シルエットベース誕生
強襲型移動基地艦キモン級は海底を進んでいた。
海底の先には巨大な人工の進入路があり、そこから工廠要塞地上部分にある山岳内部の基地へ入港する。
特定の位置まで進むと、台に乗せられレールで運ばれる。
艦は自動でレールカタパルトの位置まで運ばれていた。この場所は整備船渠も兼ねているのだ。
『ディケより搭乗員へ連絡。目的地に到着しました。ファミリアの皆様は私とのデータリンク接続のため、指定の場所へお集まりお願いします、他乗組員の方々は飛行甲板への移動をお願いします』
甲板に集まったメタルアイリスの隊員たち。ファミリアはデータリンクが終わったものから駆けつけている。
作業用小型車両の上にジェニーとリックが並んで立っている。車両前にはコウたちが並んで立っていた。
「集まってくれたみんな。ありがとう。今日よりメタルアイリスとストームハウンドは統合。共に戦う仲間として一緒のチームになります」
歓声が上がる。メタルアイリスもファミリアやセリアンスロープは多い。反対する者はいなかった。
「重要なのはここからよ? 今日乗り込んだこの宇宙艦と、今私達が到着したこの秘密基地。本日より、アシアより貸与されました。私達のホームとなります」
今度は静寂。データリンクしているファミリアたちは了承済み。人間やセリアンスロープ、ネレイスは息を飲んだり、お互い顔を見合わせたりしている。
それが事実ならとんでもないことだ。
「驚くのも無理ないわ。私とリックも今日知ったもの。そして、前の作戦で私達を作戦成功に導いたコウ君たちが、技術顧問として今日から私達の仲間となります」
ざわめきがさらに大きくなる。コウはアシアの代理人として認識されていたのだ。
「堅苦しいの苦手だから、はっきり言うね。代表は私、副代表がリック。コウ君は裏ボスって感じで。私達はアシアの直轄軍みたいな形になります!」
ひときわ大きな歓声が上がる。
コウは裏ボスと言われて、慌ててジェニーの方を向くが、知らんぷりされた。
「より危険な任務が増えるかもしれない。だけど、これほどの力を私達は与えられた。古来より大いなる力には大いなる責任が伴うと言われている。私達は正しくその力を使うべく、新たなアンダーグラウンドフォースとなります。そしてコウ君。一言どうぞ」
コウは壇上にあがり、ジェニーの隣に並ぶ。
「今日から隊員となります、コウです。改めてよろしく。アシアを解放して、人間とファミリア、セリアンスロープ、ネレイス。ともに手を取り合っていける世界を取り戻すため、力を合わせて戦いましょう」
コウの言葉に、皆が拍手して迎える。
セリアンスロープやネレイスがひときわ大きく拍手している。ファミリアたちは大はしゃぎだ。
「今日から新生メタルアイリス。ファミリアのみんながデータ共有してくれているから、この施設の居住区画を案内してくれる。いや、その前にこの艦の自分の部屋を決めないとね。みんな、これから大変よ? 何せこの艦と基地へ移住からスタートなんだから!」
艦内の自分の部屋だけでも驚きなのに、アンダーグラウンドフォースである自分たちが自分の居住区を持つ。これまでシェルター内とはいえ駐屯することしかなかったのに比べると破格の待遇だ。
一番大きな歓声が上がった。
遠くでエメがマールとフラックと笑いながら話している。エメの笑顔が見ることができた。
年齢が近い子がいることは良いことだ。これだけでも合流した甲斐があったとコウは思う。
新しいアンダーグラウンドフォース結成の式典も終わり、解散した。
皆、新しい居場所に興奮し、再び艦内の見学に戻っていった。
◆ ◆ ◆ ◆ ◆
「凄いですね、コウ君」
フユキが指揮所に呼ばれていた。同席はジェニーとブルーだ。
「凄い状況よね。この基地丸々使っていいなんて。いえ、この規模は軍事都市だわ」
「アシアがいる場所が封印区画になっている。そこは申し訳ない」
地下工廠を繋げる区画は、X463要塞エリア同様封印区画として設定した。構築技士のほかには許可を持った者しか入れないことになる。
正確にはアシア本体はその地下だが、そこまで厳密に話すこともないだろうとの判断だ。
「気にしないって。むしろそれ以外使い放題とか破格だわ」
「だが、何もないんだ」
「確かに何もないですね。様々な物資の調達が必要かと。資金的にどうですか、ジェニー」
「資金? ディケから預かった資産確認したよ。超余裕。戦争なければ全員に分配して一生遊んで暮らしていけるレベル」
「これまた凄いパトロンが付きましたね!」
ジェニーの投げやりな回答にフユキが感嘆する。
「でも、実際ここは何もないよね。人手も足りない」
「アシアが、新しく生み出されたファミリアを回してくれるそうだよ」
「そこは期待。落ち着いたら人間やネレイスも募集ね」
「やはり物資ですか」
「そこでフユキさんに相談。いっそ、物資全般は総合商社の紅信に丸投げしたらどうかな、と思って」
フユキは少し考え込んだ。
「それはあり…… 入札にするのが本来の筋ですが。手っ取り早く揃えたいなら紅信がいいですね。総合商社という日本特有の汎用性が活きます」
「うん。紅信一社できつかったら、各種専門は、紅信に専門商社の入札まで任せると」
「コウ君。なにか条件はありますか?」
「条件、か。セリアンスロープやファミリアと協調できる人材を希望かな。あと、秘密を守れる人で」
「了解しました。私の艦内区画と住居区画が決まり次第、連絡します」
「盛り上がってるみたいだね」
「そりゃシルエットガレージ付きの住居区画なんて聞いたことありませんよ! シルエットベースと名乗れそう」
「あはは。いいな、シルエットベース。ここは元軍港で、なにをするにもシルエット必須だったようだ」
「笑い事じゃないですよ、コウ。本当にそうなりそう」
シルエット格納庫付きの住居区画など、類を見ない。このような場所を気軽に人手に渡してしまうことを心配するブルーにコウは暢気だ。
「傭兵機構は平等だ。ストーンズ側につこうが人類側につこうがどっちでもいい。ここは違う。あくまでストーンズと戦う傭兵のための拠点になるなら、状況次第なら解放してもいいんじゃないか」
「傭兵が殺到しそう」
「場所はあるし、いいかもね。まだ当分先だろうけど」
「まずは私達に必要な物資をですね。かき集めるとします。では、私はこれで。コウ君にはチーム用コードで連絡取れますしね」
「そうだった。よろしく、フユキさん」
フユキが退出したあと、コウは呟く。
「シルエットベースか。面白そうだな」
人ごとのように呟いているコウに、ブルーは苛立ちを隠せなかった。




