第931話 神様クオリティ(遠い目)
花見が終わってから三日ほどして、エイデンとノワールが戻ってきた。
その頃には村の桜も、山の桜も散り始めており、緑の葉もちらほら見えるほどになっていた。
「なんだとー! 花見は終わってるだとー!」
「はなみー!」
ログハウスの前で叫ぶ、エイデンとノワール。ノワールにいたっては、地面をゴロゴロと転がりまくってる。
思い切り服が汚れるが、それは自分で洗濯しろ、と言うつもりだ。
「仕方ないじゃない、急に満開になっちゃったんだもの~」
「いつまでも戻ってこないのが悪い」
『ぼくたちのこえもきこえてなかったもんねー』
『まものがり、たのしかったんだもんねー』
私とマリンだけではなく、精霊たちからも言われて、「ぐぬぬぬ~」とか言っている二人。
――生「ぐぬぬぬ~」いただきました~。
思わず心の中で笑ってしまう。
そんな私は、マリンとのんびりログハウスの前の東屋で、桜の花の塩漬けを作っているところだ。
満開の中でも、まだ咲ききっていないのをテオやマルにも手伝ってもらって集めたものを洗ってジッパー付きの袋にいれている。
こちらで育った桜の中でも、なぜか花びらの枚数の多いモノが増えてきた。どういう育ち方をすればそうなるのか、不思議ではある。
でも、前に作った塩漬けよりも、ボリュームが出て、こちらのほうが良さそうではある。
ブツブツと文句を言っているエイデンとノワールだったけれど、そこに車のエンジン音が聞こえてきた。
「稲荷さんかな」
「他にいないよ」
「だよねー」
私とマリンが片付けをしながら話をしていると、本当に稲荷さんがワゴン車に乗ってやってきた。助手席には大地くんも乗っている。私に気付いてペコリと頭を下げる大地くん。
けっこう大きな車に、ちょっといいなと思ってしまう。後で、車のことも相談しよう。
「どうも、どうも~」
「あ、もしかして」
「転移用の小屋のお手伝いに来ましたよ~」
「ありがとうございますっ!」
車から降りてきた稲荷さんに、お手数おかけします、とペコペコと頭を下げる。
ユグドラシルのばあさんのところに行くことを考えると、エイデンもいるから、ナイスタイミングである。
「転移用の小屋? ……ああ、あれか」
一瞬、意味がわからなかったのか、コテリと首を傾げるが、すぐに思い出してポンと手をうつエイデン。
「まずは、村のどこに小屋を建てますか」
「うちのユグドラシルの近くがいいんじゃないかって思うんですけど、どうですかね?」
「いいんじゃないですか? あの周辺の森だったら、きっと村の連中も狩りに行きたいでしょうし」
「オババさんたち、薬草採りに行きやすくなるんじゃない?」
マリンの言葉に、ナイス! と声をあげる。
「じゃあ、まずは村に行きますか」
私はスーパーカブに乗り、他の面々は普通に走り出す。
……そう、私以外は全員走っているのだ。
当然、その中には稲荷さんも大地くんも入っている。皆、軽いランニングのように走っている。私の前を。
――これが異世界クオリティ……いや、神様クオリティか。
遠い目になりながら、私は彼らの後を追うのであった。





