。
一応、マックスさんたちはドゴールさんには連絡をいれると約束だけはしたそうなので、その後の情報はいつか聞けるのだろう。
しかし、ハノエ姉御は凄いな、と思った。
私より、年下なはずなんだけど。(遠い目)





