第927話 花見の準備と、生活魔法
ログハウスの前の東屋で、子供たちがミルクコーヒーを飲んでいる。
そんな風景にほのぼのとしながら、私は花見に行く準備を始める。まずはタブレットに何が入ってるか再チェックだ。
お花見に行くのなら、確実に酒は必要だろう。
昨日あちらで買ったばかりのお酒たち。全部持って行ったら確実になくなりそうだ。
一応、近々花見をやるかなー、くらいには思ってたけれど、まさか、こんなに急にとは予想していなかった。
――とりあえず、焼酎と日本酒、あ、そういえばウォッカも買ったんだった。
酒関係は、目についたのをポンポン買っていたりする。自分が飲める、飲めないに関わらず。
……ドワーフたちに飲ませると、面白いことが起こるかなー、なんて、思ったりしない。
他につまみになるような手軽な物はあっただろうか、と思い、スモークサーモンのことを思い出すと。
「五月、シャーモンはダメよ」
まさかの半目のマリンに睨まれた。口には白いミルクのヒゲをつけて。
――なぜ、わかった!
「わ、わかってるよ。サーモン以外ね」
「うむ。わかればよろし」
サーモンは無し、となったら、あとは何があったかな、と思っていると、大量に買ったソーセージがあったから、もうこれを持って行くしかないだろう。
「よし、あとは子供たち用のジュースかな」
「ジュース?」
「ジュース!」
私の小さな呟きにすぐさま反応したのは、テオとマル。さすが獣人。
「う、うん。梅ジュースがまだ残ってるからね」
「やった!」
「ジュース! ジュース!」
ミルクコーヒー飲んだばかりなのに、大喜びの子供たち。
「後で、後でだよっ」
「えー」
「えー」
「こらっ」
一番お姉さんのルルーに叱られて、ごめんなさーいと声を揃えて言う子供たち。
うん、許す。
「さぁ、皆、飲み終わった?」
「はーい」
「テーブルの上に置いて……『クリーン』」
「は?」
子供たちにミルクコーヒーを飲み終えたコップをまとめて置かせたと思ったら、まさかの魔法を使って綺麗にしてくれた。
「え? え? ルルー?」
「あ、綺麗にしちゃダメでした?」
「いやいやいや、ダメじゃない、ダメじゃない。ていうか、魔法使えるの?」
こちらで魔法を使えるのは、キャサリンやサリーで知ってはいたけれど、村人たちが使っているのを見た覚えがなかった。
「あ、はい。簡単な生活魔法だったら。私の他にもベシーやリンダもできますよ?」
「そ、そうなのー!?」
「あ、ザックスさんは攻撃魔法も使えるって聞きました」
「おおお……」
凄く今更な話で、思わず呻くような声を出す私。
「わたしも、ちょっとならできるっ! 『ウォーター』!」
「ぼくもっ!『ファイア』!」
エリーは水をちょろっと出して、エフィムは小さな炎を指先に灯した。
「マジか」
「いいなぁ」
「いいなぁ」
テオとマルが羨ましそうに言う。そういえば、獣人は魔法は使えないんだった。それでも、色んな魔道具があるので、あまり不便ではないとも聞いている。
魔法使えない仲間がいて、少しホッとしてしまった私であった。





