第939話 男の言い分、女の言い分
私の目の前で正座をしているのは、ドゴールさん、熊獣人のマックスさん、虎獣人のキャシディさん、それに、熊獣人のヘルガさんと虎獣人のシーラさん。
男性陣は顔色はよくないけれど、申し訳なさそうな顔。
一方の女性陣は、涙と鼻水でボロボロ。えぐえぐ泣きまくっている。
それはそうだろう。古龍の姿のエイデンに怒鳴りつけられたのだ。私だったら、気を失ってる。いや、心臓止まるかもだ。
「お前たち、五月に迷惑をかけている自覚はあるのか」
今は人の姿のエイデンが淡々とドゴールさんたちに聞く。
普段の気さくな感じのエイデンと違うせいか、ドゴールさんたちはごくりと喉を鳴らす。
「なぁ?」
「は、はいっ。申し訳ございませんっ」
「すみませんでしたっ!」
「すみませんっ!」
がばりと頭を下げる三人。
フンッと鼻息は荒げて、今度は女性陣へと目を向ける。
「お前らもだ」
えぐえぐ言ってた二人は、ビクリと身体を強張らせる。
「村の中へ入れてもらう立場が、何を偉そうに言っている?」
「ヒッ!」
「キュー……」
ギョロリと蛇のような目になったエイデンに、ヘルガさんは声にならない叫び声をあげ、シーラさんはそのまま気を失ってしまった。
「エイデン、そこまでにしなよ」
「だがな」
納得いかないような顔のエイデンだけれど。
「ほら、マグノリアさんたちも待ってるんだよ?」
そう言って、村の入口にある教会のところに心配そうにたたずんでいるマグノリアさん一家のほうへと目を向ける。
「むぅ……仕方ない。ドゴールはマグノリアのとこへ行け」
「は、はいっ……う、うわっ」
慌てて立ち上がるも、足がしびれて、うずくまるドゴールさん。それに気付いたマグノリアさんたちがこちらへと走ってくる。先頭を走るのはザックスくん。
「ドゴールさんっ!」
すっかり立派な青年になった彼が駆け寄り、ドゴールさんを立ち上がらせる。
「すまん、カッコ悪いな」
苦笑いをしているドゴールさんの元へと、マグノリアさんとフェリシアちゃんもやってきて、すっかり家族の雰囲気である。
一方のマックスさんとキャシディさん。ドゴールさんの様子に安心した顔をしているけれど、問題なのは、あなたたちだ。
「……で、二人は、彼女たちのことはどうするのよ」
私がジロリと睨みつける。
「え、あ、えーと」
困惑するマックスさん。
「いやぁ、どうするって言われても、たった一晩、相手をしただけだぜ」
キャシディさんのほうは、納得がいかないという感じだ。
「でも、彼女たちは、その、夜の仕事をする人たちってわけじゃないでしょ?」
「ああ、冒険者だが……別に寝ること自体悪いことじゃないだろ?」
「いや、でも、その後の対応ってもんがさ」
「お互いヤル前に確認してんだぜ? 一晩だけってな。それなのに、しつこく付きまとわれて、こっちのほうが迷惑だっての」
「おいっ、シーラが気を失ってるからって」
マックスさんがキャシディさんを窘める。
「でも、そういうことだろ?」
「ん、んー」
二人の感じだと、獣人は、性的なところが緩い感じなんだろうか。
ネドリさんたち狼獣人が一途なイメージだっただけに、ちょっとガッカリ。
「で、でも、惚れちまったんだから、仕方ないだろっ」
ぐちゃぐちゃの顔でそう叫んだのはヘルガさん。
「だって、だって、あたいのこと、あんなに優しく扱ってくれたの、マックスが初めてだったんだものー」
びえーんっと大きな声で泣く、大柄なヘルガさんの姿に、ちょっとだけ気の毒になってしまった。





