第921話 久しぶりに蕎麦屋に行く
スーパーで山ほどの買い物をした。
気が付いたら、カート三台分の買い物をしてしまっていたのだ。(遠い目)
自分でも買いすぎたとは思う。でも、あれも、これもと気が付いたらこんなことに。
そのせいもあって、まさかの店長さん自ら、スタッフと一緒に軽トラまで荷物を運ぶのを手伝ってもらってしまった。
――もうちょっと大きい車に替えたほうがいいかな。
目の前の軽トラの状況に、ちょっと考えてしまう。かなりギューギューに詰め込まれているのだ。
そもそも、こんなに買わなければいい話だとは思うのだけれど、必要だと思った物だから仕方がない、と自分に言い訳する。
――これより大きいのは1トントラックかな。それとも、大型のバンのほうがいいのかな。
そもそも、私が持っているのは普通免許。これで運転できるものでないとダメだけれど、あんまり大きいのは、自分の運転スキルに自信がないので、悩みどころではある。
今すぐに、というわけではないけれど、これも稲荷さんに相談だ。
私は重くなったハンドルを握り、わざわざ見送ってくれている店長さんたちに頭を下げて駐車場を出る。
買い物をしているうちに、すでにお昼の時間はとっくに過ぎていたが、道沿いのファミレスの駐車場は満車の様子。
――だったら久しぶりに、お蕎麦屋さんに行こう。
キャンプ場へ向かう途中にある蕎麦屋へと向かうことにした。
蕎麦屋のあまり大きくない駐車場には、車が二台ほど止まっていた。空いていた最後のスペースに軽トラを止めて、蕎麦屋へと入る。
店内に入ったばかりのせいか、ちょっと薄暗い。
「いらっしゃい」
おばあさんの声に、ペコリと頭を下げる。
「空いてる席にどうぞ」
私は窓際の席に座る。店内を見回すと、家族連れと、中年男性の客がいた。
家族連れは小さい子がいるのか、なかなか賑やか。中年男性はちょうど食べ終えてお会計をしにレジに立っている。
私はメニューに手を伸ばし、何にしようかな、と考える。
山菜は今日天ぷらにしようと思っていたので、それは無し。当然、天ぷらもだ。
――まだ温かい蕎麦がいいかな。
軽トラから降りた時に風がピューッと吹いてきて、思わず身震いしたのだ。
「すみません」
「はいよ」
おばあさんが湯呑を持ってやってきた。
「きつねそばお願いします」
「はいよ」
トコトコと歩いて行くおばあさんの背中を見送り、私はスマホを取り出した。
久しぶりにメッセージを確認する。年明けにチェックした時の前の会社の同期からのメッセージのやりとり以降はなく、ほぼ広告関係ばかり。
こちらの人間関係の希薄さが浮き彫りになって、苦笑いを浮かべる。
「お待ちどうさま」
「あ、はい」
おばあちゃんがきつねそばを持ってきた。蕎麦の器をおいた隣に、 小皿に載った小ぶりな稲荷寿司が二つ。
「あれ? 頼んでないですよ?」
「サービスだよ」
「へ?」
おばあちゃんがニッと笑って、そのまま厨房のほうへと戻って行った。





