第923話 シャーモン♪ シャーモン♪
ログハウスに戻った私は、軽トラに載せてある大量の荷物をどんどんタブレットの『収納』へとしまい込む。
村の寺子屋に持って行く紙類などは湿気ったら大変だし、ユグドラシルのばあ様の森に挿す大量のガーデンライトも場所をとる。
――タブレットあってよかったぁ。
大量の買い物の後は、いつも思う。
特に軽トラからログハウスへ荷物を運び込むのは、何往復もしなきゃいけないのを考えると、手間が省けるからほんと助かる。
「五月~!」
遊びに出ていたのか、山の桜並木のあるほうの入口から、マリンがトテトテと走ってきた。聖獣バスティーラの姿だったらもっと早く走れるのに、足が遅くても子供の姿が好きなようだ。
「おかえり~」
「ねぇ、シャーモンは? シャーモン!」
「はいはい、サーモンね」
目をキラキラさせながら私の足に抱きつく姿は、ほんとに可愛い。
荷物をしまい終えた私は、軽トラを小屋へと移動させてから、ログハウスに入ると、お留守番をしていたセバスが暖炉の脇で身を起こし、無表情でこちらを見ている。
そもそも黒羊の顔のセバス。表情など、よくわからないんだけど。
「あ、ただいま」
そう声をかけると「メェェ」と返事だけ返ってきた。
一方で、マリンはスモークサーモンが嬉しいようで、「シャーモン♪ シャーモン♪」と言いながら部屋の中で盆踊りみたいに踊っている。
――こんな踊り、いつ教えたっけ?
思わず笑ってしまう。
そんなに期待されたら出さないわけにはいかない。
せっかく『収納』にしまったけれど、スモークサーモンのパックを取り出す。皿にモリモリにして、テーブルに置くと「ヤッタ!」と喜びの声をあげて手を伸ばすマリン。
「あ、手は洗ったの?」
「『クリーン』した!」
返事と同時にパクリと食べるマリン。
さすが聖獣バスティーラ。獣人たちは魔法を使わないのでついつい忘れがちだけれど、一応、こちらでも使える人は使える魔法。
そんな魔法を便利に使うマリンに、ちょっと呆れてしまう。
「ん~! これこれ~!」
小さな手を頬にあてて、嬉しそうな顔。この顔を見たら、多少の我儘や贅沢は許せてしまう。
私も軽く手を洗い、箸で一枚食べてみる。
――マリンじゃないけど、これこれ~!
思わずニンマリしてしまう私。あとでマリネにでもしようか、それともディップを作るのもいいかもしれない。
マリンがモグモグと食べている間に、『収納』から冷蔵庫や棚へ調味料などを移動させる。自分で買っておいてなんだけれど、ちょっと買い過ぎたかな、と反省。カードの引き落としが今から怖い。
「ごちそうさまー!」
「え、もう食べ終わったの!?」
ちょっと考えこんでいる間に、マリンはペロリとたいらげてしまったようだ。
いや、隣にセバスもモグモグしながら立っていた。
――お前も食ったのかっ!?
「おかわりっ!」
私がセバスにギョッとしていると、マリンから空っぽの皿を差し出される。
「ちょ、ちょっと、後は夕飯でっ!」
「えー」
「メェェェ」
一人と一匹が不満そうな声をあげたけれど、私は許さなかった。当然である。





